第5話 試練の内容
夜も遅くなり、俺はベルにつれられて、居酒屋から少し離れたとこにある庭に来ていた。
庭といっても、とても広くて、平原と呼んでもいいくらいだ。
庭に来てしばらく待っていると、スタディが遅れてやってきた。
「おう!二人共来ていたか! 若いの、名前は何だ? 」
「ベイクです。」
俺はスタディに名前を告げると、スタディはああ、そうかというような顔をして言った。
「じゃあ、ベイク隊長と呼ぶぞ? いいか、ベイク隊長、今からお前が相手するのはコイツだ」
そこまで言うとスタディは口笛を吹いた。それと同時にどこからか羽ばたく音が聞こえてきた。
夜空に見えたのは真紅のドラゴンだった。ドラゴンは俺達三人の前で留まると下降して、スタディの隣に着陸した。
「これがドラゴン・・・」
俺はその姿にみとれてしまった。
赤色の肌。鋭くとがった尻尾、銀色の目と牙。
マリン帝国で戦いをしてきた時も竜騎士とは戦ってきたが、こんなに間近でみるのは初めてだった。
「間違っても触れろうとか思うなよ。さっきも言ったが、そいつは人見知りする上に凶暴なんだ。今んとこは俺とベルにしかなついていないからな」
スタディはそう言ってドラゴンの喉元を撫でた。ドラゴンは嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らした。
「今からお前にやってもらうのは、このドラゴン、パピーとの競争だ」
「競争? レースみたいなものですか? 」
「ああ、言葉が悪かったな。訂正する。分かりやすくいうと、一対一のサバイバルだ」
「サバイバル?」
「そう、パピーの首に鈴がついているだろう?それをどんな方法を使ってもいいから取るんだ」
俺は試合というからもっと難しいものかと思っていたので少し安心した。
「ただし・・・だ。」
「はい?」
「武器や魔法の使用は禁止とする。たとえ、命が危険に晒されたとしてもな・・・使った場合はグランドール王に報告して、グランドールを追い出してもらうからな」
「ちょっと、お父さん!ベイクは今グランドールに来たばかりなんだよ!? いくらなんでも・・・」
スタディの提案にベルがあんまりだという顔をして言い返した。
しかし、スタディはベルの言葉を無視して、俺に言った。
「やるか?やらないか?どっちでもいいがな」
「やります。やらさせて下さい」
「ベイク!?」
ベルは信じられないという顔をして俺の方を振り向いた。
「考え直したほうがいいよ!最悪の場合死んじゃうことだって・・・別に何もここにこだわらなくても行くあては他にまたくさん・・・」
「忠告ありがとう、ベル。でも俺は今この試合の内容を聞いて、やってみたいと思ったんだ、プライドとかじゃなくて、ただ純粋にこの試合を楽しみたいんだ・・・」
「いいんだな? ベイク隊長・・・」
「はい! お願いします」
こうして、俺がグランドールに来て最初の試練が始まった。