14.Mでも恋するんです‼︎
ミュー回ですね。
バトルシーン難しい……
「さて、もうほとんどの騎士は片付いたかな」
僕らがいるのは『第七守護塔』の第八階層。
なにもない場所で、ただあるのは突っ伏した騎士の肉塊のみ。
騎士や聖職者というのは死ぬ時は神に、天使に魂を捧げるという考えらしく、あまり濃い絶望は味わえなかった。
そのため、今僕は結構イライラしている。
表面だけ見るとただ微笑んでいるようにしか見えないが、内心
今すぐ、このイライラを他人にぶつけたい。
などと思っている。
「オメェら、俺の大切な仲間たちをよくもやってくれたな」
第八階層と第九階層を繋ぐ階段、そこから降りてきたのは、銀髪で褐色の肌、そして胸に金色のエムブレムを彫った甲冑を身に纏った、大男だった。
「『暗黒光線』」
ミューが素早く魔法を繰り出す。
『暗黒光線』はその名の通り、闇属性の波動を一直線に撃ち出す魔法。
「……ほう」
「へぇ……」
ミューと僕は感嘆の声が上がる。
煙が上がり、それが晴れたころには、その大男が斧を構えて立っていた。
「ひでぇな。まだ挨拶もしてねぇってのによ。まぁ、別嬪な嬢ちゃんからなら嬉しいけどな」
「じゃああえて言っておきます。ミューと申します。どうぞ死んでください。『暗黒光線』」
2度目の『暗黒光線』は五割り増しの威力だった。
この威力ならばと思ったけどまだまだ不十分だな。
「………ちっ!」
案の定、その大男は立っていた。
同じく、斧で防いで。
「アイツは、勇者ユークリートの仲間の一人、名はガルドと言っていたと思います」
スシュロスが耳打ちをする。
なるほど勇者パーティか。
それならばミューの攻撃に耐えられることも頷ける。
「俺の名前はガルド・バーランドだ。ユークリーデ王国王子ユークリート・ヴァリー・ユークリーデ様に仕えし騎士団の団長を務めている」
……ユークリートって王子だったのか。
でも、珍しいこともあるものだな。
まさか国の王子が『勇者』だとは。
レスティアなんか、ちんけな村の村娘だったわけだし。
ベン君、ちょービックリ。
「あなたの名前を聞いたところで、私の記憶になんか残りませんよ。どうせすぐ死ぬ人間なんて、一々覚えてても仕方ないですし」
……あれれミューって、そんなキャラだっけ?
なんかシリアスモードで近寄り難いんですけど。
ベン君、ちょービックリ。
「なかなか言ってくれるじゃねぇか嬢ちゃん。だが、俺はそんな簡単には死なねぇぜ?」
「そういうセリフを吐く人というのは、大体がすぐ倒されるのですよ」
二人の距離が縮まる。
あら、じゃあ僕とスシュロスは傍観と行こうか。
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ガルドと名乗った男は私に向かって突撃してきました。
そして斧を振りかぶりーーここまでゼロコンマ数秒というところでしょうか。
確かに速いですが、私にとっては無駄なことです。
「ふんっ!……な⁉︎」
私は、左手で斧を止めました。
悪魔は魔力を多く持つ為、魔法での攻撃がメインかと思われがちですが、ちゃんと体術が得意な方も存在します。
例えばスシュロス様は、魔力でコーティングしてますが、剣で戦います。
私は、どちらかというと武器よりも身軽な上、小難しい魔力の調整など必要ない為、自分の拳で戦います。
「嬢ちゃん、なかなかバイオレンスだな。……暴力的なオンナはあんま人気じゃねぇぜ?」
「私は……Mです」
「「いやそんなことここで話すなよ」」
ベン様とスシュロス様からツッコまれてしまいました。
あぁ、ベン様、そんな差別的な目で私を目見つめないでくださいぃぃぃ!
