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(旧版)地球化異世界の銃使い  作者: 濃縮原液
第1章 三人の被召喚者
8/50

08 射撃訓練

 異世界生活四日目。

 俺は傭兵ギルド所有の演習場に来ていた。 

 演習場は街の外ではあるが、傭兵ギルドのそばにあるため危険は少ない。


 この演習場は、主に魔道士達が魔法の練習に使っている。

 そのため、今も俺の近くで魔道士達が様々な魔法を放っていた。

 正直、見ているだけでもすごい。


 魔法のランクには、下級、中級、上級魔法が存在する。

 下級魔法なら拳銃と大して威力は変わらない。

 だが中級になると一発の魔法が手榴弾クラスの威力になる。


 この演習場では中級ランクの魔道士が三名ほど魔法を練習していた。

 軍の演習さながらの勢いで、目の前で魔法が吹き荒れている。


「やっぱり攻撃魔法はすごいわね! 私も使えたらいいのに」


 パンネがうらやましがっていた。

 ちなみに、この演習場の場所はパンネに教えてもらった。

 パンネは傭兵ではないが、以前からこの演習場は使っていたらしい。


 そのパンネは、今日も元気にマシンガンをぶっ放していた。

 ミニミ軽機関銃。

 俺が昨日買った八九式小銃よりも強力な銃だ。


「私は銃火器も好きなんだけどね。これで威力がもっとあったらなぁ……」


 地球でならマシンガンも十分な威力があるのだが。

 まあそばでは手榴弾クラスの魔法を撃ちまくる魔道士がいるのだ。

 銃火器の威力不足は否めない。

 ただし、銃に魔力を込められない前提なら、だ。


「さてと、じゃあ俺も始めるか」


 銃を撃つのは三日ぶりだ。

 だが、ユニークスキルはちゃんと発動してくれてるようだ。


 まずは拳銃を構えて魔力を流す。

 昨日買ったベレッタだ。


 ベレッタはパンネに借りたトカレフと違い安全装置もしっかりしている。

 それに装弾数もトカレフ八発に対してこっちは十六発だ。


 その銃を遠くの岩に向けていると、そばにいる魔道士が話しかけてきた。


「そんな小さな銃で何を真剣に狙っているのかしら」


 声を聴いて振り向く。

 そこにはピンク色の髪をした少女が立っていた。


 年は俺より若いか。

 髪型はウェーブのかかったショートヘアだ。

 その髪の上に小さな帽子がアクセサリーのように乗っていた。


 ミニハットって奴だな。

 ピンク色のウェーブヘアと相まってちょっと可愛い。


「マシンガンならともかく、拳銃なんて子供のおもちゃですわよ。ここは傭兵ギルドの演習場。お遊戯なら射撃場でやるのがお似合いですわ」


 なんかめっちゃ馬鹿にされた。

 ちなみに……この世界にはちゃんと銃を撃つための射撃場も存在する。

 ただし遊技場扱いだが。


 だから、拳銃を撃つだけなら普通はそこを使えばいい。

 だがな……俺のは威力が違うんだよ。


 ミニハット少女の相手をするのも面倒なので、俺は黙って引き金を引いた。

 ベレッタから放たれた銃弾は遠くの岩へと着弾し……そのまま岩を貫通する。

 ついでにでかい風穴も開けていた。


「なっ……なんですの今のは」


 ミニハットが気持ちいいくらいに驚いた顔をしている。


「ふ、ふんっ。あなた……何か能力を持ってはいるようですわね」


 ミニハットは一度見ただけで俺の能力に気付いたようだ。

 普通なら拳銃で岩に穴は開かないからな。

 気付くのは当然か。


「ですが、所詮は初級魔法クラス……くらいですわ。私の魔法の方がすごいですわよ」


 なんかアホなことを言い出した。

 銃火器に何か恨みでもあるのだろうか?

