セレトスの怪花
イサミは宛がわれた豪華な部屋のベッドの上に身体を横にして椅子に座って外を見ているアーサーを見た。
「アーサー」
呼びかけ少し間を置いた。
アーサーは呼ばれてイサミを見ると
「ロキ…という冒険者…イサミはゲームだった頃にはあったことがなかったんだな」
と呟いた。
イサミは頷き
「冒険者は多かったし…時間帯や色々な条件で全く会わない人も多かったよ」
と言い
「だけど、少し気になることがあって」
あの時のなおくんと違ってたなって…
「地下の国での…なおくんに」
と呟いてスコンと眠りに落ちた。
アーサーはスコスコと眠るイサミを見て驚きつつも小さく笑って
「ま、とりあえずは明日の怪物退治に集中した方がいいな」
と椅子から立ち上がるとベッドに身体を預けた。
夜は深々と降り、王都も町も静寂と闇の中に包まれた。
その闇から離れた場所でロキと名乗った人物は倒れる神族を見下ろし
「何れ…俺の下にやってくるだろうが」
今はまだ早い
「精々、怪物を倒しておくんだな」
と呟き姿を消した。
ラルフの部下である神族の兵士はヨロリと立ち上がり
「申し訳ありません、ラルフ様」
と羽根を広げると事態を知らせるために空へと舞い上がった。
翌朝。
ラルフは戻ってきた兵士からことと次第を聞くと
「相手はイサミと同じ冒険者の力を持っている」
私でも正面から対峙して勝てるとは思っていない
と言い
「エルフの国へ向かったか…よく追ってくれた」
また連絡する
「それまで身体を休めておいてくれ」
と告げた。
兵士は頭を下げると姿を消した。
それに椅子に座って寝ていたルーシェルが薄目を開けて
「ま、消滅させられなかっただけでもめっけものだったな」
と告げた。
「イサミと同等の力を持つ奴に勝てる奴はイサミぐらいだな」
ラルフは頷き
「確かにな」
と呟き
「ま、本気ではなかったということだろう」
と付け加えた。
そして、夜が明けた窓の外を見て
「とにかく今はマンドレイクという怪物を封印することに集中した方がよいな」
と告げた。
ルーシェルは椅子から立ち上がると
「そうだな」
と応え装備を整えた。
夜明けの光が王都に降り注ぐと人々の活気が広がり、王都の中庭には兵士が集まっていた。
リアナもまたイサミやアーサー、ラルフにルーシェルを待っていた。
本格的な怪物封印の旅の始まりであった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




