3.化物開眼
試験も終わり(成績のことは聞かないでください)冬休み。
投稿のペースを上げられます。
〜2年前・テハレ村〜
幼馴染であるレスティア・フレイシスの職業が勇者と認定されてからはトントン拍子で王都へ出向き、勇者の旅をすることが決まった。
レスティの旅にはシフィア姐と緑髪のあの子ーーリエルが同行するらしい。
ん?僕?いや、職業が村人の奴を勇者の旅なんか連れてくわけないでしょ。
まぁというわけで今日、レスティの旅立ちの日というわけなんだが……
「ここを離れたとしても、レスティアはこの村を忘れるなよ」
「レスティア、これはこの村から代々受け継がれたネックレスじゃ。旅の途中にこれを見て、儂らを思い出してのぅ」
「レスティアが居なくなると寂しくなるねぇ」
レスティは村のみんなから結構持て囃されている。
お、シャナおばさんが来たぞ」
「レスティア。あんたこのクッキー好きだったろう?行きの馬車で食べな」
「シャナさん……ありがとうございます!」
レスティが満面の笑みでそう答える。
……全く、僕からのお別れはいつになったらできるんだろうね。
僕は村人認定されてからはこの村の人々からも嫌な目で見られるようになった。
それはシャナおばさんも例外ではなく、現に僕は今馬小屋の掃除をさせられている。
ほんと、職業鑑定なんてのはただの肩書きを覗くくらいだけなのに、何でまぁこんなになるのかなぁ。
つくづく人間というのは頭がおかしいと思う。
「大変ですね」
「全くだよ」
1人寂しく作業をしていると、声をかけて来たのはリエル。
そういえば僕が村人認定されて差別しなかったのはリエルとレスティとシフィア姐だけか。
……幸難い世の中だな。
レスティとシフィア姐は分かる。
だがこの娘は僕とあまり接点を持たない。
つまりこの娘は普通に純粋な心で僕を差別せず、平等に扱ってくれている。
いい子やぁ〜。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
数日後、
そんなこんなでレスティ達は今はもう王都に着く頃だろう。
僕は未だに馬小屋の掃除を続けている。
ちなみにレスティとは別れの言葉を言っていない、というか、他の人がまずレスティとの面会を許してくれない。
そのレスティはなんだか寂しそうな顔をしていた気がする。
「こらベン、何サボったんだい!とっとと仕事しな!」
シャナおばさんの硬い拳が僕の頬骨に突き刺さる。
痛いんだよねぇ、これ
今までは我慢してたさ。
レスティの目の前で逆上したら折角育てた感情が未成熟のまま食すことになる。
それは嫌だ。
でも、そろそろいいかな♪
僕は殴られた頬を手で抑えつつ、自分の身体の中にある魔力を解放した。
『バサッ』
背中から黒い二つの物体が飛び出る。
もちろん槍で貫通されて飛び出たわけじゃない。
僕の背中から生えたのだ。
黒に染まった、全てを暗闇に覆えるような、『翼』を
振り返ると、そこには怯えた表情で腰を抜かして座っているシャナが居た。
「あっ………あんたっ…………」
おやおや、何やら凄いものでも見たようだ。
さっきまでの威勢は何処に?
……まぁ、そんなわざとらしい自嘲はよしとして、めんどくさいからチャチャっとやったるか。
指先に自分の体内に流れる魔力を収束させ、黒?いや紫色のした拳ひと握りもない位の大きさのボールを創り出す。
「……反重量磁場球」
それを自分の指先から離れさせ、シャボン玉のように宙を漂わせる。
そのボールは1、2秒ほど空中を舞ったのち、空中のある一点で停止、そして、(人間の目では見えない速さで)膨張した。
数分後
「やっと収まったかな……」
目の前に見える景色は、まさに廃村のようだ。
しかも、村が壊滅してからもう何十年も経ったように、ほとんどの建物が全壊、教会とレスティの家は風穴がボコボコと空いている。
そこには数分前までの原型はなく、朽木、石片、遂には人骨までもがある。
「ひっ………」
僕の背後には一人いる。
シャナだ。
シャナの周囲には黄色い膜がある。
これは僕の魔法で、シャナを守ってやったのだ。
「今のは反重量磁場球と言ってね、ガッチガチに固めた魔力の塊を一気に膨張させることによって、周囲の物体ーーそれがたとえ生物だろうと無生物だろうと長い年月をかけて風化したみたいに破壊し尽くすことができる魔法だよ」
この魔法は消費魔力が多い上に破壊力が小さく、ある一定の魔法防御力があれば完全に影響を受けない、あまり使い勝手の良い訳ではないが、僕の演出にはもってこいである。
「あっ、あんたは一体……それにその目は……」
僕の目は今赤い。
赤い目というのは人間ではいないが、僕の種族ではほとんどがこの目をしている。
さてと、改めて自己紹介をしよう。
「僕の名前はベン・テルメード。齢6,500の純血悪魔。今は魔王軍第零部隊隊長を務めさせてもらっているよ」
「ま、魔族………」
「魔族じゃなくて悪魔。魔族は人間の姿とは程遠い」
おやおやおや、さっきまで僕を怖い顔して怒鳴り散らしてたやつがすごい怯えちゃってるね。
この感情……快感だ
『スバッ……コテン』
目の前の人物の頭部が横になり地面を転がる。
遅れて血が噴き出し、僕の身体を赤く染め上げる。
「ごちそうさま、その絶望感」
僕はペロッと血を舐め、広場へと向かう。
「……………複製」
僕の手から創り出されたのは僕の頭部。
それを広場の真ん中に立てて置く。
今この時より、テハレ村出身の人間、ベン・テルメードは死んだものとする。
次に勇者が来るのはいつかなぁ?
あー、久しぶりにアイツに会いに行こうかな
クリスマス……
一人でどっか行こっかな……