表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(旧版)地球化異世界の銃使い  作者: 濃縮原液
第1章 三人の被召喚者
6/50

06 異世界生活

 その後も俺達は話を続け、しばらくしてから村重 綾は席を立った。

 俺とパンネは食事を終えてなかったので食堂に残る。


 ちなみに俺の飯代はパンネ持ちだ。

 俺はこの世界のお金を持っていない。


 そのパンネが、ニヤニヤした顔で俺を見ていた。


「……なんだよ。そんなに俺の言ったことがおかしいのかよ」


 時間が経つにつれ、余計に恥ずかしくなってくる。

 この世界に地球人が飛ばされるようになって百年。

 その間、誰もできてないことをやる。

 そんなことを言ったのだ、自分でも無理を言ってる自覚はある。


 そもそも、俺はその辺の事情もまだ知らないしな。

 みんなが地球に帰れない理由どころか、なぜこの世界に地球人が召喚され続けているのかすら聞いてはいない。


 そんな状況であんなことを言ったのだ、目の前のウサ耳少女にバカだと思われても仕方のないことかも知れない。


 だが、その俺の考え方は間違いだったようだ。

 パンネは、決して俺をバカにしてニヤニヤしていたわけではなかった。


「薙阿津の言ったこと、全然おかしくなんてないわよ。だって、私も同じ目標を持ってるもの!」


 まさかのお仲間である。

 ここで俺は思い出した。

 そういやこいつアホだったと。

 いや、なんかアホっぽいだけで本当にアホかはまだ分からないが。


 事実、パンネの方は具体的な目標を持っていた。


 ここで、そもそもなぜ百年も地球人が召喚され続けているのか、帰れない理由は何なのかについて話を聞いた。



 まとめるとだいたいこんな感じだ。


 この世界には通常の魔物の他に、やたら強い神獣というものが存在する。

 その神獣の脅威にさらされていたある国が、異世界から強力な勇者を召喚する装置の開発に成功した。


 召喚された勇者は確かに強かったが、それでも神獣と戦うには力が足りず、召喚装置の力により、さらなる勇者を召喚し続けた。

 だがそれでも神獣の脅威には抗えず、結局その国は神獣に滅ぼされてしまう。


 しかし、なぜかそこで召喚が収まることはなく、それから百年、未だに召喚装置によって地球人たちが召喚され続けている……ということのようだ。


 ただし百年前の、ほとんどおとぎ話のような伝説のため、真偽のほどは確かではないという話だ。



「でも国連の公式見解としても、これが事実に一番近いはずだと言われているわ。そして召喚が止まらない理由、それは召喚装置が神獣によって持ち去られ、未だに稼働し続けているからだと言われているのよ」


 伝説がどうであれ、召喚装置というものがかつて存在し、そして現在もこの世界のどこかにあるのは確からしい。


 そしてこの世界には、人が足を踏み入れることのできない≪未開領域≫という場所が存在する。

 神獣が支配するエリアがその代表格だ。

 召喚装置は、その未開領域のどこかにあるはずだと言われている。


「未開領域への探索も、昔は盛んに行われていたらしいのよ。でも二十年くらい前から、大規模な探索は行われなくなってる。でも私はやるわ! 今よりずっと強くなって、神獣も倒せるくらいになって、そして、未開領域から召喚装置を見つけ出すのよ!」


 パンネの目標は明確だった。

 地球へ帰るための方法も、思った以上に力任せだ。


 これは、俺にとっても嬉しい話だ。

 地球へ帰る方法を一から研究したりするよりはずっといい。



 俺は既に、銃の威力を強化するユニークスキルに目覚めている。

 そのスキルを生かすためにも、戦闘職でいきたいとは思っていた。

 せっかく魔物がいるような異世界に来れたんだしな。


 そうして力をつけて、いつか神獣を倒せるまでになれば、地球へも帰れるかも知れない。


 うん、これは良さそうだ。

 神獣って言うのは国を滅ぼすくらいだから相当に強いのだろう。

 だから、決して簡単な道のりにはならないとは思う。

 だが、やってみる価値はある。


「神獣か……。強そうだが、相手にとって不足はないな。決めたぜ! 俺も強くなったら未開領域に入って、召喚装置ってやつを見つけ出してやるぜ!」


「ええ、お互いがんばりましょう」


 俺はパンネと固い握手を交わすのだった。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 食事が終わった後は、パンネに案内されて色々な用事をこなした。


