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テーマ詩集:スイーツビュッフェ

ドーナツ

作者: 歌川 詩季

 美味しいですよね。

 埋まらない がらんどうを 胸のなかに

 かかえたやつみたいに ぼくのことを言うんだ


 まんなかに 穴がぽっかりあいた

 わっかのことなら わからなくもないけど


 そいつは とんだ まとはずれ

 まんなかに ぽっかりあいた がらんどうこそが

 ぼくの本体なのだから


 そのまわりのわっかは こんながらんどうのぼくを

 集まって 囲んで そばにいてくれる

 みんなが(えが)いてくれた わっか


 がらんどうで なんにもないぼくが

 輪郭をもっていられるように 包んでくれる

 みんながつないでくれた わっか


 何者でもない がらんどうのぼくだけど

 わっかをつくってくれた みんなのおかげで

 ドーナツは ドーナツでいられる


 がらんどうだなんて 嘆いていたのは

 きっと ぼくだけじゃないはず

 がらんどうだなんて 嘆かなくていいんだよって

 きっと ぼくだけにじゃなくて

 輪郭をもたない ぼくたちひとりひとりに

 たくさんのみんなが

 それぞれにちがった わっかをつくってくれるんだ


 何者でもないぼくたちが

 どんなやつなのかじゃないよ

 みんなが ぼくたちのまわりに

 どんなわっかを つくってくれたかで

 ドーナツは いろんなドーナツになるんだよ


 さくさくだったり ふわふわだったり

 甘かったり ちょっぴりビターだったり

 クリームがはいってたり チョコレートが かかってたり


 いろんなドーナツが がらんどうだった

 ぼくたちのまわりに (えが)かれる


 ありがとう ぼくたちはもう

 ただのがらんどうじゃない


 ありがとう ぼくたちはもう

 一輪前(いちりんまえ)のドーナツだ



 とはいえ しょせん

 ぼくたちは ドーナツ


 あら おいしそう って

 つまみあげる 指に はこばれて

 まちかまえた お口に かじられて


 せっかく

 みんながつくってくれた わっかが欠けちゃうのは

 残念だけど しょうがない


 ぼくたち自身は 何者でもでもなくて

 みんながまわりに つくってくれた わっかが

 ドーナツなんだから


 わっかが欠けて なくなれば

 まんなかの がらんどうの

 ぼくたちも なくなっちゃうのも

 悲しいけど しょうがない

 カロリー高いですよね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 私たちは、空気をかき分けて歩くのではなく ドーナッツのがらんどうをかき分けているのですね。 とても面白いです。
[良い点] 一輪前、という言葉は 独特の表現なのに もはやこれ以外は考えられない と思わせる表現で 素晴らしいですね [一言] 何者でもないものは 何者にでもなれる 例え欠けたり 失ったりしても ま…
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