戦い②
ほんとにゾンビがいるなんて、やばいやばいやばい。
早く逃げないと。。
『黒川 宣弘さん 逃げることは許されません。戦うか、おとなしくゾンビに食われるかしてください。』
っざけんな。
人権なんてないってか!
俺だって人間だぞ!
どうする?やるか?このバールで。
いや、もし本当にゾンビなら元人間ってことなんじゃあねえか?
もしそれを殴るってなると…
いやいや、そんなこと俺にはできない。
『黒川 宣弘さん 逃げることは許されません。戦うか、おとなしくゾンビに食われるかしてください。』
「おい、せかすなよ。」
ヴォーー
ゾンビどもが俺の声に反応したのか、俺の声とともに叫びだした。
クソッ腹を決めるしかないのか?
と、とりあえずこの大群から身をひそめるしか。
あの民家なら隠れれるんじゃないか。
よしっ、あの民家に全力で逃げ込むか。
はあっはあっはっ
ガチャっ
バタン
家に到着し、速攻でドアを閉めた。
ふーー
逃げ切ってやったぜ。ざまあみろ。
ヴォーーーー
ガンガン
嘘だろ?ドアたたいてきやがった。
やべえぞ、このままだとドアが一分も持たない。
っそうだ!クローゼットに隠れよう。
…本格的にゾンビゲームみたいな行動になってきやがった。
ガンガン
ヴォーーーーー
ゾンビが家の中に入ってきやがった。
でも、今までの行動から、奴らは音に反応してる気がする。
だから息をひそめてりゃ何とかなんじゃねえか?
ーーーーーーー
そろそろか?
もういねえよな?
…念のためバールは構えとくか。
男はクローゼットの中から、なるべく音をたてないようにして外へ出た。
よしっいなかったか。
これで、家の中は安全を確保できたな。
ふーーーー助かったぁ。
いや、こうしちゃあいられねえ。
俺は、三十五体のゾンビを…殺さなきゃ安全になったとは言えねえ。
一度ゾンビの習性を振り返るか。
多分奴らは音を頼りに行動している。
まあそりゃあそうか、あいつら目が腐敗して見えてねえもんな。
次に奴らは足は鈍い。
俺との全力競争じゃあ俺に軍配が上がった。
たとえるならガキと大人の徒競走ってとこだな。
今はこんくらいしかわかんねえ。
この状況でこれ一本で戦えってか?厳しすぎるぜ。
…それでも作戦がなけりゃあ始まんねえ。
何か奴らをぶっ殺す方法を考えねえと。
ああ、あの手段でいくか。
見た感じ奴らは俺らのよく知るフィクション上のゾンビと特性が似てるから、通用するんじゃないか?
男は覚悟を決め、なるべく音が立たないように家を出た。
ーーーーー
条件は三つだ
一つはゾンビが一匹だけのこと
二つめはゾンビに気づかれることなく俺が、バールの射程にちかづけること
三つめはそして俺が一撃でゾンビをやれること
ーーーーー
ヴァーーー
ゾンビが一人で立っているところに、男は抜き足差し足で近づいた。
よしっ。
条件①クリアー
そして条件②も、…クリアー
条件③は……俺にできるのか?
いやでも、やらなきゃ。
クソ、わからねぇ。
ヴァーー、ヴァ!ヴァーーーー
!気づきやがった。
無我夢中で男は、バールを振った。
ぐしゃぁ
やってやった。
やっちまった、初めてだこんなの。
殺…したのか?
いや、殺したんだ。
くそ、いくらゾンビとはいえほとんど人間じゃないか。
いや、元人間じゃないか。
ヴァーーーー
新しいゾンビが男の殴った音で近寄ってきた。
それでもっ、やらなきゃやられるのは俺だ。
俺はそう思い、手に持つそのバールを化け物どもに向けて振り回した。
ーーーーーー
そのあとの作業は、楽勝だった。
正直大人が子供に暴力をふるっている気分だった。
殴った音で近寄ってくるゾンビを殴り、その音で近寄るゾンビを殴るだけだった。
『黒川 宣弘さん 残り討伐必要数 0体 ゾンビ総数 35体』
『ミッションコンプリート 四十秒後に転送されます』
俺は、こんなにも冷酷だったのか?
最初の三匹までは殺すのをためらっていた。
だがどうだ?
三匹以降はためらっていただろうか?
まるで自分のストレスを発散させるかのように、少しもためらわずにやらなきゃやられる環境ということを言い訳にして、殴っていただけなんじゃないか?
そんな疑問がふつふつと男の中に湧いて出てきた。
クソッ、考えても仕方ねえ。
俺はこのクソッたれな環境でゾンビを殺した。
そんだけだ。そんだけなんだ。
そんなことを考えてるうちに男の転送が始まり、気づいたときには元のあの白い部屋にいた。