 ちなみに色々って言うのは、召喚された人間が行う手続きなどだ。

 住民登録なんかもあるようで、年齢や電話番号などを書いて提出した。


 ちなみにこの世界では、電話は無料で使える。

 召喚されて来た地球人が、すぐ助けを呼べるようにするためだそうだ。

 実際俺も電話が使えなかったら、パンネが救助に来ることもなく魚に食われて死んでいただろう。


 本当に、この世界の被召喚者対策は充実していると感じる。



 住民登録が終わった後は、草原で倒したサケマグロを換金した。

 平均で一体二十万、まともに換金できたのは十体だったので合計二百万円。

 これをパンネと二人で山分けした。


 ちなみに円と言ってもこの世界での円だ。

 この世界では基準通貨として、異世界のお金の単位である円が採用されてはいるが、価値は地球の日本円と常に一緒と言うわけではない。


 ただし現在のレートは、この世界での円の価値は日本とだいたい同じらしい。

 だから基本的に日本円と同じ感覚でいいはずだとパンネに言われた。

 まあこの世界と日本では価値があるものの種類も変わる。

 細かい差異は気にしても仕方がないというとこだ。


 だから俺の分け前百万円は、単純に日本円での百万と同じ価値と考えていい。

 なかなかの大金だ。

 しばらく暮らす分には問題ないだろう。


 それに衣食住については異人会の方で面倒を見てくれる。

 ただしこれは基本一カ月で、その間にこの世界での身の振り方を決めないといけないそうだが。


 身の振り方については、これからちゃんと考えたいと思う。

 就職情報誌みたいな物も渡してもらえたからな。

 異人会では就職の手伝いもしているとのことだ。


 今日は、その情報誌を見つつこれからについて考えたいと思う。

 召喚初日で疲れもあるから後は部屋にこもるのだ。


 そういうわけで俺はパンネと別れて、異人会に用意してもらった部屋に入って休むのだった。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 異世界生活の二日目が始まる。


