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元宰相の異世界物語(仮題)  作者: 徳兵衛
第1章
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第42話

お待たせしました

「では行ってき(参り)ます。」


「よろしくね。失礼の無いように。」


 銃兵隊の軍服を着こなした2人の事務官が一礼をして部屋を出て行くと、セルゲイがボリボリと背中を掻きながら溜息を吐き出した。


「これで薬師は確保、と。」


「あとはドワーフの到着待ちだね。計画の肝だけど、もう帝都のすぐ近くまで来ているのかな?」


 帝国におけるドワーフの一大拠点であり、ドミトリーの故郷でもあるオルストラエからは早馬でも7日、普通ならば半月は必要となる。


 広大な領土と多種多様かつ多量の人口を抱える帝国だが、その人口密度は西大陸の国々に比べて極めて低い。点在する人口密集地とその周辺地域以外は人の手の入らない自然が広がっており、旅人を待ち受ける危険は匪賊から魔獣まで極めて多岐に渡る。

 冬が厳しすぎて外出どころではないため、雪解けから初雪までの約半年が帝国の人々活動期間だった。


「早く来てくれないかなぁ...色々させたい仕事もあるし、何より風呂だ。」


 湿疹の出た首元を忌々しそうに掻く姿には、皇族らしさの欠片も無い。


 セルゲイは拠点を移してからずっと水回りに不満を抱えていた。王宮は勿論のこと大学も設備が整っていたため、駐屯地のごく一般的な設備は彼にとって不足も甚だしい。

 使用人たちの涙ぐましい努力の甲斐なく、彼は湿疹に悩まされ続けている。


「病気になりそうだったら王宮に連れ戻すよ?」


 今の所は湿疹で済んでいるが、これ以上、何らかの疾病を抱えて貰っては仕事で困る上に外聞も悪い。既にヴァシリーは兄の再収監の準備も整えていた。


「それは...嫌だなぁ...」


 壁に貼り付けられた”辞令”には、ヴァシリーのセルゲイの召集の詔が書かれている。


 いざとなれば本人の意思を無視してでも連れ戻すと言う意思表示を前に、セルゲイは少しでも湿疹を治めるべくあれこれと工夫を重ねるしかない。


「解決策は既にあるんだ。もう少しの辛抱なんだよ。」


 頑なに目を合わせない兄に、弟はやれやれと首を振った。




「...目障りだな。衛兵隊は取り締まらないのか?」


 通りには春の名物である泥酔者が転がり、麗らかな春の陽気に水を差している。別に冬以外ならばいつでも見かけるが、帝国では泥酔者が水仙の如く春の到来を告げるモノとして扱われていた。


「先輩は、帝都の見物と化したことないんですか?」


「ない。」


 案内状を懐にフェリクスを連れて通りを歩くドミトリー。街の臭気で目が潤む。


「えぇと...何かあったんですか?」


「...何もなかった事が無い。」


 厳密にいうと直接被害を受けたのはスリが2回だけで、他は捕り物に巻き込まれただけに過ぎない。だが、頻度の高さから衛兵隊”と”の話のネタも既に尽きている。

 幸い、家を確保してからはそう言った事態とは疎遠になったが、家と職場の往復だけで判断を下すほどドミトリーは楽観していない。


「なら、機を見て出かけましょうよ。せっかくの帝都ですよ?」


「そうだな。そのうち飲み屋にでも行くのも悪くは無いか。」


 勿論、ドミトリーには帝都観光などに行く気はない。


 ドミトリーは酒に強いが、別に酒が好きな訳でも無い。他に飲める物が高価な茶しかないため、やむなく飲んでいるだけであり、他に安く手頃な飲み物があるならばその方が嬉しいのが正直なところである。

 以前に一度試したが、庭先で簡単に手に入るハーブティーは獣系亜人種には強烈過ぎる上、ドミトリーの好みでも無かった。


「行くとしても余裕が出てからだな。頑張れば酒代位は出してやる。」


「それは頑張り甲斐が有りますね。」


 堅い印象のあるフェリクスだが、年齢が比較的近い事もあって3人の中では最も気さくにドミトリーと言葉を交わしていた。交わす言葉に時折棘やら毒やらが混じっているが、お互いの基準がガバガバなために特に差支えは出ていない。似た者同士、波長は近いらしい。


「それにしても、此方から出迎えに行くなんて”先輩が”言い出すなんて意外でした。先輩はこう...礼節には拘らない人だと思っていました。」


「勘違いするなよ?あれは両殿下たっての希望でそう振舞っているだけだ。」


 甚だ心外ではあるが、銃兵隊でのドミトリーの評価は”恐れを知らぬ鉄の金玉野郎”である。

 見回りの合間を縫って揉め事を起こしかけた連中の背後を取ったり、度を越した飲酒をしている連中にカマを掛けていただけなのだが、声を荒げず穏やかな態度を心掛けた事が仇となったらしい。