 俺はどうでも良かったのだが、ミニハットは対抗するように魔法を放った。


「砕け散りなさい。≪フレイムバースト≫」


 ミニハットが呪文を唱えると、小さな火球が遠くにある岩へと向かう。

 そして、着弾すると大きな爆発をおこしてその岩を派手に吹き飛ばした。


「見たかしら? あなた、珍しい能力は持ってるようだけど、珍しいだけで決して強い能力ではありませんわね」


 何か勝ち誇ったような顔でこっちを見ていた。

 俺は初めから勝負する気もないのだが。

 そもそも貫通力では俺が打った拳銃の方が上だしな。

 だが俺としてもしゃくぜんとしない気持ちはある。


 なので、次は拳銃ではなく八九式小銃を構えた。

 元々、今日の主目的はこいつを撃つことだ。


 八九式はアサルトライフルだ。

 ライフルなので当然一発の威力も拳銃より高い。

 その上フルオートで撃てば、毎秒十発以上の速度で弾丸がばらまかれるのだ。


 これを使いこなせれば傭兵として十分以上に戦えるだろう。

 まあ装弾数が三十発しかないからフルオートだと二~三秒で撃ち尽くしてしまうのだが。


 ともかく、まずは検証だ。

 俺はさっき拳銃で撃った岩よりさらに遠くの岩を狙い、小銃に魔力を込める。

 セレクターはセミオートにセット、まずは単射で威力を見る。

 そしてそのまま引き金を引いた。


 小銃から打ち出された弾丸は見事に岩へと直撃し、岩を粉々に吹き飛ばした。

 弾はそのまま直進して、演習場の奥にある小さな森へと入っていく。

 森の木が2、3本吹き飛ぶのが遠目に見えた。


「なっ……」


 ミニハットがやっぱりいい顔をして驚いている。

 岩を吹き飛ばした威力だけならミニハットの魔法と大差はないだろう。

 それより遠くの木が吹き飛んだ方に驚いたようだ。


「ぐぬぬ……」


 ミニハットがいい顔でくやしがっている。

 顔を見る分にはもう俺の力は伝わったようだ。

 だが、それとは関係なく俺にはまだ試すことがある。


 フルオートだ。


 単発でも威力が高いのは分かったが、やはり連射してこその自動小銃だろう。

 そういうわけで、次は森を狙おうと思う。

 ちょっと不安になったのでパンネに確認はとるか。


「なあパンネ。あの遠くにある森も演習場に入ってるんだよな? 今から吹き飛ばそうと思うんだけど」


「あ、うん。大丈夫よ。敷地に入ってるかは分かんないけど敷地の外もどうせ未開領域だし」


 未開領域だからいいという理屈は謎だが、まあ問題はないのだろう。


 俺は再び銃を構え、銃身に魔力を流す。

 そして、セレクターをフルオートにセットした。

 そのまま引き金を引き絞り――


 俺は、意識を失った。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 気が付くと、俺はベッドの上にいた。

