序章
この世には法というものが存在している
それを皆が守ることで秩序が保たれている
もし、それを無視しようものなら取り締まる団体がいる
しかし、そんな法があるにも関わらず、裁くことのできない者も多くいるのが現実だ
それらの者を非合法的に処理をしている集団がある
そんな彼らを後の者たちは「裏の支配者」と呼ぶのであった
暗い路地に小さな看板に「梟」と書いてあるなんとも入りにくいバーがある
入口の扉を押すと静かにベルが鳴り響く
店内はこぎれいにされており、照明によってほんのり照らさている
バーカウンターには白髪のおじいさんが一人シェイカーを振っている
お客さんは三人ほどでまあガラガラである
ここは「裏の支配者」たちの拠点とも言える場所なのだ
そこに一人の男が入店した
その男は黒いトレンチコートを身にまとい、全身黒で統一されている
いかにも闇に紛れるような服装だ
背格好は標準といったところだ
そんな彼はおもむろにフードを脱ぐ
その下には左右で色の違う瞳があった
黒と赤のオッドアイである
「マスター、いつもの」
「あいよ、ポール。いつものな。」
ポールと呼ばれた男は胸のポケットからタバコを取り出し、ジッポで火を点ける
一息つくころにグラスに注がれたネグローニがおかれた
程よい甘みと苦みの入り混じった酒をポールはいつものようにゆっくりグラスを傾けながら飲んでいく
「今日は依頼もない平和な日だな・・・。」
そうつぶやきながらしっぽりと酒を飲んでいく
その姿はただの常連にしか見えないものであった