「さて、お喋りはこれくらいにするか。相手は皇室御付きの薬師様だからな。」


 足を止め、2人が見上げた先には重厚な造りをした古めかしい薬屋があった。






 中に入ると年配の女性がカウンターに構えており、見慣れない来客者の様子を窺っていた。治安の悪化に伴い、市場や商店では愛想の良さが絶滅危惧種となって久しい。


「銃兵隊より使いに参りました。ドミトリー・パブロヴィチ・サムソノフと」


「フェリクス・アールステットです。」


「...師は奥でお待ちです。此方へ。」


 皇室御用達とは、国内でその実力を最も認められている事を意味する。


 医者と言う職業の概念が明確に成立していない帝国では、薬師が産婆を除く医療従事者の総称として扱われており、女性が多数を占める数少ない職業である。

 医療技術が未発達なためにこの分野は長い経験がモノを言う。そのため、長耳族などの長命種が多数活躍している分野でもあった。

 今日、ドミトリー達が訪れた”スイセン会”は帝都でも指折りの歴史と実績を持つ薬師一門であり、筆頭のヘルガ・ギバリは北方系長耳族の薬師の最古参である。


 今日、ドミトリー達は以前から打診をしていた薬師の迎えに来た。





「おぉ...凄いな。」


「...よく来たね。お掛け。」


 大量の薬瓶やよく分からない素材の置かれた調剤室を抜け、ドミトリー達が案内されたのは、店舗の裏手にある小さな菜園だった。


 手狭な空間には同じ帝都とは思えないほどに清浄な空気が広がり、ドミトリーの良く知らない薬草やら何やらが隙間なく植えられている。

 眩いばかりの新緑が猛烈な勢いで繁茂しており、隅に置かれたティーテーブルに着く老婆は完全に周囲溶け込んでいた。


 木製の車いすに腰掛ける姿は弱々しく、声を掛けておいていうのも何ではあるが、この老齢の薬師が軍医としての激務に耐えられるのか疑問が頭をもたげる。


「お忙しい中、お時間を作って頂き心より感謝申し上げます。ヘルガ・キバリ師。」


「お止め。わたしゃそう言う言い回しをする輩が大嫌いなんだ。」


 不快感に顔を紅潮させたため、老婆の顔は梅干しの如き有り様となってしまう。


「それは失礼しました...では遠慮なく。」


 ドミトリーはその言葉を受けて老婆につかつかと近づき、その隣に空いていた椅子を軽く手で掃ってどっかと座り込む。


「うん、思った通り。尻の収まりの良い椅子だ。」


 フェリクスは本当に遠慮のないドミトリーの振舞いを見て呆気にとられ、老婆は細くなった目を見開いて破顔した。


「あっはっはっはぁ!面白い子だね!ミーシャそっくりだ!」


 小さな体のどこからその様な声が出るのか、菜園に集まっていた小鳥たちが驚いて一斉に飛び立った。

 彼女の笑い袋に落ち着きが戻るまでの間、ドミトリーは椅子に座ったままフェリクスに目配せをし、楽な姿勢にさせる。

 ドミトリーは自身の経験上、老人は相手が貧血で倒れるまで長話をしてしまう生物である事を知っており、いくら長くとも話に付き合わねば機嫌を損ねてしまう事もよく理解していた。


 ヘルガの笑いが落ち着くのを見計らい、ドミトリーは話を促すべく問いかける。


「ミーシャとは?」 


「あんたと同じ竜種の男さ。もう死んじまったがね...どうしようもなく不器用な奴だったよ。」


 どんどん本題から遠ざかって行くが、ドミトリーは焦らない。


 相手は自分よりもはるかに長い時間を生きている。多少の話の脱線など気にならない程の時間感覚では、焦る姿は目障りにしか映らないであろう事は想像に難くない。


「不器用ですか。」


 そう言って肩を竦めたドミトリーを、少し離れた椅子に腰掛けたフェリクスが興味津々な様子で眺める。


「わたしと同じ。わざわざ苦労をしてまで人と暮らす物好きだった。」


「...。」


「あんた、サムソノフのもんだろう。目がミーシャによく似てるよ。孫かい?」


「貴方の言うミーシャがサムソノフ家のミハイルならば、自分の祖父ですね。」


 ドミトリーの祖父であるミハイルは、両大陸戦役時に戦死している。ドミトリーとの直接の面識は一切無い。当然ながら、彼がどのような愛称で呼ばれていたのか、どのような交友関係を持っていたのかもドミトリーは知らない。