「はふ…やる気が出てきました」
「へっ!じゃあ行くぜ!」
ガルドからの猛攻。
振り下ろされた斧の側面を手の甲で押して、受け流します。
右、下斜め左、上、下斜め右……
遅いです。
ベン様の書類にサインをするスピードと比べれば、まるで時が止まっているよう。
あ、チャンスです。
「グハァ!!」
甲冑に包まれた腹を殴ったところ、甲冑は破れガルドが口から血を吐き出してしまいました。
ああ、本当なら私が吐いてみたいですけど、この男には力不足。
「くだらないですね」
「ほう……言ってくれんじゃねぇか嬢ちゃん」
そう言うと、この男は、突如、斧を投げ出しました。
「どうしました?戦意喪失ですか?まぁ私はいじめ趣味などないのでそれはそれでいいのですが、結果的には殺さないといけないので、最後まで抗った方がいいのでは?」
「へっ!冗談言っちゃいけねぇぜ。オンナにゃ見せたくなかったが、俺の本当の力、見せてやるよ」
すると、ガルドの体の中から、何やら暑苦しいオーラが湧き出してきました。
そしてそのオーラに包まれたガルドから、妙に力強いエネルギーを感じます。
「まさか……貴方も拳で戦うのが本気だと…?」
「いや、違う。俺の本当の武器は……これだ」
そう言い、ガルドはどこからともなく太刀を取り出し……これは、『マジックバッグ』ですね……
バッグと言いながらも空間そのものがバッグである魔法。
その中から取り出したのは、柄に目玉が入った禍々しい雰囲気の太刀。
「驚いたか?これは『魔剣デュライ』という剣でな。使用者の命を削るが最高に強い剣だ」
「そんな悪魔の剣に入り込むとは……戦士として、武器に頼りっぱなしでいいのですか?」
「はっ!俺は勝てばいい、強ければいい!たとえそれが、嘘偽りの力だとしてもなぁ!」
くっ!これは流石に速いです!
受けきれません!ガードを!
怖い、怖い、怖い、怖い!
私は、反射的に目を瞑りました。
「『黒弾』」
「まぁ、よく頑張ったよ。ミューは。でも、ここまでだ」
目を開けると、そこには倒れ血を流しているガルドと、指をピストルの形にしていた、ベン様でした。
私はその姿に、心の奥底で何か引っかったものがありました。
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盲点だった。
危うく、ミューを死なせてしまうところだった。
『魔剣デュライ』は数千年前、僕が鍛冶を習得した時に試しに作ってみた剣だ。
当時は若く、自重というものを知らなかったおかげで、こんなバケモノを世に送り込んでしまったことは、酷く反省している。
この剣は、正確には命を削るのではなく、本当は『使用者の精神を蝕む』効果がある。
言わばこの剣に中毒症状が現れるということである。
当時血気盛んだったクソガキの頃、人を殺して絶望を味わうことしか知らなかった未熟時代ゆえ、この剣は使用者に殺人の快感を覚えさせる。
全く、怖い怖い。
デュライは素早く回収、そして破棄せねば……
そんなことをしていると、背後から、腰にふと抱きつかれた。
「ベン様………っ」
ミューだ。
おいおいおい、超可愛いじゃないか。
ベン様キュンってしちゃうよ。
「……女の子が家族以外の男の人に抱きついちゃいけません。男は怖いよ?襲われるんだよ?」
「ベン様になら……構いません」
んなぁ……かわゆいよぉぉ……
でも、まだ終わってないから、あとだ。
「ミュー。あとでにしてくれないかな」
「あとでなら、いいんですか?」
「えっ……………えーっと、う、うん、まぁ」
「分かりました、それでは今は我慢します」
ミューが微笑んで笑いかけてくる。
なんだ。
この子、やっぱり女の子じゃないか。
「………けっ!」
もはや空気だったスシュロスが発した言葉である。
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「おや、ガルド、重症ですね」
「くっ……ちーっと油断したぜ。頭突っ込んでこないと思ってた仲間野郎がが手ェ出してきやがったからな」
ガルドは、最上階にて黒装束の男に肩を支えられて、勇者と、聖女らしき女性の前にいた。
「貴方はガルドと一緒に王都に戻りなさい。まずはガルドの怪我を治すのが最優先です」
コクリ、と黒装束の男は頷く。
その瞬間、ガルドと黒装束の男はその場から消えた。
「さて、ユークリート様、戦闘準備はよろしいでしょうか?」
「…………はい。昔のリベンジ、果たしてやる。ミカエル様は他の二人の足留めをよろしくお願いします」
「いえ、足留めではありませんよ。蹂躙です」
綺麗な赤髪の聖女らしき人物は、そう微笑んだ。
作者「ミューちゃん可愛い……ハァ…ハァ…」
ミュー「コロしますよ」
ベン「ミューちゃん可愛い……ハァ…ハァ…」
ミュー「ーーーーーーっ!!!」←悶絶
作者「なにこの差」
ミカエル「まぁ分からなくもないです。女の子として、生理的に無理ですし」
作者「ミューは設定1000歳以上、ミカエル設定5000歳以上、そして俺!○○(二桁)歳!」
ミカエル「種族を考えてください」
作者「お前次回かその次の回絶対酷い目に合わせてやる」
ユークリート「まぁそんなことより、次回は1/31公開です。ブックマーク、高評価、コメント、質問等よろしくお願いします」