第13話 脱衣所にて(いきなりはやめてくれ。心の準備が……)
脱衣所でメイド服を脱きはじめた。
カチューシャを外して、ソックスを脱ぐ。
それからエプロンドレスを脱いで、最後にふりふりのついたブラウスを脱いだ。
僕はここに召喚されたときの姿、つまり、黒の上下の下着姿になった。
相変わらずすごい胸だ。足元が見えない。
これも恥ずかしいけど、まあ、ここまではいい。
この下着姿は、ここに拉致られたときに散々見たからだ。
ここからが問題だ。
次の作業はなかなかの勇気がいる。
生まれたままの姿(いや、僕はこの姿で生まれてないけど)の姿にならないといけない。
ううっ、女の全裸なんてアダルトビデオとかエロ本とかでしか見たことない(もちろん修正済)。
緊張してくる。僕はつばをごくりと飲み込む。
僕も男だし、女の裸を見たいとは思ってたよ。でもさ、自分自身の姿として、それを見ることになるなんて……。
とりあえず、僕はなんとか腕を背中に回して、ブラジャーのホックの位置を探る。
あった。
でも、僕はそこから手を離した。
だってさ、まだ心の準備が……。
一回深呼吸して――
って!
「ぎゃあああ!」
突然ブラジャーが外され、でかいおっぱいがばゆーんと弾け出た。
白い大きなふたつの塊には、うっすらと青い毛細血管が這っている。
そして、山の頂には、きれいなピンク色の乳輪が広がっていて、その真ん中に乳首がちょこんと鎮座している。
こ、これが……これが乳首……。
乳首の先端には、マイナスねじみたいなくぼみがある。
ううっ……アニメとかだったら、謎光線が発射されてさっと隠してくれるのに!
ああ、なんてことだ。
エロい。
マジでエロい。
すっごくエロい。
超エロい。
これが僕の今の身体……。
うっ、漫画みたいに鼻血出そう。
けど、あんまり考える暇もなく、今度はずるっとパンツもずり下ろされた。
「ひゃああああああ!」
僕のお股は装備を剥ぎ取られ、完全な無防備状態にされた。
幸い、おっぱいのおかげでお股を見ずに済んだけれど……。
「な、何するんだよ!」
僕は後ろを振り返って言った。
レズビアがブラジャーの紐を持って、ぷらぷらと揺らしながら立っていた。
ちなみに彼女はバスタオルで完全防備している。
「リリス、耳まで顔が真っ赤だぞ」
「誰のせいだよ。いきなりひどいじゃないか」
「いつまでも脱がないからだ。これではどっちがメイドかわからないな」
「ううっ……」
僕は泣きそうになる。だって、女の子だもん……。
「そんな泣き顔を見せるな。さっさと入るぞ」
「ちょっと待って。僕のぶんのタオルは?」
「そんなのはないが」
「何でだよ」
「別に見られてもいいだろう? 減るもんじゃあるまいし」
「減るよ。僕のプライドとかSAN値とか。ていうか、それならレズビアだって、そのタオルとったらいいじゃん」
「リリスは元は男だからな。ちょっと私もその……」
「恥ずかしい? てか、僕のこと女だっていったり、男だっていったり、都合よすぎない? 僕は今は女の子だから、女どうしじゃないか」
僕はレズビアに詰め寄る。
彼女は僕の剣幕に気圧されたのか、
「くっ、わかった。リリスはもう女だったな」
と、呟いた。
そして、マントを翻すかのように、ばさっとバスタオルを剥ぎ取った。
青い彼女の肉体が完全に露出する。
まるで彫刻のように美しかった。
けど、僕の予想どおり、それほどエロい感じはそれほどしなかった。
とびきりエロいものを先に見ているしね。
「ど、ど、どうだ?」
レズビアは顔をうつむかせ気味にして言った。
「とってもエローい身体だと思います、レズビア様」
「ふざけるな。早くしろ」
レズビアがまた僕の尻尾をつかもうとしてくる。
すかさず僕は尻尾をぴょいっと動かして回避する。
ちょっと慣れてきてしまった。
「おい、よけるな!」
ていうか、どうだ、と聞かれたから答えたのに、理不尽じゃない?
※ ※ ※
僕とレズビアは浴場に入る。
ちなみに、歩くたびにものすごくおっぱいがばゆんばゆん揺れるんだけど、これどうしたらいい?
