セレトスの怪花
セレトスの王は代々女王であった。
王族に男子が生まれたとしても王位は女性にだけ継がれていくものであった。
それは本人が望むと望まざるとに関わらずセレトスという国が誕生した時からそう決まっていた言わばしきたりと言うモノであった。
セレトスの現女王であるリアナは息を吐きだすと正面に立つ存在を見つめた。
周りには兵士が数人床に倒れ落ちている。
もちろん、死んではいない。
フードを目深に被り異様な空気を漂わせた男。
ただ人ではない。
彼女は玉座に腰を下ろしたまま男の周囲で構えを取って取り巻いている近衛兵を見ると
「剣を降ろしなさい」
と指示し
「怪我をしているモノの手当てを」
この者の話を聞きましょう
と告げた。
これ以上被害を出すわけにはいかない。
男は口元に笑みを浮かべると懐から凍り付いた黒いゲルを見せた。
「これは怪物の核と同じものです」
もちろん
「この状態では怪物にはなりません」
リアナは目を細め
「なるほど、コーリコスの一件は貴方が起こしたことなのですね」
と告げた。
「愚かしい」
そんなものを我が国においておくわけにはいきません
男は小さく笑い
「噂は回っているという事ですか」
と呟き
「しかし、正しく使えばこの国の力になります」
あの男は使い方を誤った
と言うと手にしていた図面を見せ
「この通り作り使えば問題はない」
と女王を見た。
「いや、今ここで国が傾きたくなければ」
リアナは目を細め
「いう事を聞かなければ、脅すというわけですか」
と返した。
男は「そうです」と端的に応え
「私の力は見たはずです」
本気を出せばここにいる者たちはひとたまりもない
と拳を作り構えた。
それでも男と退治しようとしていた兵士を止めるようにリアナは椅子から腰を浮かすと
「わ、わかり」
『ました』と言いかけて、響いた声に視線を向けた。
「その黒いゲルの玉は怪物になるよ」
扉を開けてイサミが告げた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。