妥協彼女
人生に妥協は必要です。
相談室の相談役でもある彼女の決め台詞。
クリッとした大きな瞳で相手をしっかり見つめて言う、その言葉は現実味しか帯びていなかった。
事実、彼女はこの短い人生で沢山のことを諦めてきた。
そして妥協して進んで来たのだ。
もっと頑張れば成績が上がろうとも、それまでと妥協してキープを選ぶ。
高校にしてもそうだ。
行きたいところがあったはずなのに、親の反対を押し切るなんてことはしなかった。
だから家から一番近い高校に通っている。
これからの進路においても彼女の答えは淡白だった。
無難に就職。
専門や大学は考えていない。
否、考えない。
それなりに有名な会社に勤めて、それなりの成果を出す。
それが彼女の未来予想図。
「私は、諦めろとも諦めるなとも言わないわよ。ただ、妥協のない人生はない。それだけは覚えといてね」
色々なことを達観したような彼女。
色々なことを諦めて、妥協を覚えて生きる。
そんなことしか出来なくなった彼女。
「あぁ、じゃ、それでいいです」
面倒だと投げ捨てて、自然と朽ちてゆく。
色褪せる世界で彼女は今日も諦めて妥協を繰り返す。
まるで夢を忘れた大人のように。