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第34話 野球(普通のと、なんか違くない?)

 …………

 ………

 ……

 …


「やはりうまくいかないか……」

 魔族の少年がつぶやいた。


 どことなくレズビアの兄のベリトさんに似ている。

 ロリベリト? いや、男の子はロリとは言わないな。たしかショタっていうんだっけ? ショタベリトだな。


 ここはどうやらレズビアの隣の部屋にある実験室のようだった。が、あまり本は積まれていなかった。

 僕は物陰に隠れて、ベリト少年を見ている。


 ふと、ドアを開けて、誰かが入ってきた。

 悪魔族の少女だった。けど、レズビアとは少し雰囲気が違う。もっと落ち着いた雰囲気で、優しそうな顔をしている。


「アネリア、起きてたのか」

 と、ベリト少年は言う。


 そういえば、少女はアネリアさんに似ている。おそらく子供のころのアネリアさんなんだろう。ロリアネリアだな。


「ベリトこそ、こんな遅くまで」

 と、ロリアネリアが言う。

「あなたには、たぶん無理ね。ペロンチョ界に行くなんて」


 ペロンチョ界に行く……?


「そんなことない」


「いいえ。明後日には、私の部屋と、この実験室をレズビアに渡すわ。あの子、ひとり部屋が欲しいって言ってたし、それに魔術の才能もある。ここを使わせてあげたいの」


「僕には才能がないっていうことか……?」


「そうじゃないわ。あの子の才能は特別だって言っているのよ。私より、ベリトよりずっとね。まだ幼いし、ほとんど誰にも習ってないのに、レズビアの魔術の組み方はとても完成されているわ。この部屋で色々と試させてあげたいの。いずれ、魔界を救うような魔術も完成させるかもしれない」


「魔界を救う、か……」

 ベリト少年はつぶやいた。


 …………

 ………

 ……

 …


 ん? なんかお股がむずむずする。

 

 あ……何? この感じ……。

 あ……ああ……あっあっ……ああっ……?!


 目を開けると、レズビアが僕の両脚を抱えていた。そして、彼女の右足が僕のお股を攻撃している。ぐりぐりと攻撃している。

 これって、いわゆる電気あんまってやつ!?


 って――


「ぎゃああああああああ! な、何やってんの!?」


「昨日は早く起きたと思ったら、次の日にはもうこれか」


 ぐりぐりぐりぐり……。


「ごめん、ごめんて」


 昨晩のあれで、僕が寝たのはかなり遅かった。そういや昨日の僕はちょっとおかしかったかも。


「感じちゃってるのか? この淫魔め」


 ぐりぐりぐりぐり……。


「やめて。お願い」


「明日はちゃんと起きるか?」


 ぐりぐりぐりぐり……。


「起きます! 起きますから!」

 