 パーヴェルは自身の両親に対して思う所があるのかミハイル達に関する事はほとんど口にせず、家族が祖父母の墓前にすら行った事すら無かった。


「あぁ、やっぱりねぇ。」


 ドミトリーの答えに満足したのかヘルガはそれ以上の脱線はせず、話はやっと本題へと至った。


「あたしゃこの様だ。老人ガキの為に薬を煎じることは出来ても、血の気の多い若者の相手は荷が勝ちすぎる。やる気があるのが何人かいるから、その子たちを連れて行ってくれ。ミリア!」


 遠くから間延びした返事が聞こえてくると、話は終わったとドミトリーは悟る。


「分かりました。ご協力に感謝します。」


「期待しとるよ。若者。」


 ドミトリーが立ち上がりって手を差し出すと、ヘルガは思いの外力強く握り返してそう告げた。






「あのキツそうな長耳族エルフ、先輩の知り合いですか?」


 薬屋からの帰路、隣を歩くフェリクスがチラリと後ろを見ながら問いかけ、ドミトリーは苦笑いを浮かべて答える。


「法術大学での同期だ。」


 白百合一門の志願者の中に、エリサが居た。


 志願者の顔ぶれを確認した際、お互いに一目でそうだと気づいたのだが、エリサの表情を見てドミトリーは声を掛ける事を躊躇った。


”知らないふりをして!”


 ドミトリーとて、彼女の子供泣かせな凶相で囁かれては言われずとも知らない振りをしたくなる。おまけに面倒そうな事情まで引っ提げられては、もはや腫物でしかない。


...再会自体は嬉しいんだが、何とも素直に喜びづらいな。


「口外は無用だ。向こうには何か事情があるらしい。」


「了解です。」


 フェリクスの聞き分けの良さに内心で感謝する。

 帝都に居を構えた時点でいずれエリサの世話になるかもしれないとは思ったが、まさかこれほど早く世話になるとはさすがにドミトリーも想定外だった。

 

「事情は駐屯地に戻ってから聞くさ。帰ろうか。」


 身なりの良い女性が5人。軍服に身を包んだ男性が2人。荷物を山積みにした馬車を角の生えたロバがのろのろと引っ張って行く。

 朝の晴れ模様はどこへやら、空には暗い雨雲が立ち込めており、早いところ駐屯地へと帰還した方がよさそうな雰囲気である。


「良くない感じですね。」


「お前もそう思うか?」


 先ほどからしきりにフェリクスが周囲を警戒している。

 アデリーナやボリスとは異なり、彼はレオニート会頭に”拾われて”おり、現在こそ事務職だが彼の積んできた経験は色々な意味で多岐に渡る。


 ドミトリーの目にも不穏な人影がチラホラと入り、通りからは徐々に人通りが減りつつある。


「先輩、急ぎましょう。」


「...いや、もう遅いな。」


 通りの先に大きな荷馬車を囲む人だかりを見つけ、ドミトリーは家を買ったのは早すぎたのではないかと後悔し始めた。


「何だ屑共!今すぐ失せろ!貴様らに構ってやる暇など無い!」


 御者が荒々しい口調で招かれざる者達を怒鳴りつけると、ほぼ間を置かずに乱闘が始まった。土煙の向こうから罵声が響き渡り、ドミトリーはまたしても騒動に巻き込まれた事実に心底うんざりする。


...ランナル、仕事が不十分だぞ。


「物取り相手に見事な啖呵を切るなぁ...見習おう。」


「先輩、感心してる場合ではないです。気付かれました...こっち来ますよ!」


 フェリクスが額に汗を浮かべて後ずさる。

 流民らしき者達は数が多く、荷馬車の主と御者を十数名がかりで囲んでまだ余る。手持ち無沙汰な彼らの目に留まったのは、これまた裕福そうな一団だった。


「フェリクス、俺が足止めするから薬師たちを連れて何処かに逃げ込め。」


「っ了解です!皆さん、此方へ!」


 既に険呑な空気を察していた薬師たちは、フェリクスの誘導によって速やかに退避する。荷物と共に一人残されたドミトリーは外套を外し、腕まくりをしながら狼藉者と相対した。


「おう。流民か貧民かは知らんが、寄って集って何の用だ?」


「荷物を置いてけ。そしたら悪い様にゃしねぇよ。」


 取り囲む流民たちは思いの外紳士的だが、ドミトリーに他人の荷物を生贄にする気は無い。引き下がったところで命はとらないまでも、十中八九は身ぐるみを剥がれる未来が目に浮かぶ。


