31.双子天使のコンビネーション
「魔王軍第零部隊所属、『堕天使・(ご主人様に)忠義のミカエル』」
「「っ!」」
ミカエルの自己紹介に、サンダルフォンとメタトロンは目を見開く。
まぁ無理もあるまい。
例えば逆に、僕が魔王城の一室で待ち構えてて、勇者パーティにアルちゃんやルネがいたらギョッとするのは間違いないだろう。
「ミカエル……確か、ベンと言ったな」
「うん、そうだよ♪」
笑いかけながら答える。
サンダルフォンから、物凄い『憤怒』の感情が湧き上がっている。
「…………」
そして対するメタトロンは、『混乱』と『悲哀』、そして僅かながら『絶望』を心に宿している。
この僅かな絶望も、僕にとっては美味である。
あぁ……これであと半年は何も食わずに生きていけそうだ。
「アンタだけは、絶対に許さない!!」
すると、サンダルフォンが、超スピードでこちらに向かってきて、足を振りかぶり、かかと落としが……
決まることはなかった。
ミューが防いでくれたのだ。
こんな感じに実況しているが、実際そのスピードというのはとてつもなく速い。
恐らく、1秒さえあれば向こうの攻撃は100〜150発食らってしまうだろう。
しかし、多分その全てを防ぎきることができる自分が怖いぜ。
「くっ……!」
「ベン様に蹴りを入れるとは、なんたる不届き者でしょうか」
ミューがあからさまに『悪役の側近』と思わしきセリフを吐いてくれた。
ミューって芝居もできるのか……完璧とはこのことを指すのだろうか?
いや、性格に難ありだから違うか。
「メタちゃん、お願い!」
「ん」
サンダルフォンがメタトロンに合図を出すと、メタトロンは右手の人差し指にはめた指輪をサンダルフォンに向け……
「………『全強化』!!」
おおっ。
サンダルフォンの全能力値が跳ね上がったようだ。
だがそれより驚いたのは、あまり声のボリュームが高くなかったメタトロンが大声を出したことだったというのは、秘密である。
ふむ……サンダルフォンの総合戦闘力がミカエルを超えたか……
いくら僕の魔力を流し込んだミューでも、勝てそうには無いな。
そもそも相手は片方がサポートとはいえ二人がかりなのだ。
ミューだけに押し付けるのは不公平だろう。
「ミカエル。頼んだ」
「ん」
すると、僕はマジックバッグからとある槍を取り出した。
『魔槍グングニル』
あの黒歴史ではなく、僕が打った逸品だ。
もちろん僕の魔力が使用されているわけで、ミカエル曰く『持っているとドキドキして落ち着く』だそうだ。
この際発言が矛盾していることは無視して、とにかくミカエルに一番合った槍だと思ってくれれば良い。
「ミカエル……本当にアタイらとやり合うの?」
「………」
「アタイらを忘れちゃったの……?」
「いや、ちゃんと覚えてる」
まあな。
僕はミカエルの記憶までを消したわけじゃ無い。
彼女の人格をリセット、及び書き換え。
そして僕への忠誠心の植え付け。
……だけだった、はず。
あの時は正直混乱していたためよく覚えてないが、確かそんなことをしたんだと思う。
「っ!じゃあなんで⁉︎」
「単純。ご主人様が好きだから」
「ぶふぉっ」
盛大に吹き出してしまった。
いやまぁ分かるよ?
夜這いまで仕掛けてきて、僕のことが好きだってことは薄々気づいてはいたけれども!
だけどこの場面での爆弾発言は控えてもらいたいな。
「そう。洗脳されたのね。大丈夫よ。今すぐ、正気に戻してあげるからねっ!」
超スピードで僕の腹めがけてやってくる。
だが、それは叶わない。
「させない」
「ベン様に危害は加えさせません!」
ミカエルの振った槍が、サンダルフォンに激突。
追い討ちとばかりに、ミューが魔術を放つ。
おや?予想とは少し違うな……ミューとミカエルが強すぎる。
今の攻撃は正直防ぎきれずに僕にくるのかと思ってたけど……ん?
よく見たら、メタトロンがいないぞ?
そう思った刹那、
『サクッ』
左脇腹から右脇腹にかけて、熱い何かが流れ出した。
そして振り向いてみると……
「高みの見物……調子に、乗るな」
目がギラリと光ったメタトロンが、僕を剣で貫通していた。
あぁ、もちろん痛く無いですよ?
作者「気が付いたら総合PVが40000、ユニークで10000越えてました!ありがとうございますっ!」
ベン「これも、日頃よりご愛読下さる皆々様のお陰だね」
ミュー「これからもますます精進いたしますので」
ミカエル「これからも、『魔王軍第零部隊隊長〜絶望の化物』を、よろしく」
サンダルフォン「え⁉︎ア、アタイらのセリフは?」
プチィーニ「そうやそうや!っていうか!今回本編にもワイのセリフ無かったやろが!」
メタトロン「最後に……いいとこ……見せたから……私は……満足……フッ」
サンダルフォン「メタちゃんずーるーい!」
ミカエル「ということで、次回は2/27。ブックマーク、高評価、コメント、質問等、よろしく」