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(旧版)地球化異世界の銃使い  作者: 濃縮原液
第4章 未開領域開放戦線
50/50

06 侵入開始

「やっぱりロード種が邪魔だな。数は近い所で二体ってとこか」


 南方大密林への入り口を眺めつつ俺は魔力探査を行っていた。


 事前調査では密林内に十体ほどロード種がいるのを確認している。

 その内の二体とは、今日予定している探索ルートで鉢合わせになりそうだった。



 密林内へは偵察部隊を先頭に入ることになるが、ロード種以上の強敵を排除するのは俺が所属する主力部隊の役目だ。

 すでにロード種を感知している状態で偵察部隊を先行させるのはどうなんだろうと俺は少し迷っていた。


 そこにリレ隊長が思わぬ提案をしてくる。


「せっかくだから、一つ妾と勝負してみない? ロード種二体はここから同じくらいの距離にいるみたいだし、どちらが先に倒すか競争ってことで。どうせ妾達は神獣と遭遇するまでヒマなんだしさ」


 とのことだ。


 リレ隊長の提案は面白そうだとは思った。

 だが少し考えてこれは勝負にならないと俺は気付いてしまう。


「隊長には悪いがあの二体が目標じゃ勝負にならないな。……ぶっちゃけ二体とも今いる場所から撃ちぬける」


 気付いた結論がこれだった。



 俺の探査能力はカーヴェルさんから受けた修行で相当高くなっていた。

 これには魔力感知だけでなく五感の強化も含まれる。


 二体のロード種までの射線上に集中して注意をほどこせば、そこまでの間に召喚装置など打ち抜いて困る物がないことまでしっかり把握することが出来た。


「うっわぁー……射程が長すぎるってのもちょっと考え物だねぇ。これじゃロード種は全部薙阿津ちゃんの餌じゃん。せっかく楽しめると思ったのに」


 リレ隊長は見るからにがっかりしていた。


 だが俺達も遊びでここまで来ているわけじゃないからな。

 より安全な方法がある以上、それを採用するのは当然だった。



 俺は≪リリース≫と念じて背中にあるバーストシューターの魔導吸着を解除、いつもの膝撃ちの姿勢で構えた。


 射撃の姿勢に関しては、カーヴェルさんには理由がない限り地面に寝て撃てと言われてはいるのだが、服が汚れるしな。

 それに銃とか弾倉とかをマジックコートの前面に固定していたりするので俺が地面に伏せない理由としては十分だろう。


 というわけでバーストシューターへと魔力を送り俺は一撃目を放った。



 戦車の主砲のような轟音と共にバーストシューターの銃口から大きな爆炎が燃え上がる。


 銃口から噴き出す物がもはや煙ではなく爆発の炎なのだ。

 爆発強化式の魔法銃による一撃は、銃撃というより砲撃と呼ぶ方がふさわしい激しさだった。


 威力ももちろん申し分ない。


 射線上にある木々を軒並み吹き飛ばして、銃弾はロード種を爆裂させ。

 そのまま密林を一気に突き抜け、地平線の彼方へと消えて行く。

 俺が撃った銃撃の射線上は、隕石でも通ったみたいに地面がえぐれて所々で火を放っていた。


 進行ルートとは別の方向に無駄に密林を切り開いてしまった。



「メ……メテオだ。隕石魔法ってのを昔一度だけ見たことあるがあれが通った跡にそっくりだ」


「こ、これが神獣殺しの力……」


 開放戦線のメンバーの何人かが驚いている。

 威力で言えば玄武を倒した時の一撃の方が凄かったんだけどな。

 今回は地面の低い位置から銃を撃ったために跡が派手になってしまった。


 気にしても仕方ないのでそのままもう一体へと狙いを定める。


 二体目の方は木の上にいるらしく座標が高かった。

 そのため一体目を撃った跡のように地面がえぐれることなく木々だけを吹き飛ばして弾は貫通していった。