うーん、どうもできないよね。
入ってすぐに見えたのは、壁一面に描かれた大きな富士山だった。
いかにも銭湯って感じだ。なかなか凝ってる。
で、この女湯にはどうやら誰も入ってない模様――
って、人いるし! 人じゃなくて魔族だけど。
彼女は湯船につかっていた。
僕らの姿を見とめると、ばさりと湯から上がって、まるでファッションモデルのように悠然と歩いて来た。
全裸だった。タオルとかでどこも隠していない。
無修正だ。謎の湯気も出現してこない。
彼女はすらりとしていてとてもスタイルがよかった。
そして、胸が大きかった(僕ほどじゃないけどね……って、何比べてんだろ。バカじゃないの?)。
ただ、レズビアと同じような青い肌をしていたので、やっぱりそんなにエロさを感じなかった。
でも僕の視線は、吸い込まれるように彼女のお股のほうに行ってしまう。
いやいや、見るな見るな。
僕は視線を背ける。
「姉さん」
と、レズビアが言った。
姉さん?
「あらあら、レズビアのメイドさん? わたしはアネリアといいます。レズビアの姉です。アネリアだけにね。うちの妹がいつもお世話になっております」
「むしろ私が世話をしているが」
と、レズビアが呟く。
僕はレズビアの発言をスルーし、
「リリスといいます。淫魔族ってやつみたいです」
と、名乗る。
まあ、本当の名前は違うんだけれど。
「みたい?」
「アネリア姉さん、この子は自分の種族に対してコンプレックスを持っているのだ」
と、レズビアがフォローする。
「そうなの? リリスさん、とってもかわいらしくて素敵だと思うわ」
「ありがとうございます」
と、僕はいちおうお礼を言う。
誰かと会うたびに「かわいい」って言われるけど、それが本当の感想なのか、ただの社交辞令なのか、僕にはよくわからない。
僕はこの顔、かわいいとは思うよ。うん、かわいいとはね。
「レズビア、その変な話し方、相変わらずね」
と、アネリアさんが言う。
「魔王の娘として、威厳を保たないといけないからな」
レズビアは偉そうに腕を組む。
全裸で偉そうにしてもね。
「そんなんだからお友達ができないのよ」
「ち、違う。私はできないのではない。あえて馴れ合わないだけだ」
と、レズビアは言って、僕のほうを向く。
「おい、何だ、リリス。言いたいことでもあるのか?」
「別に」
ちょっとにやにやした顔をしていたかもしれない。
レズビアの弱点その2「友達がいない」。
ちなみにその1は「脇腹が弱い」だ。
たしかにレズビアがカーミラやスウィングに対してとった行動をみるに、友達なんてできそうもないよな。
僕もまあ、人と馴れ合わないタイプだけどね。
ん? 僕も友達いないんじゃないかって?
レズビアと同じだよ。あえてだよ、あえて!
「リリスさん、レズビアと仲良くしてやってね」
「まあ、はい」
と、答えたけれど、仲良く……やっていけるのかな?
おっぱいとか尻尾とか角とか攻撃してくるし。
「仲良くとかそういうのはいらない」
と、レズビアがきっぱりとした調子で言う。
「でも、二人とも仲がよさそうに見えるわ」
「「どこが」」
僕とレズビアは同時に言う。
「ほら」
と、アネリアさんがにこにこしながら言う。
レズビアは恥ずかしそうな表情をする。
僕もちょっとバツが悪い。
僕はそのときこんなことを考えた。
まさか、レズビアが僕のことをこうやって淫魔族の女の子として召喚したのは、もしかして話し相手がほしかったから? メイドだとお友達ってていにしなくても済むから?
「もしかして、リリスさんは魔界学園の生徒さん?」
と、アネリアさんに尋ねれらた。
僕の代わりにレズビアが、
「正確に言うと、今日田舎から出てきて、明日から魔界学園に通うことになっている」
「あらあら、大変ね。私、魔界学園の生徒会長なの。わからないことがあったら何でも聞いてね」
「はい」
「それじゃあ、二人で仲良くお風呂に入ってね」
アネリアさんは、僕らに軽く手を振りながら浴場を後にした。
アネリアさんは、レズビアと違ってすごく優しそうな魔族だ。
彼女といい、メルビーさんといい、カーミラといい、魔族も捨てたもんじゃないな。
僕の隣にいる鬼畜魔族も、ちょっとは見習ったらどうだ?