「断る。これは預かり物だ。」


 狼藉者の顎に、身体強化の術式特有である茜色の閃光が走った。






 騒動を避け、近場の材木商の店先に逃げ込んだフェリクス達が見たのは、角材片手に大立ち回りをしてのけるドミトリーの姿だった。


「そういえば、あの人竜種だったな...。」


 勿論、特に技らしいものも無く、どうしようもなく元気いっぱいに振り回しているだけである。

 だが竜種。一般的な人間種とは膂力が根本的に違うため、彼が角材を振り回すたびに木っ端の様に人が吹き飛ばされていた。


「あの様子なら荷物は大丈夫そうだな。後は衛兵隊の到着を待つか...」


「そうもい言ってられないでしょう!見なさい!けが人が出ているのですよ!?」


 筆頭格の女性がフェリクスの呟きに噛みつく。


「無茶を言わないでください。数が多すぎます。向こうの荷馬車の面々には悪いですが、もうしばらく堪えてもらうほかありませんよ。」


 店の片隅で非建設的な言い争いをしていた両者だが、何処からともなく響いた喇叭の音で言い争いは断ち切られた。

 そうこうしているうちに衛兵隊が駆け付け、天下の往来での乱闘は50人ほどを相手にした大捕り物に変化する。もはや土煙で何が起きているのか分からない。


「...手当の準備をお願いできますか?」


「...えぇ。分かったわ。」


 罵声と殴打の音が土煙の向こうから漏れ聞こえる中、フェリクス達は匿ってもらった店主たちと応急処置の準備を始めた。





「逃がすなぁ!追ええぇ!」


「クソッ!退け!逃げろ!」


 衛兵隊がおっとり刀で駆け付けると、集まってい暴れていた狼藉者たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。

 だが、鎧を身に着けている事もあって衛兵隊の足は微妙に遅く、大半に逃げられると言う残念な光景がドミトリーの目の前に広がっていた。


...勿体無いなぁ。現行犯なのに。


 前世ならば罪状は強盗。あるいは騒乱罪あたりだろうか。

 埃で汚れた服を叩き、頬に付いた返り血を拭いながら、急に落ち着きを取り戻した通りをぼんやりと眺める。

 そして、今更ながらに今世でその手の法律を目にした事が無い事に気付き、ドミトリーは頭を振った。


「...いやそれは後だ。取り敢えず寝かせるか。」


 角材一本で暴れまわっていたドミトリーの周囲には、打ち据えられ体を抱えて蹲る者たちがそこら中に転がっている。


 逃げ遅れた者に沈静術式を打ち込んで回っていると、フェリクスが声を張り上げて駆け付けて来た。


「先輩!大丈夫...みたいですね。」


「おう。竜種だからな。」


 本当にその一言で納得させられるから便利なものである。


 駆け寄りながら急速にトーンダウンして素に戻るという器用な真似に感心しつつ、ドミトリーはフェリクスと手分けをして騒動の後始末をし始めた。

 荷崩れした馬車を片付け、怪我人の介抱の為に石やら棒切れで散らかった通りを片付ける。


 ドミトリー以外に後片付けをする義理は無いのだが、フェリクスが文句を言わずに手伝ってくれる姿に、ドミトリーの目頭は熱を帯びた。





「傷つく者を見過ごすは白百合会の名折れ!行きますよ!」


 沈静術式で意識を刈り取られた者達を路肩に集めていると、いつの間にやら準備を整えていた薬師たちが、手際よくけが人の処置をし始めた。

 黙々と傷口を清め、治癒術式で塞いで薬を塗ってゆく動きには無駄が無い。


...ほう、意外と洗練されているんだな。


 内心で彼女達への評価を改めていると、筆頭格である淡い紫の口紅を差した薬師が具合を問いかけて来た。


「貴方、怪我は?」


「無い。あっちの御者は重傷だ。そちらの手当てを頼む。」


 見てくれが汚れていてもドミトリーは無傷である。


 衛兵に肩を貸され、痛みに顔を歪めながら道を歩く男性を目線で示すと、薬師は頷いて小走りに駆けて行った。






「呆れた。あれだけ暴れても無傷なのね。」


「怪我をしたら仕事に障るだろう。」


 ドミトリー達が逃げ出したロバを苦心しながら荷馬車に繋ぎ直していると、処置が一段落したエリサが話しかけて来た。


「荷物は無事なの?」


「荷崩れしただけだ。」


 すぐ近くでずっと暴れまわっていたため、取り囲んでいた者達は荷馬車に近づくことすら出来ていない。土埃やら何やらで薄汚れてはいたが、ドミトリーは無傷で荷物を守り抜いていた。


「...向こうに着いたら少し話をしない?」


「報告や残した仕事がある。終業後まで待てるなら良いぞ。」


「良いわ。」


 エリサはドミトリーの回答に頷くと、そのまま他の薬師たちと共に怪我をした者達の治療に戻っていった。


「お誘いですか?」


「あぁ。法術大学の同期だ。」


 嫌がるロバを宥め賺してフェリクスが問いかけてくるが、外れた手綱を片手にドミトリーは肩を竦めるだけである。


...色恋に勘違いされるのは困るな。

 

