18.請願と堕天使
ちょっと短いかな?
「結果、勇者ユークリートを(トドメはさしていないが)撃退し、なおかつ敵である七大天使が一人、ミカエルを(なんか偶然)奴隷にすることができました」
「ふむ、素晴らしい!」
玉座の間にて、本日の戦歴を報告している。
まぁスシュロスだけど。
僕は跪いているスシュロスの後方で、腕を後ろでクロスさせ、休めの姿勢で待つ。
ミューとミカエルは、先に僕の部屋に行ってもらった。
「今回の件、まことに大義である。故に、妾の方から二人に何か褒美を授けよう。言うが良い!貴様らが欲するものは何か!」
「僭越ながら私は魔王様の元で生きることこそが望む全てであり、これからもそのつもりでございます。故に、私が欲するものはございません」
このやり取りは魔王軍ではテンプレートである対話だ。
褒美を聞かれたらないと答える。
これは僕が生まれる前からずっとある風習のようなもので、実際は拘束力などというものは全然無い。
つまりだ。
「うむ、無欲なのが、また良し。して、そなたは?」
聞かれた。
僕は立っている姿勢から、片膝をつき、スシュロスと同じ体勢になる。
ここまではテンプレートと同じだ。
だが、そのことを聞いたアルちゃんに後悔させてやる。
「私は、この魔王城での拘束を解いてもらいたい。具体的にかつ簡単に言うと、もういっそ自由に世界を旅したい」
「なっ、貴様、無礼な」
魔王軍魔王護衛団剣術組組長ヴェルキシスが声を上げる。
背後の大剣の柄に右手をかけていた。
ほう、僕とやろうってのか。
十数世紀前、コイツに剣術の稽古をつけてやったな。
最近、護衛団の組長になって調子に乗ってるんじゃないのかな?
これは、どちらが上か一度コテンパンにした方がいいだろう。
「やめんか!」
アルちゃんの一声で一瞬殺気立った僕の心が平常に戻る。
というのも、アルちゃんの声が妙に可愛いのもあるんだけど。
「………失礼いたしました、魔王様」
「僕には謝らないのかい?」
「貴様……あとで覚えていろ」
「僕に勝てるくらいの力を持ってから言ってよ」
「じゃから、それをやめいと言うとるのじゃ」
「「…………」」
睨み合いにことを収めることにする。
テートリアは浮動だにせず、スシュロスは目を瞑ったまま。
……コイツ寝てんじゃないの?
そしてアルちゃんはやれやれとこめかみをつまみ、こう言った。
「分かった。その願い、聞き入れよう。ただし、自由にさせるとこの間のようなことが起こるやもしれん。それについての解決策を用意しておくから、それまではまだこの城で待機じゃ」
「ありがたき幸せ」
結果オーライ♪
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部屋に戻ると、いになり何かが僕の腰に巻き付いてきた。
目線を下にやると、そこにはほっぺを僕にスリスリしているミカエルの姿が……?
ん?あれ?なんか違くね?
「えと、ミカエル?どうしたの?」
「なにが?ご主人様」
「えとだって、羽と、頭の輪っかと、髪の色が」
「あーそれについては私が説明いたします」
部屋の奥からやってきたミュー。
こちらはいつも通りだ。
後ろで自分から手錠つけてるとことか。
「ミカエルは、天使です」
「うん」
「そして、魔王城の天使からしては毒である魔力という名の瘴気にやられ、堕天しました」
「え?まじ?」
もう一度ミカエルを見る。
光り輝いていた頭の輪っかは黒くなり魔力を放っている。
純白で美しかった背中の羽は漆黒に染まっていた。
燃え滾るような赤い髪の色は、紫……じゃない、すみれ色に染まっていた。
「えとね、ご主人様、『堕天使・(ご主人様に)忠義のミカエル』、だよ?なんちゃって」
舌を出してポーズをとるミカエル。
手はピースにして目元に添えてある。
クッソかわええなぁ。
長生きはするもんだよ。
「うん。じゃあ、これからよろしくね、ミカエル」
撫でてやると、また僕に抱きついてきた。
「いやー、昔の頃のルネみたいだよ」
ルネも昔はこんな感じに甘えてきたんだよなぁ。
でも今はもう僕なんか邪険に扱われ、彼女の方から僕が避けられている。
そんなことを思っていると、ミューがなにがを待つ犬のように、ハッハッとしながら見つめてきた。
「ミューももちろん、これからもよろしくね」
「はいぃ♡」
僕は、ミューの頭も撫でてやった。
アルテ「次回はベンの旅立ち前、そして……」
ルネ「私が本編にて初登場です!」
作者「といってもワンカットだけだけどね」
ミュー「ちなみに私とミカエルは、ベン様の旅について行くので、すでにレギュラーメンバー登録です」
ミカエル「レギュラーメンバーは番外や別人視点以外のほとんどのストーリーに出ることができる。貴方達の出番はもう無い。ご主人様に着いて行く私たちは、貴方達のような脇役とは違う」
ミュー「俗に言うハーレムメンバーというやつですね」
ヴェルキシス「そんなバカな……」
スシュロス「ちょっと待ってください。僕は準レギュラーみたいなキャラじゃなかったんですか⁉︎」
作者「あー正直ぶっちゃけちゃうと、第七守護塔編ってベンを軟禁状態から解放するためのキークエストで、スシュロスはただそのクエストの必要メンバーだったってだけなんだよ。まぁでもこれから出番が全く無いって言うわけじゃ無いから、安心していいよ」
スシュロス「この僕が……脇役……?」
ベン「そんなことより!次回更新は2/4だよ。ブックマーク、高評価、コメント、質問等よろしくね」