 身の振り方については昨日で決めた。

 この世界には傭兵ギルドがあるそうなのでそこで傭兵になろうと思う。

 ちなみにパンネは傭兵ではなく異世界人協会に所属している。


 異世界人協会と言っても色々な部署があり、召喚者捜索隊は武闘派だそうだ。

 捜索時に魔物と遭遇することがあるからな。

 だから俺も捜索隊に入って鍛える手もないわけではない。


 だが、それでも主任務はあくまで捜索と救助だ。

 自分が強くなることを考えればやはり傭兵の方がいい。


「というわけで、今日は傭兵ギルドに行こうと思う」


 俺は決意のこもった声でパンネに意志を伝えた。


「うん、薙阿津の考えは分かったわ。私も間違いじゃないと思う」


 パンネも同意してくれたようだ。


「でもそれはいいんだけど、その前に薙阿津って、まだこの国の言葉話せないよね?」


「……え?」


 ……どうやら、この世界では自動で言葉が翻訳されたりはしないようだ。

 異人会に所属する人間は基本的に全員日本語が話せる。

 だがこの国、ニムルス国では当然ニムルス語が共通語であり、外へ出るにはまずニムルス語を覚える必要があるとのこと。


 俺は思わぬ壁の出現にくじけそうになった。


 だが俺はすぐ立ち直ることとなる。

 この世界には自動翻訳の魔法はないが、言葉を覚える魔道具はあるそうだ。

 しかも、話し言葉だけでなく文字も完全サポート。


 言葉を覚えた後はしばらく副作用があるそうだが、それも一日では収まる。

 一つの言語を一日で覚えられるというのだからこれはありがたかった。


 ……実際にその魔道具で言葉を覚えた時には死ぬかと思ったが。


 俺は午前中にすぐ言葉を覚えたので、結局二日目は副作用による吐き気やその他で何もすることができなかった。


 まあこれは通常の反応なのだそうで、被召喚者が潜り抜けないといけない関門の一つとなっているそうだ。

 一日吐き気に苦しむことにはなったが、それで一つの言語体系を覚えられたのだ、やはりありがたいことだと言える。


 ついでに言うと、パンネや綾ちゃんが部屋にきて看病してくれたりもしたし。

 これは何気に嬉しかった。

 まあパンネは異人会での仕事があるからずっと付き添ってくれたのは綾ちゃんの方だが。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 異世界生活三日目。

 まずは午前中の内に傭兵ギルドでの手続きを終えた。

 これは本当にスムーズにいったので特に語るべきことはない。


 その後は、これからの生活に必要な品を買うため買い物へと出かける。

 消耗品やスマホの充電器具、あと時計なども買った。

 置時計は異人会で一つ貰えたのだが、それとは別に腕時計も必要だ。


 ちなみにスマホの時計はあてにならない。

 この世界の一日の長さと地球での一日の長さが微妙に違うからだ。

 だが体の方はすぐ慣れるという話なので、時計さえ買えば問題はない。


「後は……服も必要ですよね」


 隣を歩く栗色ショートの眼鏡っ娘、村重 綾が語りかけてきた。

 綾ちゃんは……本当にいい娘である。

 昨日はほぼ一日中看病をしてくれたし、今日も買い物に付き合ってくれている。


 まあ綾ちゃんの気持ちは……なんとなく想像はできる。

 綾ちゃんはこの世界に来て一週間近く経つが、あまり人と話をしてないようだとパンネは言っていた。


 要は人見知りだ。

 知り合いが誰もいない異世界に飛ばされたのだ、そりゃ人見知りにだってなる。


 そしてストレスも、相当に溜めこんでいたんだろう。


 そんな時に現れたのが俺だったのだ。

 クラスこそ別ではあったが、同じ学校、同じ学年の人間。


 この世界に飛ばされてからずっと途切れていた、地球との接点のようなものを、彼女は俺の中に見たのかも知れない。


 昨日俺を看病してくれている間、綾ちゃんはすごく饒舌だった。

 ただし、話の内容は全て地球でのことだ。


 俺にも分かる話題を振ってくれたという可能性もあるにはある。

 だがそれにしても、この世界に来てからの話が全くなかった。


 やっぱり綾ちゃんはまだ……この世界に飛ばされたことを、現実として受け止められないでいるように思える。


 俺はそのことについて、綾ちゃんを責めたりする気にはなれなかった。

 そもそもそれは、他人が責めていいようなことではないはずだ。

 だが、心配にはなってしまう。


 異人会には一カ月近く世話になれるという話だが、俺は期限までやっかいになるつもりはない。

 傭兵としてある程度金を稼いだら、宿を借りるにせよなんにせよ、異人会からは出るつもりでいる。


 その時には、綾ちゃんはここに置いていくことになる。

 そして綾ちゃん自身も、いずれは異人会を出なくてはならないのだ。


 いちおう、そのまま異人会の職員として就職することもできるそうだし、そうする人も一定数存在するようだ。


 それにパンネもいる。

 パンネは、綾ちゃんがこの世界に飛ばされた当初からよくしてくれていたようだし、これからも色々と面倒を見てはくれるだろう。


 だが俺は、やっぱり綾ちゃんの今後について心配せずにはいられなかった。

 これについては、機会があればちゃんと話をしたいと思う。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