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プロローグ
時代の影を生きた男がいた。時には流離い、時には利用され、時には立ち上がり、時には平穏に。
どの時代でも名を“ジン”と言い、永い時を生き続け、名と魂を忘れずにいた。特に二十世紀から二十二世紀にかけての時代を、彼は思い出したくもないだろう。
この時代では、余りにも事が多すぎた。生まれたのは1923年。日本のとある田舎の村で生まれた彼は、ふるさとを飛び出すまでは至って普通の若者であったが、落ち着いた先、東京で出征する事になって以降、人生が変わった。徴兵されて前線に赴くまではまだよかった。ここまではよくある、軍人の生きた物語となる。だが、このジンと名乗る事になる仁加山正は、とある男との出会いにより、途中までは理想の実現に嬉々とし、実現直前で奈落の底へ落され、人間として死んでからも利用され続けた。彼は2004年、とある事件にて復活を遂げるものの、もちろんながら人としての存在を凌駕してしまい、普通に生きる事が出来なくなっていた。
そんな彼の、思い出したくない出来事を全て纏め上げる。