第3話 訪問
俺はある居酒屋に来ていた。俺がグランドールにきて初めて話した町娘ベルがいる居酒屋だ。
他に行くあてもないかどうかは分からないが、取りあえず顔を知っているほうが物事は頼みやすい。
居酒屋はこじんまりとしていて、せいぜい人が住めても4人ぐらいが限界な一階建てだ。
俺は居酒屋の扉をあけた。
「いらっしゃい!」
という威勢のいい声が部屋に木霊した。
声の主は白い衣装に身を包み、鉢巻きをした男性だった。髪の色は黒く、肌は珍しい肌色。慣れた手付きで魚を捌いている。
この大陸では見ない人種だな・・・俺はそう思ったがあえて何も言わずにカウンターに座った。
「お客さん、何いたします?ここでは和風の料理を扱っております!」
「あの・・・」
「それとも、イタリア風にしますか!?今週は特別に・・・」
「あの!」
「はい!?」
「俺、ここで働きたいんですけど・・・」
俺が働きたいと言った瞬間、男性の顔は一気に赤くなった。
「なんだ・・・あんたもか・・あんたもうちの娘目当てで此処で働きたいなんて言うんだろ!?」
男性の言うことには半分図星だった。考えてみれば、ベルに会うために来たわけではないが、他に行く所もなかったわけで・・・
「帰りな!そう言う安っぽい男は嫌いなんだ!」
男はそう言うとそっぽを向いて俺が何を言おうとも聞き入れてはくれなかった。
成す術なく俺は店を後にした。
(仕方ない・・・他を当たってみるか・・・)
そう思った俺は、行くあてもなく街の中を歩いていた。
すると、前の方からさっきの町娘・ベルが歩いてきた。
ベルは俺の存在に気がつくと、にっこりと微笑んだ。
「ベイク!どうだった?理由話して住民戸籍、貰えた?」
「ああ、貰えたさ。でも・・・」
「何?困ってるみたいだね。一体何があったの?話してみて」
俺は居酒屋に行って、鉢巻きをした男性に怒鳴られておい返されたことを話した。
ベルは最初は普通に聞いていたが、怒鳴られたことを言うと、顔がみるみる赤くなっていった。
「また!お父さんったら・・・ごめんねベイク。あの人、根はいい人なんだけど一途で頑固だから・・」
「彼処で働かせて欲しいと行った奴はみんなおい返されるのか?」
「いや、そんなことないんだけど・・・ねぇ、ベイク。どうしてもうちで働きたい?理由は聞かないけど」
「ああ、出来ればそうしたいな・・・」
「なら、ひとつだけ方法があるわ。お父さんの飼育しているペットに試合で勝つの」
「何だ?そのペットって?」
俺は何となく嫌な予感がした。こういう時に出てくるペットは大抵、一人では手に負えないものが多いからだ。
「ペットは・・・翼竜・・・つまりドラゴンなの」
「ドラゴンだって・・・!?」