 まあこんなところか。


 爆発強化型の大型魔法銃、バーストシューター。

 緋月が持つアクセルシューターと合体した状態が本来の姿だが、単体でも十分すぎるほどに強力な魔法銃だった。


 対玄武戦で使っていた対物ライフルよりもかなり強い。

 遠距離からロード種を跡形もなく吹き飛ばすこの魔法銃の威力は、神獣以外に対してはかなり無敵かも知れなかった。


「正直どんびきだよー?」


 バーストシューターの思わぬ威力にリレ隊長すら引いていた。


「せっかく久々に楽しめると思ったのに。これじゃあ神獣と遭遇するまでやることなさそうだねぇ」


 俺自身もちょっとやりすぎたと思わなくもない。

 というかバーストシューターの性能が良すぎたのは俺にとっても想定外だ。


 俺は今回バーストシューター以外の装備もマジックコートにセットしている。

 雑魚を殲滅する用途にサブマシンガン仕様のドルフィンシューター。

 そして対ロード種用にガンナイフだ。


 そう、本来の予定では俺はガンナイフでロード種と戦うつもりだったのだ。


 修行によって俺は身体能力の方も上がっている。

 特に一番修行したのは接近戦だ。


 だから接近戦でロード種と戦って、ガンナイフをぶっ刺した後にゼロ距離刺突射撃でロード種を倒す予定だったのだ。



 しかしまあ……予定なんてものは実戦においては崩れて当然の物。


 バーストシューターで遠距離から排除するのが一番安全なのを俺自らが証明してしまったため、今更バーストシューターを封印する選択肢は存在しなかった。


 密林内に入るのは俺やリレ隊長だけではないからな。

 俺が接近戦をしたいと言う理由だけで隊を危険にさらすことは出来ない。


 というわけで、危険なロード種を密林の外から排除した上で俺達は南方大密林の内部へと侵入を開始するのだった。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 侵入後の行程はいたって順調だった。

 ロード種は俺が倒してしまっているし、他の雑魚は偵察部隊が問題なく倒してしまう。


 何気にシンが一番多くの敵を倒していた。

 カーヴェルさんの所で修行して、一番強くなったのはやはりシンだと言っていいだろう。


 ランクはまだBだが、実力的にはAランクの上位に位置するかも知れない。

 偵察部隊の隊長となっているゲネスさんもシンの成長に驚いていた。


「シンには以前から期待はしていたのだが、これはもう私よりも強くなっているかも知れないな。まあもっとも……薙阿津君などは私と比べるのが失礼なほど強くなってしまっているがね」


 そういうゲネスさんの表情はすごく優しげで嬉しそうだった。



 そうして順調に密林内部を進んでいたのだが、ここで俺達は一人目の遺体を発見することとなる。


 被召喚者の遺体だ。


 遺体は既に白骨化していた。

 召喚されてから相当日が経っているのだろう。



 俺達は軽く手を合わせた後遺骨や周りにある遺品を棺へと入れた。

 その後は棺ごとパンネがアイテムボックス内へと収納する。



 被召喚者の遺体の場所も、球形飛行体による事前調査で大まかな場所は分かっている。

 だからこの収集作業も予定通りではあるのだが、やはり実際に遺骨を眺めると改めて心にくるものがあった。



 だがそんな俺とは裏腹に、パンネやゲネスさん達被召喚者捜索部のメンバーは、手慣れた手つきで作業を終える。


 その慣れた手際こそが、被召喚者が遺体で発見されることが決して珍しいことではないという事を、何よりも如実に表しているように俺は感じた。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 その後も行程は予定通りに進み、昼過ぎには今日予定する中継予定地へと到着する。


