第21話 ナチュラルボーン・ビッチ(何そのわけわかんない言葉)
僕の分とレズビアの分、ふたり分のトレーを運ばないといけない。
ううむ、片手ずつで持つのは厄介だぞ。
ふと、僕は自分のおっぱいが目に入った(というよりも、いつも視界にちらちらと入ってくるのだけれど)。
これ、使えないかな。
僕は右の乳に僕の分のトレーを乗せ、右手で固定する。そして、左の乳にレズビアの分のトレーを乗せ、左手で固定する。
こうすればふたつのトレーを四点で固定できる。
この乳もそれなりに役に立つじゃん。
「リリスさん、それすごい技ですね」
と、オキュラが言う。
たしかに技といえば、技かな。
本来ならこんなことしたくないんだけど。
まわりが何かざわざわしている。
「おい、見ろよ、あの女、おっぱいでトレー支えてんぞ」
「なにあの子、すごくなーい?」
……顔から火が出そうなんだけど。
マジでこんなことやらなきゃよかった。
レズビアとスウィングのところにたどり着くまで、僕は見世物みたいになってしまった。
「そんなに自分の乳をアピールしたいのか? さすが淫魔族だ」
「レズビアの分も持ってきてあげたのに、その言い草はないでしょ」
僕はレズビアの前に、しょうが焼き定食を置き、彼女の隣に座った。
「あたし、リリスちゃんのとなり~」
カーミラがさらに僕の隣に座る。
向かいには、スウィング、オキュラ、テレーズが座っている。
「リリス、なんだかんだいってもそれが好きなんだな」
レズビアは僕のカレーライスに乗っている触手を見る。
「ち、違うよ、これはだね……」
「しかしトッピングを入れる金は渡してないが……」
レズビアが首をかしげる。
「リリスさんは、私と似た能力を持ってるわ。それでよ」
と、オキュラが言う。
「ああ、そういうことか」
レズビアが得心顔で言う。
「どういうこと?」
「リリスさん、わかってるくせに」
「無自覚なふりをするのも、淫魔族の技だな」
「でもでも、リリスちゃんのそういうところも、超かわいい」
「ちょっと、羨ましいですね……私なんか……ただのシリコーンの塊ですし……」
「テレーズ、羨ましがる必要なんてないわよ」
と、スウィングが呆れ顔で言う。
「ねえ、いったい何?」
「なーにとぼけてんのよ。男を誘惑して従わせる術を使ったんでしょ」
スウィングがジト目で見てくる。
「ぼ、僕はそんな手なんて使ってないから」
たしかにサキュバスとかそういう能力があるっていうけどさ。
僕はただ、ゴブリンのおじさんの前にトレー持ってっただけだよ?
「もしかして本当に無自覚なのかもしれないな。リリスはナチュラルボーン・ビッチだな」
「何だよ、そのわけのわかんない言葉」
「それって、むしろたちが悪いわね」
「わかったよ。もう何でもいいよ」
僕はふてくされて触手を食べる。
うん、おいしいよ。どうせ僕は淫魔ですよ。
「じゅるり……」
スウィングが僕の触手入りカレーを見て涎を垂らす。
彼女の前には何も料理がない。いくらお金ないっていってもかわいそうだな。
「おい、ウーパールーパー、汚いぞ」
「ウーパールーパーは爬虫類じゃなくて、両生類よ!」
「自分が爬虫類って認めてるようだな」
「だから違うわよ。れっきとした魔族よ」
「スウィング、食べたい?」
この触手を恵んでやろうじゃないか。
僕はスプーンの上に触手を乗せて、彼女の前にもっていく。
「あ、あなたと間接キスになってしまうわ」
と、スウィングは狼狽した様子で言う。
「貧乏人のくせにそういうところは気にするんだな」
「これでもちょっと前まで上流階級だったのよ」
「食べないの?」
「た、食べるわよ」
スウィングは僕の差し出したスプーンをぱくりと口に含む。けっこうねぶってくるんだけど。
「いちおう感謝するわ」
「いちおうって何だよ」
僕はスウィングの唾液のついたスプーンを見つめる。
まあ、スウィングもいちおう美少女だからね。
僕はそのスプーンでカレーをすくって口に含む。
「スーちゃん、あたしのもあげる」
