第20話 女生徒(に囲まれるって、これハーレムじゃね?)
カーミラたち女子集団のところに行くと、もうすっかり囲まれてしまった。
でもでも、魔族の女の子、みんなけっこうかわいい!
もしかしてこれってハーレムじゃね? 万々歳じゃね?
「リリスちゃんってどこから来たの?」
――ええと、千葉……じゃなくて、なんか田舎のほう。
「おっぱいすごいね」
――そ、そんなことないよ。
「そのおっぱい本物?」
――ま、まあ(本物っていっていいのかな……?)。
「頬っぺたぷにっぷにでかわいい~」
――ちょ、つっついてこないで。
「淫魔族ってやっぱりやりまくりなの?」
――そ、そ、そんなわけないでしょ!(なんつーこと聞いてくるんだ)。
「ねえ、ケータイのアドレス教えて~」「好きな色は?」「好きな食べ物ってやっぱり触手なの?」「アイドルとか興味ある?」「メイドってどんな仕事するの?」「角触ってみていい?」「ねえねえ、リリスちゃん、血吸っていい?」「尻尾の先ハートマークになってる!」「おっぱい重くて大変だったりする?」「やっぱり男の子のこととか興味あるんだよね?」「ピンクの髪きれいだね~」「淫魔族なんてただの淫乱じゃないの」「生まれ変わったらどんな乗り物になりたい?」「ちくわ大明神」「好きな一級河川は?」「魔王様のお城に住んでるの?」「お友達になりましょうよ」
僕は女の子たちにもみくちゃにされる。
ああ、これはハーレム、男の夢……。
変な質問されたり、おっぱい触ってこられたりする以外は完璧じゃないか。
「ねえ、あなたたち、今は授業中よ」
僕らのところにひとりの女子生徒がやってきた。
見ると、紫色のロングヘアをした魔族だった。制服を着ていて、眼鏡を掛けている。そして、額に第三の眼があった。ちなみに第三の眼のほうには眼鏡は掛けていない。
「転入生さん、私の名前はオキュラ・スキュデリ。三眼魔族よ。この『いちご組』でクラス委員をやっているわ」
「よ、よろしくです」
と、僕はとりあえず挨拶する。
――唐突に思い出したけど、そういえば、サード・アイ・ブラインドのギターの人って何でやめさせられたんだろ。
閑話休題。
「ほら、みんな、席に戻りなさい」
オキュラはぱんぱんとてのひらを叩いた。
ぽつぽつと文句を言う生徒もいたけれど、基本的には従順な態度を示して、席に戻っていった。
「この第三の眼、人を従わせることができるのよ」
「それ、ヤバい能力じゃ……」
例えば、僕にM字開脚しろって命じたら、僕はM字開脚しないといけなくなるわけ?
ううむ。たしかに、オキュラの三つ目の眼を見ていると、その眼がに徐々に迫ってくるような気がしてくる。そして、なんだかぼおっとしてくるような、変な感じになってくる。
………
……
…
私の意思、そんなものなんて、どうでもいいものなんです。私はただあなたの奴隷……あなたの言うことなら何でも従い……
あ、ヤバいヤバい。僕は慌てて視線を外す。
「いろいろ制限はあるけれどね。ただ、今ではもうこの能力を使わなくても、みんな素直に従ってくれるようになったわ。困ったことがあったら私に相談してくれればいいわ」
と、オキュラは僕に微笑みかける。
「あ、ありがとう」
ヤバい能力だけど、彼女は悪い魔族じゃなさそうだし、大丈夫……だよね?
