セレトスの怪花
セレトスはエスターの北西にある七大大国の一つであった。
周辺にはエスターを含め幾つかの小国が犇めくように存在している。
ただ、1000年前のダイルースの事件からエスターは同じ七大大国の中でも近隣にあるセレトスよりはイグリスやエルド、サバラーナ、グリゴールとの関係が深く王族とのやり取りもその4カ国のほうが多かった。
ある意味においてイサミとアーサーが残した一つの歪みと言えば歪みと言えるものである。
イサミはアーサーの案内でエスターの領土から幾つかの町の上空を越えて緑の中に朱色の屋根をもつ家々が形作る町とその向こうに見える王城を見つめた。
「…エスターの城に似ているね」
それに並ぶようにドラゴンを翔けさせていたアーサーはイサミに目を向けると
「当然だろ?」
と告げた。
「セレトスや他の国々の発祥は同じなんだぜ」
地殻変動があり逃れるように新たな大地を求めて移動した人々が幾つかに別れて集い国を作り、それが結合したり分断したりして今の形になったのだ。
エスターの初代の王であるアルバートが連れてきた人々もその最初の礎となったのである。
アーサーは徐々に降下すると緑の森の中に降り立ち同じように降り立ったイサミとルーシェルとラルフを見た。
「さて、俺がセレトスの王族と関係があったのは1000年前だ」
今は関連も何もない
と息をついて、木々の向こうに見える王城を見た。
「遺跡から封印を解いて魔物を退治するにも…王族との交渉が必要だ」
イサミはそれににっこり笑うと
「そうだよね」
じゃあ、ここからは徒歩で城へいこう
と告げた。
…。
…。
…。
ルーシェルは軽く眉間に指をあてて
「…おい、こいつの言った意味が解ってねぇんじゃねぇのか」
とチラリとアーサーを見た。
ラルフはイサミを見ると
「イサミ、アーサーは王族につてがないからどうすればよいかを考えようと言っているのだが」
と説明した。
イサミは頷いて
「だから、王城へ行って話をするしかないと思うんだけど」
大丈夫
「きっと王様はあってくれるよ」
と笑みを浮かべた。
「コーリコスやサバラーナの話をすればわかってくれると思うんだ」
ラルフは少し考え
「なるほど、確かに人族のことは詳しくはわかんが…先の件の噂ぐらいは流れているだろう」
と呟いた。
イサミは笑顔で
「クエストではそういう展開が多かったんだ」
まあ、エルフの国では牢屋に入れられたりしたけど
「何とかなってきたんだから」
大丈夫だよ
と告げた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。