カーミラはフォークに赤いゼリーのようなものを刺して、スウィングの口に突っ込む。
「おいしい?」
「わ、悪くはないわね」
「カーミラ、それ何?」
と、僕は聞く。
「なんかの血を固めたやつ」
「なんかって?」
「わかんない。リリスちゃんも食べる?」
「いや、遠慮しておくよ」
「私もスウィングさんにあげるわ」
と、オキュラもフォークを差し出す。なんかの眼球が突き刺さってる。
スウィングはごりごりとその眼球を噛み砕く。
「まるで餌付けされているみたいだな」
「捲土重来の機会を狙って、雌伏しているのよ。こんな屈辱は今だけよ」
「せいぜい頑張れよ。ちなみに、私のはやらないからな」
「別に欲しいなんて言ってないわよ」
「あ、私のはあげられなくて、ごめんなさい。本当にごめんなさい……」
と、テレーズが本当に申し訳なさそうに言う。
彼女が食べているのは、なんかゴムみたいなやつだった。
食べ物というより、なんか工業製品みたいなやつ。
「テレーズ、ひょっとしたら、スウィングは食べるかもしれない」
「私はゴムなんか食べないわよ!」
「ご、ごめんなさい……」
「べ、別にテレーズを責めているわけじゃないわよ……わかったわよ。食べるわよ」
スウィングはゴムを口に入れる。
「うおぇ……」
マジで食いやがった。
「あの……リリスさんも食べますか?」
「ぼ、僕は遠慮しておきます」
「ねえねえ、みんな、放課後になったらデパートに行こう? リリスちゃん、ここ初めてだからいろいろ案内したいなって」
「私もそう思っていたところだ。リリスのスマホとか衛生用品とかも買わないといけないからな」
「私はごめんなさい。生徒会があるから」
と、オキュラが言う。
クラス委員もやってて生徒会もやっているのか。たしかにオキュラの能力はリーダーにぴったしだ。そうそう、レズビアのお姉さんのアネリアさんって生徒会長だったよね。
「私も本当に、本当にごめんなさい……」
と、テレーズが悲壮な顔をして言う。
「私は合唱部があるので、放課後一緒に行けないんです。私なんてただのガラクタです……」
「テレーズ、大丈夫だよ。ガラクタなんかじゃないって」
なんかこの子、すごくめんどくさい。
「私はついていってあげてもいいわよ」
「別に誘ってないぞ」
「じゃあいいわよ。行かないわよ」
「いや、スウィングも一緒に行こう?」
「り、リリスがそういうのなら、しかたないわね」
なんか素直じゃないな~。
「そうだな、リリスの服とかも買ってあげよう」
「どうせエッチなの着せようとか、そういうの思ってるんでしょ?」
「よくわかったな」
「えー」
やっぱり。
※ ※ ※
僕はブルマを手に取り、見つめる。
これ、穿くのか……。
そう、午後の授業は体育だった。
みんないそいそと着替えている。ちなみに男子は体育館に行って着替えているとのことだった。
「リリス、さっさと着替えろ。うじうじしようと、どうせ着ないといけないんだからな。着替えないとオキュラを呼んでくるぞ」
「しかたないな……わかったよ」
僕はメイド服を脱いで体操着に着替える。
おっぱいはぱっつんぱっつんで、すごく大きな乳袋ができてしまっている。
あ、ちなみに背中の翼を出すところはちゃんとあります。
それで下はブルマ。パンツがはみ出しそうなんだけど。
「リリスちゃん、超エロいね~。いいねいいね~」
「よくないかんね。カーミラはエロカメラマンか」
「そうなのです。リリスちゃんの恥ずかしがってる姿撮っちゃうよ~」
カーミラは僕のことをスマホで撮ろうとしてくる。
「ちょ、やめ……」
「何をやっているのだ。まったく……」
レズビアは呆れたように言った。
「レズビィちゃんもエロいよ~。いいね~」
「や、やめろ。私はそんなんじゃないからな」
「ええと、そういえば体育って何やるの?」
「今日はマラソンだ」
「えー」
僕がいちばん嫌いなやつじゃん。
それに、この身体だとさ、絶対おっぱいばゆんばゆん揺れるよね?