「あなたも席に戻って、勉強してね」
オキュラはにっこりと僕に微笑みかける。
あ、ヤバっ。また第三の眼を見つめてしまうところだった。
※ ※ ※
その後の授業はつつがなく終わった。
魔界の歴史の授業はちょっと興味があったけど、専門用語ばっかりでよくわからなかった。
ほかの授業中も暇だったから、ノートに鉛筆で立体図形なんか書いたりしてた。
イラストでも書こうかなって思ったけど、隣のアルビンがちらちら見てくるのでやめた。うん、見てくんなよ。
でも、僕も隣にこんなおっぱい大きい美少女が座ってたら、気が気じゃないと思うけど。
※ ※ ※
そんなこんなで予鈴が鳴って昼休みになった。
生徒たちは三々五々散ってゆく。
「今日は食堂に行くぞ」
と、レズビアが言う。
食堂とか、なんかすっごく学生っぽい。青春っぽい。
「リリスちゃん、レズビィちゃん、一緒に食べようよ」
カーミラ、スウィング、オキュラ、あとほかにひとりの女子も、僕とレズビアのところに来た。
「カーミラたちはまだいいが、なぜお前までいるんだ」
と、レズビアがスウィングを指して言う。
「いちゃ悪いかしら」
「どうせ私にたかろうとしているんだろう」
「ち、違うわよ。カーミラたちがリリスと一緒にお昼食べに行こうって言ったのよ。むしろあなたのほうこそお呼びじゃないわ。いつもひとりで食べているじゃないの」
「ひとりだから何だというのだ。それに今日はリリスとふたりだ」
レズビアは僕の腕を取って、自らのほうに引き寄せる。
僕は困惑する。それで、とりなすように、
「えっと、みんなで行ったらいいと思うよ、ね?」
「リリスさんの言うとおり、そのほうが、平和で幸せよね」
と、オキュラが言った。
「うんうん、みんなで行ったほうが楽しいからね」
と、カーミラがうれしそうに言う。
そして、彼女は僕に隣の生徒を紹介した。
「リリスちゃん、こっちはテレちゃん」
きらきらとした金髪を持った色白のきれいな女の子で、コバルトブルーのワンピースを着ていた。
「て、テレーズ・オグルイです。人形魔族です……」
と、彼女はおどおどした様子で言う。
「人形……?」
たしかに、手首のところに球体関節がある。
へえ、そういう魔族もいるんだ。また僕のポケモン図鑑の項目がひとつ増えた。
「無機物でごめんない……。私はしょせん作り物です」
「え、あ……こ、こっちこそごめんなさい」
特に何もしてないのに、申し訳ない気分になる。僕だってレズビアの「作り物」だけど。
「よ、よろしくね」
僕は彼女と握手する。
たしかに彼女の手に触れてみると、生き物のそれじゃなかった。冷たくて、つるんとしていた。
「よしっ! みんなでれっつらごー!」
カーミラがぴょんと飛び跳ねる。
がやがやとかしましいことがあったけど、そんなこんなで、僕、レズビア、カーミラ、スウィング、オキュラ、テレーズの六体の魔族の女の子は食堂へと向かった。
※ ※ ※
食堂の中はごった返していた。魔族がうじゃうじゃいる。ちなみに、食堂は第七七食堂ということだった。ここ以外にも百個くらいあるらしい。
「ほら、あそこが空いてるよ」
カーミラは窓際のあたりを指差した。ちょうど数人分空いていた。
「私が席を取っておく。私の分と自分の分をこれで買うといい」
レズビアがコインを2枚渡してきた。
銀色で魔王の顔が彫られている。
あの魔王、趣味悪っ! 微妙にかっこよく描かれてるし。
「このコイン一枚で一食分だ。ちなみに私はしょうが焼き定食だ」
「魔界にもしょうが焼きとかあるの?」
「そりゃあるが」
「えっと、僕も普通の食べていい?」
「まあ、何でも好きなものを食べればいい」
「やった!」
よし、もう触手は食わないぞ。
僕はコインを見て思ったけど、このメイドの仕事って給料でるの?
社会保険とかはちゃんと入れてくれるの?
「私もこの青いのと一緒に待ってるわ」
と、スウィングがレズビアのほうを見て言う。
「誰が『青いの』だ。このヒョウモントカゲモドキ」
「それよくわかんないけど、とにかく爬虫類じゃないわよ!」
なんか、このふたりを残すの不安だな……。
※ ※ ※
僕らはトレーを持って、カウンターに向かった。
お、カレーライスもあるじゃん! それにしよーっと。
カウンターには、何体もの魔族のおじさんおばさんがいて、せっせと料理を生徒たちのトレーの上に乗せていた。
僕はゴブリンっぽいおじさんから、レズビアのしょうが焼き定食と僕のカレーライスを受け取った。
「お、メイドさん、もうひとつはご主人様の分かい?」
「はい」
「どっちがお嬢ちゃんのだい?」
「えっと、カレーライスのほうです」
「淫魔族とか珍しいからさ~。それにすごくかわいいから、これお嬢ちゃんにサービスしちゃうよ」
どぼどぼどぼどぼどぼどぼ。
カレーライスの上に、青い触手が次々と降りそそいでゆく。
「ぎゃあああああああああああああ!」
僕の……僕のカレーライスが……。
「淫魔族ってそれ好きでしょ」
「ううっ、ううっ……あ、ありがとうございます……」
「リリスちゃん、いいなー。サービスしてもらって」
カーミラが無邪気に言う。
「かわいい女の子って得よね」
と、オキュラも言う。
そう見えるかい? 僕にとっちゃ散々だよ。