 だが、ドミトリーの思考は入れ替わりに現れた屈強な衛兵によって遮られた。


「帝都衛兵隊ですが、話をお伺いしても?」


「...良いですよ。ただ、仕事の途中なので手短に願います。」


 何度目か分からないやり取りを繰り返しながら、ドミトリーは衛兵の聴取に応じる。


 仕事中であるために聞き取りに同行する事は丁重に断ったものの、暴徒に袋叩きにされていた御者が治療受けて保護されるのを見届けるまで、ドミトリー達は通りに留まり続けた。


 薬師たちがいつの間にか青空病院を展開して近所の住人たちの診察をしていたが、ドミトリーは敢えて制止せずにそのままにしていた。

 治安の悪化に伴って、人々から薬師の世話になる余裕すらも失われつつあるらしく、いつの間にか現れた患者の列を前にしては、流石のドミトリーも移動をせっつく気にはなれなかったのである。


「帝都で家を手に入れたの、早すぎたかもな...」


「ご愁傷さまです。」


 溜息も吐けずに沈んでいたドミトリーは、その一言で発作的にフェリクスにヘッドロックを掛けた。






 結局、午前中に駐屯地を出発したドミトリー達が帰還したのは、その日の夕刻になってからの事だった。


「はぁ!?流民に襲われたぁ!?」


「こっちに来た分は返り討ちにしましたが、色々あって遅くなりました。申し訳ありません。」


「返り討ちって...いや、責めてはいないんだけど...うん。大変だったね。」


 帰還後、ドミトリーから妙に遅い到着の理由を聞いた皇子達は、暫し呆気にとられた後に頭を抱えた。


「思ったよりも治安の悪化が早いな...後で話し合う必要があるか。」


「取り敢えずは、顔合わせをしてからにしようよ。彼女達は?」


「今、アデリーナが案内しています。」


 薬師たち。通称”医療班”は、兵舎とはに活動用の部屋を用意してあり、アデリーナの補助の元で荷解きを行っている。

 仕事上荷物が多いため、彼女達が自らの”城”を整備するまで、正式な挨拶は後回しにしていた。


 部隊の医療に留まらず、火薬の改良にも力を借りる事になるため、ドミトリーは彼女達には特に配慮をするように皇子達に進言しており、皇子達もその意図を理解し進言を受け入れている。


 本来ならば鉄砲の打ち方を教えて、後は適当に部隊としての体裁を整えるだけで十分である。だが、将来的な銃兵の価値を考えればいい加減な真似は避けたかった。

 軍事技術などのノウハウの蓄積には多大な血を必要とするが、有力である長命種などの種族は出生率が低いためにおいそれとそういう方策を取れないのだ。


 それこそ、石橋を叩く前にバイパスとなる橋を新たに架橋する位の堅実さで臨みたいのがドミトリー達の本心である。

 その為に堅実に準備を進めて来た銃兵隊だが、取り巻く情勢はそのような悠長な事を言っていられない段階へと移りつつあった。


「ドミトリー。」


「はい、何でしょう。」


「何かいい策は無いか?」


...今それを聞くのか


 前世のトラウマを刺激されて頭と心が痛む。だが、セルゲイの直球な問いかけには流石のドミトリーも返事に詰まった。


 当然ながら出来る事なら沢山ある。

 帝国が抱える多数のドワーフの技術力を生かした技術革新を筆頭に、社会制度の見直しや流民を抱え込んだ殖産興業など、考え着くことは幾らでもある。だが、現時点ではただの政治爆弾でしかない。


 国の目線で見れば、既得権益層である貴族たちの玩具にされては困る政策ばかりである。だが、同時に彼らの既得権益を冒しかねない危険を孕んでいるため、一歩間違えば内乱に繋がりかねない。