 場所は傭兵ギルドだ。


 俺は演習場で倒れたらしい。

 理由は魔力切れだ。


「ふんっ。自分の力量もわきまえずに倒れるなんて、愚かな男ですわね」


 ベッドの横にはパンネだけでなくなぜかミニハットもいた。

 どうやら、俺を運ぶのを手伝ってくれたらしい。


「なんか迷惑かけちゃったみたいだな。すまない」


「べ、別にあなたの為にやったわけじゃありませんわ。わたくしの、エレーニア・ベルペの誇りとして、目の前で倒れた人間をほっておくなどできなかったというだけですわ」


 このエレーニアという少女、意外といい奴なのかも知れない。


「まあ、これに懲りたら分相応に自重することですわね」


 話し方がいちいち偉そうな気はするが。

 だが言っていることは的を得ている。


 八九式は俺には合わないように感じた。

 単純に俺の魔力が足りなかったというのもあるが。


 八九式の装弾数は三十発だが、俺は十五発を撃った辺りで魔力が切れたようだ。

 八九式は、使うにしてももっと強くなってからの方が良さそうだ。


 元々俺は二丁拳銃で戦う方が好きだしな。


 ベレッタの方はいい感じだった。

 弾の種類が違うからか、こっちなら十六発撃ち尽くしてもいけそうに感じる。

 威力は落ちるが、それでもサケマグロ程度となら十分戦えるしな。

 やっぱりこれで行くのがいいだろう。


「それにしてもあの威力、凄まじいものがありましたわね」


 ミニハット少女、エレーニアがつぶやいていた。

 パンネに聞くと、俺は森の半分くらいを吹き飛ばしていたらしい。

 まあ森を吹き飛ばすというのは少し大げさで、中の木を十数本飛ばしていただけのようだ。


 だが、このエレーニアという少女をびびらすには十分だったようだ。


「あなたの名前、聞かせてもらってもいいかしら?」


「俺は捧 薙阿津だ。よろしく、エレーニアさん」


 名前を聞くと、エレーニアは満足そうにうなづいた。


「では、わたくしはこれで失礼しますわ。捧 薙阿津、あなたの名前は覚えておきますわよ」


 なんか捨て台詞のようなものを残して去っていった。



 その後は迷惑をかけたギルドにお詫びを言って異人会に帰った。

 帰った後、俺が倒れたことを知った綾ちゃんに心配されたりしたが。

 安静にした方がいいとのことなので、四日目はそのまま綾ちゃんと部屋で過ごした。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 異世界生活の五日目と六日目は比較的穏やかに過ぎていった。

 午前中は異人会で様々な講義を受ける。


 俺はこの世界についてまだほとんど知らない。

 異人会ではその辺のサポートも充実しており、この世界についての講義を受けることができるのだ。


 綾ちゃんも講義は受けてるようで、講義がかぶった時には隣の席で話を聞いた。



 そして午後は能力の確認だ。

 八九式は封印し、ベレッタでどれだけ撃てるのかを確認する。


 結果は上々だった。

 ベレッタなら装弾数の十六発を撃ち尽くしても魔力切れは起きなかった。

 二丁構えて三十二発撃ち尽くした時は少しやばかったが。


 ともかく、ベレッタでなら十分戦えると俺は確信した。




 そして異世界生活七日目、俺は傭兵になって初めての実戦へと出かける。


 今朝、スマホに傭兵ギルドからの電話がかかってきたのだ。

 『指名依頼』、俺を指名した依頼がギルドに届いたのだそうだ。


 実績のない俺に指名が来るのはありえないことなのだが、依頼主の名前を聞いて俺はすべてを理解した。


 依頼主は『異世界人協会ニムルス支部 被召喚者捜索部 佐藤 パンネ』と言うらしい。


「ふっふーん、薙阿津びっくりした?」


 パンネがにやにやした顔で話しかけてくる。


「まあびっくりはしたけどよ。でもなんで直接言わねぇんだ?」


「そりゃあ、これが正式な依頼だからよ。報酬だって発生するし。そこはちゃんとしないといけないでしょ」


 パンネは意外としっかりした人間なのかも知れない。

 と思ったが、依頼自体はパンネというより、異世界人協会からの依頼のようだ。

 被召喚者捜索部の任務に、護衛として傭兵を雇うという感じだ。


「メンバーは五人。任務は基地局の設置ね。森の中にも設置するから薙阿津にはその際の護衛をお願いするわ」


 任務は携帯電話の基地局を設置することのようだ。

 この世界では、人がいないような場所にも基地局を設置している。

 その最大の理由は被召喚者対策だ。


 この世界に飛ばされて来る者にとって、電話が繋がるかどうかは死活問題だ。

 それで生存率が大きく変わる。

 もちろん、召喚された者が携帯を持ってなければ駄目なのだが。


 だからと言って、人命がかかっている以上それを疎かにすることはないようだ。

 そのため、平地であれば世界中どこでも電話は使えるようになっている。

 残っているのは森や山の中だ。


 今回はそのうちの森に基地局を設置するのが目的だ。

 ただし危険な場所に入って設置者が命を落とすようでは本末転倒。

 一定以上危険な場所には基地局を設置することはないそうだ。


「今日行く場所は薙阿津が召喚された場所の近くよ。綾ちゃんもあの近くで見つけたからね。召喚は基本ランダムなんだけど、たまに偏ったりすることもあるのよ。だから一度誰かが召喚された場所にはできるだけ基地局を設置することになってるのよ」


 とのこと。

 つまり、今日行く場所はあのサケマグロが出てきた森なのだ。

 森の中にはサケマグロが結構な数いるとのこと。


 もちろん目的は基地局の設置なのでその全てを倒す必要はない。

 だが、俺は体にやる気が満ちるのを感じていた。


 前とは装備が違う。

 ベレッタ二丁で装弾数は合計三十二発。

 予備の弾倉もバッチリだ。

 魔力の方も、連射さえしなければかなりもつ。


 俺はやる気まんまんで被召喚者捜索部のミーティングルームへと入るのだった。


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