 ようやっと、レズビアは僕のことを解放してくれた。


 くそぅ……明日早く起きたら、やりかえしてやるからな。



   ※   ※   ※



 登校三日目、午前中に体育の授業があった。

 野球をやるということだった。さすがにブルマだと危ないらしく、ジャージの着用が認められた。


 我ら「いちご組」は「みかん組」との試合をすることになった。

 で、僕は今、レフトを守っている。


 ぱたぱた翼を動かして、宙に浮かびながら。


「これ、空飛んでいいなら、何でもありじゃないの? ホームランとか出ないじゃん」

 と、僕は同じく隣で浮いているスウィングに言った。

 しかも、外野が十人くらいいるし。僕の知ってる野球と違うんだけど。


「じゃあ、あれ、捕れるかしら?」


「ん?」


 打席のほうを見る。打者の放った打球が、ライト方向へ飛んだと思ったら、一瞬で遥かかなたへと飛んでいった。

 まるで昔映画で見たレールガンみたいだ。なんか悲鳴も聞こえてきた。


「あれ、当たったら死ぬよね?」


「そうね。打球が飛んでこないことを祈るしかないわ」


「ひえっ……」

 飛んできませんように、飛んできませんように。

「あと、なんかボールが悲鳴上げてなかった?」


「ああ、あのボール、生きているのよ」


「は?」


「ボールには、死んだ人間どもの魂が封じられているのよ。やつらは野球のボールとして、ずっと苦痛を味わうことになるわ」


「ひえっ……それ、残酷でしょ」


「魔族を殺した罰よ。これでも足りないくらいよ。あんた、ずいぶんと優しいのね」


「まあね……」


 アルビンが言っていたように、この魔界で人間の姿に戻ったら、まず間違いなく殺される。で、野球のボールにされる。くわばらくわばら。



   ※   ※   ※



 僕に打席が回ってきた。

 最終回、同点でツーアウトランナー三塁。サヨナラのチャンス。


「リリス、絶対に打て」

 レズビアがメガホンをぱんぱんと叩きながら言う。むちゃ言うなよ。


「リリスちゃん、頑張って!」

 女子たちの声援が聞こえる。


 でも、僕、自信ないよ。ほら、バッターボックスからおっぱいはみ出てるし。


 相手のみかん組のピッチャーは、腕が六本あった。リアル千手観音投法じゃん。


 で、ピッチャーが真ん中の腕で投げてきた。


「ぎゃあああああああああああああ! 打たないでええええ!」

 顔のついたボールが泣きながら僕のほうに飛んできた。


 打つのちょっとかわいそうだな。


「ストライク!」

 球審をしている先生が言う。


「リリス、何をしているのだ。ど真ん中だったろ」

 レズビアが怒鳴ってくる。


 そう言われてもですね。


 次にピッチャーはいちばん下の手で、アンダースローで投げてきた。

 また悲鳴が聞こえる。ボールの泣き顔も見える。


 ん?


 ボールは浮き上がりながら、僕の身体のほうに近づいてくる。うん、おっぱいに当たりそうな感じ。


 瀬崎くんが言ってたけど、これってどうなるのかな。デッドボールになるのかな?


 考える余地もなく、ボールは僕のおっぱいにぱふっと当たって、上のほうに跳ねた。いてて。


 その瞬間、僕は目撃した。


 ボールがとても嬉しそうな、恍惚の表情を浮かべているのを。


 なんかむかつく。


 ルール上いいのかどうかよくわかんないけど――


 僕は上のほうに跳ねたボールをバットで思いっきりぶっ叩いた。


「ぎゃああああああああああああああああああああああ!」

 ボールは悲鳴を上げながら、センター前に飛んで、前進守備の中堅手の前にぽとりと落ちた。


 三塁ランナーが本塁に向かって走りはじめる。よっし、サヨナラ勝ちだ。


「リリス、早く走れ!」

 と、レズビアが叫ぶ。


 僕は一塁に向かって走る。

 けど、おっぱいがばゆんばゆん揺れてうまく走れない。


 センターを守っている生徒は、僕の足がくそ遅いのを見て、本塁ではなくて、一塁に投げる。

 まさか、センターゴロになる?


 僕は必死で走る。おっぱいが揺れすぎてあごに当たる。


 ちょっとこれ間に合わないかも。

 僕は地面を蹴って、一塁にヘッドスライディングする。


 どてっ。


 ヘッドスライディングというより、ただ地面に倒れこんだだけみたいな感じになった。


 土煙が舞う。アウト? セーフ?


 一塁を見ていた先生が宣言する。

「タイミング的にはアウトっぽいし、それにそもそも一塁ベースに手が届いてないけど、これアウトにしたらなんかかわいそうだし、延長戦とかやるのかったるいからセーフ!」


 わああああああああああああああああああ!


 大歓声が上がった。

 

 千手観音のみかん組のピッチャーは、がっくりと膝をついた。


「リリスちゃん!」

 いちご組の女子の面々が僕に駆け寄ってくる。


 そして、僕を囲って揉みくちゃにする。

「ちょ、どさくさにまぎれて、おっぱい触ってこないで。だから、羽も尻尾もダメだって!」


 それから僕は胴上げされた。

 まるで優勝したかのようだ。


「リリスさん、これあげるわ。ウイニングボールよ」

 オキュラが僕にボールを手渡してきた。


 僕はそれを受け取った。

 ボールはにやりと笑い、

「もっかい、おっぱい触らせて」


「ひえっ……」

 僕はそのボールを地面に叩きつけると、足で何度も踏みつけた。


 踏みつけるたびに、ボールが、

「ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます!」

 と、連呼する。

 

 気持ち悪っ……。

 どっかに捨てとこう。

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