 木々がまばらにしか生えていない少し開けた草地だ。

 だが草地の範囲は安全と言うには少し物足りないため、周囲の木々を切り倒して十分な空間を確保する。


 地面の草も風属性や土属性の魔法を使って刈り取り、露出した地面をさらに土魔法で固めてしっかりとした土台を構築した。


 ただし、全員がここで夜を明かしたりするわけではない。

 未開領域内で野営をするのは危険が大きいからな。


 ここには仮設ゲートを設置して、夜の間は後方拠点となる国連国際防災戦略まで戻ってベッドで休むのだ。

 もっとも、仮設ゲートを守るために最低限の人員を配置する必要はあるが。


 そっちはEXランクの時雨 時昌を部隊長とする夜勤メンバーが担当する。

 彼らは昼の間に防災戦略の方で休んでいて、仮設ゲートの設置が終わって時間がきたら交代する手筈だ。


 部隊を担当時間で分けると、朝、昼、深夜の三交代制になっている。

 俺やリレ隊長を始め、今いるメンバーは朝の担当だ。


 密林内の移動は基本的にはこの朝のメンバーで進めるため俺達がメインと言っていいだろう。


 ちなみに昼のメンバーは緋月やアイシスさんなどが担当している。

 綾ちゃんなど基地でオペレーターを務める人たちも三交代制になってるな。


 まあそんな感じで八時間勤務を基本に隊は細かく分かれていた。



「仮設ゲートの設置が終わりましたわ」


 ゲートの設置を終えたエレーニアが声をかけて来る。

 そのままエレーニアと数人のメンバーは携帯基地局の設置へと移った。


 エレーニアは朝のメンバーの一人だ。

 支援部隊としてゲートや基地局の設置を担当している。



「行程は順調のようだな」


 起動した仮設ゲートから緋月とアイシスさんがやって来た。

 交代の時間まではまだ二時間ほど余裕があったが。


 今日戦う予定だったロード種は密林に入る前に俺が倒してしまったしな。

 順調すぎて予定より時間が余ってしまっていたりする。


 もちろん足りないよりは余った方がいい。

 スケジュール自体が人員的にも時間的にも余裕を持って組まれているしな。


 初日は計画通りの順調な滑り出しと言っていいだろう。



「……では、少し早いですが私達は周辺の植生調査に入ります」


 そう言ってアイシスさんは数名の人員を連れて密林内へと消えていった。



 時間別の隊の任務としては、朝が密林内の移動及び拠点の設置、昼が周辺地帯の各種調査、夜は拠点の防衛のみ、という感じに役割分担がされている。


 そして昼のメンバーには非戦闘員が一番多く含まれていた。

 アイシスさんが連れていったメンバー達もそうだ。


 主に国連環境計画の人達だな。

 国連環境計画内で最大の部局は管理局だったが、他にも部署は存在するのだ。

 その中の外来生物研究局の人員などがこの開放戦線へと参加していた。


 ちなみにここで言う外来生物というのは、異世界であるところの地球から来た生物のことだ。

 それらのこの世界での生態や、この世界の生態系へ与える影響などを調査する部局が外来生物研究局、通称外生局というわけだ。


 もっとも、国連の管理が行き届いている場所では地球産の外来生物は隔離管理が基本だ。

 緋月が持って来ていた野菜の種みたいにな。


 だからそういう物が環境へ与える影響を植物工場内などで評価するのが彼らの主な仕事なのだが、未開領域内ではまた別の仕事があるわけだ。


 未開領域は、国連が関わりを持たない本当に未開の領域だからな。

 被召喚者の遺体すらそのまま放置されているような場所で、その人達と一緒に召喚される他の生物の管理が行き届いているわけがなかった。


 未開領域内ではそういう外来生物の類も百年近く放置されて来たというわけだ。


 それらが現在どのような状態になっているのか、そういったことを調査することも今回の開放戦線の任務には含まれていると言うわけだ。


 ま、こっちについてはアイシスさんがしっかりやってくれる。



 俺はアイシスさん達を見送った後ゲートを通って防災戦略へと戻った。

 実に拍子抜けだが俺達朝メンバーの初日の仕事はこれで終わりだ。


 順調にいけば五日間はこの調子だな。

 未開領域内での油断などはもちろん禁物だが、本番は神獣との遭遇予定日となっている六日目か七日目になるだろう。



※更新停止中。再開予定は今の所ありません。申し訳ありません……。

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