 いくらドミトリーが統治者側とはいえ、反抗されれば国が立ち行かなくなる程度の権力では、流石に出すのを躊躇うものがあった。


「...暫く待ってもらえますか。流石に覚悟が要るので。」


「あ、腹案はあるんだ...いや待て、覚悟って何だ?」


「殺されても良いと言う覚悟ですよ。現状ですら君側の奸の謗りは免れませんからね。この上で政策やら何やらに口を出したらどうなるか、お二人にも想像がつくのでは?」


 渋面を浮かべるドミトリーに、皇子達は自身の発言が意味するところを悟って俯いた。


「...確認だが、案は有るんだな?」


「一応は。」


「分かった。”今は”それだけ分かれば良い。取り敢えずは編成計画を繰り上げる方向で進めてくれ。」


 何も言わずに頷いたドミトリーは話は終わったとばかりに立ち上がり、一礼をして部屋を出て行った。



「あーあ、先走るから...」


「やっぱり警戒するよなぁ...しくじったな。」


 部下が退出すると、弟は兄の勇み足を詰り、兄は己の浅慮を悔いる。


「でもまぁ、あいつも以前から思う所があったんだろう。でなけりゃ案が有るなんて言えない。それが分かっただけでも収穫だ。」


「二度と収穫できなくなったらどうするのさ...どんな実を結ぶかも分からないのに。」


 まるでリンゴか何かの様な言い草だが、知識と言う名の禁断の果実を結ぶと言う意味では、あながち間違いでもない。


「でも、有ると言われると凄く気になるよな。」


「何せ”あの”ドミトリーだからね。」


 実の所、銃兵隊の編成の切っ掛けとなったのはドミトリーの漏らした言葉だった。

 それをセルゲイが記憶し、ヴァシリーと共に検討してシェルバコフと皇帝アレクサンドルに相談した結果、皇帝直轄の戦力として銃兵隊を編成する運びとなったのである。


 種を不用意に捲いた以上、当然ながら全ての元凶はドミトリーにある。本人は事情を把握しておらず不満を燻らせていたが、どう見ても自業自得だった。


「...こうなったら首まで浸かってもらうか?」


「やるなら兄さんがやってよ。僕は命で賭け事なんてできないし。」


 裏の事情を説明すれば色々と諦めてくれそうな気がしないでもないセルゲイだが、少なくとも今のドミトリー相手にそれをする気は起きなかった。


 本人は公僕に対して強い忌避感を抱いていながらも助力してくれている上、自身の事を”皇子”としてでは無く”先輩”として扱ってくれている。

 だまし討ち同然でそうさせたのは事実だが、それでもドミトリーはセルゲイの意図を察し、周囲の目を振舞いを続けていた。

 セルゲイ自身も皇族と言う立場に嫌気が差していた事もあり、ドミトリーの態度に少なからず助けられていたのである。


「おいおい、いくら何でも言い過ぎ...あれ?そうでもないな。」


 その頭脳が欲しくて仕方が無いの正直なところだが、問題はその頭脳の持ち主が凶暴な身体能力を持っている点だった。

 もし無理強いをして怒らせれば、物理的な被害が計り知れない事になる。

 

「まぁ、彼も覚悟が決まったらって言っていたからね。それまで待つしかないよ。」


「...待っていられる時間があれば良いんだけどな。」


 セルゲイの碌でも無い呟きに、ヴァシリーも思う所があるのか何も言う事は無かった。






「ではお先に失礼します。お疲れ様でした。」


「はい、お疲れさま。」


 最後まで居残っていたボリスが仕事を終えて自室へと帰ると、一人残ったドミトリーが黙々と羽ペンを走らせる音が部屋に響く。

 ドミトリーは既に今日の分の仕事は終えている。今書いているのはセルゲイ達に提出する予定の建議書だった。


 本音を言うならばせっかくの二度目の人生、公僕ではなく在野で好きに過ごしたい。


 だが、好きに生きるにしても居を構える祖国が修羅の国と化していてはそれ以前の問題である。本来それを為すべき立場の人々は勢力的にも弱り切っており、何かしらの助力が必要である事は火を見るよりも明らかだった。

 好きに暮らすための社会づくりなど迂遠どころの話ではない。

 

「いい加減、諦めるべきか...」


 ドミトリーにとって、流民の襲撃はかなりの衝撃だった。


 スリやひったくりとは訳が違う。徒党を組んでの大規模な襲撃である。帝国で最も治安が良くなければならない筈の帝都でこのような騒乱が発生すること自体が、帝国が極めて深刻な状態にある事を意味している。

 流れ込む流民の数が多すぎるのか、行政能力が低下しているのか。恐らくはその両方だが、そもそも流民が発生している事が異常であり、能力の低下も将来的な影響を考えれば看過できない問題だった。


”微力程度で何とかできるのならやってみれば良い”


 シェルバコフの言葉が脳裏に浮かび、憎たらしいゆで卵がドミトリーを嘲笑う。


 何処かで甘く見ていなかったか。


 見て見ぬ振りをしてなかったか。


 この期に及んで目を背けるのか。


「あ゛ー!駄目だ!」


「何が?」


「はぁっ!?」


 椅子の背もたれに寄りかかり頭を掻きむしっていたドミトリーは、唐突に耳に入った声に反応してしまい、膝をテーブルにぶつけた上にインク壺を倒してしまった。






「何かごめんなさい。でも、ノックもしたし声もかけたのよ?」


「あぁ...いや、良いんだ...。チャイ要るか?」


「貰うわ。」


 エリサが居心地の悪そうに椅子に腰掛け、ドミトリーは遣る瀬無い表情で真っ黒になった建議書を見つめる。

 部屋にはいたたまれない空気が残っていたが、2人は暫く振りの再会を喜ぶことを選んだ。


「いつか世話になるとは思っていたが、まさかこんなに早いとは思ってなかったよ。」


「私もよ。それにしても意外ね。あなたはこういう仕事向きじゃないと思ってたのに。」


 ドミトリーが暖炉で沸かした湯で茶を淹れる。3煎目なので香りがかなり薄れていたが、キツい味や香りが苦手なドミトリーは2煎目以降の優しい香りが好きだった。


「そう見えるか。まぁ、出来なくは無いんだけどな。」


「と言うと、やっぱり殿下絡み?」


「...銃兵隊の管轄は将軍達じゃない。皇帝直轄の宰相府預かりだ。」


 その言葉で全てを察したエリサが可哀想なモノを見る目を向けてくる。そこはかとない忌々しさを解消すべく、ドミトリーは反撃に出た。


「で、薬師としてはペーペーのお前が何で銃兵隊に志願したんだ?先達の不興でも買ったか?」


「ぺっ...相変わらずハッキリ言うのね。」


 生乾きの心の傷を踏みつけられたエリサが口角を引き攣らせた。まっこと小さき優越感を手に入れ、ドミトリーはすかさず理由をかざして身を守る。


「誤魔化しても仕方ないだろう。それに、銃兵隊の人事は俺が担当だ。ある程度の事情は把握しておきたい。」


「まぁ、当たらずも遠からずって所。まぁ、それとなく予想はしてたんだけどね...」


 エリサはカップを口に運ぶと語り始めた。



 元々、ヘルガ自身はそういう意図を持っていた訳では無かったらしいが、現在まで会としては男性の受け入れは行っておらず、白百合会という薬師集団は男子禁制が不文律となっている。

 当然ながら男には想像できない世界が広がっている訳だが、組織やコミュニティの中で立身出世を目指すと言う点では男女に大きな違いは無い。泥臭くパッとしないサクセスストーリーが繰り広げられるだけである。


 薬師に限った話ではないが、この手の仕事は経験と勘がモノを言うため、年功序列のヒエラルキーが厳然として存在する。亀の甲よりなんとやら。経験とそれによって保障された信用が無ければ、新人にどれ程能力や才能が有っても凡庸な先人の足元にも及ばない。

 先輩と後輩と言う立場の違いには厳然たる壁がある訳だが、残念な事にその壁を盾にして憂さを晴らす者は多い。


 その様な環境では、学歴と言う自分の努力と才能だけではどうしようもない違いは、先輩の自尊心を激しく刺激する物だったらしい。


 ”恵まれているのが嫉ましい”

 

 薬師を目指し、偉大なる先駆者の元で己を磨こうと決意した少女を待っていたのは、そんなどうしようもなく下らない理由による八つ当たりだった。

 法術大学を卒業した気鋭の後輩は、先輩にとっては目障りな存在でしかなかったらしい。


 あれこれ理由を付けて呼び出しては、何の教訓にもならないご高説を垂れて事あるごとに嘲笑う。当初はそれだけだった。しかし、程なく陰湿な指導は次第に暴力なものへとエスカレートしていった。


「それを見かねた同族の先輩に連れ出されたと...慈愛に満ちた職場だな。」


「そう言わないでよ...まぁ、先輩方の気持ちは解らなくは無いのよ。納得は出来ないけど。」


「嫉妬、あるいは警戒か。だが、どちらにしたって褒められた事じゃない。悪化するのを野放しにしていたなら組織としても不健全だ。」

 

 かく言うドミトリーも前世ではエリートコースと言える帝大卒だった事が理由で、兵役時には理不尽な”しごき”を繰り返された口だった。

 自身の努力ではどうしようもない差を前に、湧き上がる感情を制御できる克己心を持つことは言うほど簡単ではない。

 才気溢れる後進たちを見て不安や不快感に駆られずに済むようになるまで、ドミトリー自身も長い時間を必要としたのだ。


「厳しいわね。でもヘルガせんせいは素晴らしい人よ。それは間違いないの。」


「腕が一流でも組織の長としてはまた別さ。何でも求めたら酷だろう。」


 エリサの独白は同じ長命種として他人事とは言い難い点が多い。

 そもそも寿命が長いという点だけでも深刻な格差である。それに加えて”恵まれた”境遇だと思える経歴を持っていれば、強い嫉妬を引き起こすことは想像に難くない。

 本当にそれが良い物かは分からずとも、絶対に自分が手に入れられない事実がそうさせるのだ。


「で、お前自身はどうしたいんだ?薬師を諦める事を考えているのか?」


「まさか。熱意が薄れたのは否定できないけど、この程度で諦める気は無いわ。」


 すっかり冷めたカップを口に運び、慣れた渋さに少しだけ眉根を寄せる。3煎目でもなかなかの豹変ぶりである。帝国の茶は気難しい。

 

「もしどうしても駄目なら別な道を考える。無理さえしなければ時間はたっぷりあるし。」


...短い間に随分と深みを増した...かなり苦労したようだな


 同時に深み故の暗さも増したが、むやみに明るいだけでは日陰者が目を痛める。このくらいの方が丁度良いのだ。理不尽もしっかりと己の糧としている学友に、ドミトリーは自然と笑みが浮かぶ。


「そうか。見かけた時は随分と髪が色褪せていて心配したが、そう考えられるなら大丈夫だろう。よく頑張ったな。」

 

「...ありがどう゛っ...うぅ...」


 顔を歪めつつも気丈に振舞っていたエリサから、堰を切ったように涙があふれだす。


「そうだそうだ。泣いて全部吐き出してしまえ。付き合うから。」


 



 給仕室からタオルを取ってくるためにドミトリーがドア開けると、アデリーナが聞き耳を立てていた。


「あっ...」


 だが、ドミトリーは敢えて何も言わず、そのまま給仕室へと足を向ける。手狭な給仕室でタオルを物色しながら、ドミトリーはやっと後輩に声を掛けた。


「...感心しないな。どこでそんな真似を覚えた。」


「...。」


 だが、ドミトリーの問いにアデリーナは答えなかった。


「一つ忠告だ。好奇心は猫をも殺す。これから先お前が幸せになりたいなら、手を伸ばす前に一回考えると良い。情報に殺されないようにな。」


 ドミトリーにもエリサにも、やましい点は何一つない。エリサの個人的な感情を抜きにすれば、ドミトリーがわざわざ目くじらを立てる程の事ではない。


 だがドミトリーには、アデリーナの不用心さが気になった。


 もし、その情報を万難排して隠し通したい者が居たら。彼女は幸せな未来を知ることが出来なくなる。


「先輩は...」


 下世話な話になる流れを察し、ドミトリーはアデリーナの言葉を遮って宣言した。


「エリサは学友だ。以前、共に戦った戦友であり、これから共に戦う戦友だ。大切な”友”の悩みを聞いて何か問題があるのか?」


「いえ、無いです...。」


「アデリーナ。」


 言外に厳しく窘められてアデリーナが落ち込む。だが、彼女がそれを問題だと認識できていればこそ、ドミトリーは釘を刺す意味があると判断した。


「色恋を否定する気はないが、公私はしっかりと区別しろ。仕事に愛憎を持ち込むことは許されない。出来ないお前では無い筈だ。期待しているぞ。」


「はい!」


「まぁ、俺も紛らわしい真似をしたからお相子だ。お互い、これから気を付けよう。」


 ドミトリーはそう言ってアデリーナの背を押し、アデリーナはその勢いのまま自室へと駆けて行った。






 事務室に戻ると、エリサはすっかり泣き止んで落ち着いていた。


「おう、落ち着いたみたいだな。」


 ドミトリーがタオルを渡すと、受け取ったエリサはそれをじっと見つめる。何故それを手渡されたのかいまいち理解しきれていない様子に、ドミトリーは苦笑いを浮かべた。


「皆の元に戻る前に、顔を洗っていくことをお勧めするぞ。酷い有り様だ。」


 はっとして顔を赤らめながら口元を押さえたエリサから目線を外し、ドミトリーは鞄に荷物を詰めて帰宅の準備をし始める。

 思ったよりも時間がかかったが、アデリーナの手前泊まり込むのは好ましくない。明日の朝が少し辛くなるのは避けられないが、その程度ならば別に苦にもならない。


「夜も遅い。俺はもう帰るから、早く寝るんだぞ。」


「あ、後で何かお礼をするわ!」


 エリサが立ち上がって叫ぶように言うが、ドミトリーはそれを手で制した上で断る。


「いや、必要ない。これも仕事の内だからな。それに、お前の話で俺も一つ決心がついた。ありがとう。」


 ドミトリーはそう言って鞄を片手に外套を羽織り、エリサに振り向いて軽く会釈して駐屯地を後にした。






 帰り道、ドミトリーは恵まれた環境に胡坐をかき、それでいてウジウジと文句を垂れていた己を恥じた。


...よくもあのような態度が出来たものだ。先輩面など虫唾が走る!


 およそ思い付く限りの自己嫌悪が吹き荒れ、固く結んだ口もとに更に力が入る。


...既に友を巻き込んでいる。もう後には引けない


 心の中で呟き、自宅の前でドミトリーは足を止めて空を見上げる。春特有の強い風に乗り、雲の流れは速い。吹き付ける風には生暖かさが混じっている。ぐずぐずしている余裕は無い。


...引けないならば、突き進むのみ



 その晩、ドミトリーの家から灯りが消える事は無かった。

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