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(旧版)地球化異世界の銃使い  作者: 濃縮原液
第3章 国連サミット
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10 国連サミット(午前)

 サミット会場へと到着し俺達はヘリから降りる。

 すると会場を警備する人達がすぐにやって来た。


「緋月さんに、薙阿津さん。お久しぶりです。こうして実際にお会いするのは対神獣戦以来ですね」


 会場警備に駆り出されていた聡理さんが柔らかい口調で話しかけてくる。

 ちなみに俺を取材した記者については既に電話で相談していた。

 時間があったので捜査の進捗状況について少し聞かせてもらう。


「まだ捜査を続ける必要はありますが、かなり黒に近いですね。薙阿津さんの読み通り国連非加盟国のスパイである可能性が高いです。場合によってはかなりの大物を捕まえられるかも知れません。情報提供、改めて感謝します」


 とのこと。

 これは少し想定外だった。

 ……ICPO(国際刑事警察機構)が動く事態になりそうなのか。


 俺はかなり危ない所だったのかも知れない。

 相談して正解だったというわけだ。


 あの記者については聡理さんが引き続き捜査してくれるということなので、俺からも改めてお願いしておく。



「わたくし達はICPOの方々と一緒に警備任務へと移行しますわ」


 そう言って聡理さんとエレーニアは離れて行った。

 二人が向かう先に小善氏もいたので軽く手を振っておく。


 会議場の警備は小善氏が指揮しているようだ。


 最強の結界術師である小善氏が守ってくれるのなら会場の警備は万全だろう。

 例えミサイルが撃ちこまれようと小善氏が問題なく防いでくれそうだからな。


 そんな感じで警備の状況を見つつ俺達は会場の入り口へと進む。



 今度はアイシスさん達に出会った。

 リレ局長も一緒だ。


 サミットに参加するだけあって二人ともきちんと正装を着ていた。

 リレ局長は見た目が小学生なので、何を着ても可愛いとしか言いようのない姿になっていたが。


「やっほー。薙阿津ちゃんお久しぶり。あとセンちゃんもまだ生きてて良かったよ。サミットの度に今年は寿命で死んじゃってるんじゃないかっていつも心配してるんだからね」


 リレ長官は毒舌が絶好調だった。


 セン長官は確か七十八歳か。

 魔族化もしていないので確かにいつ死んでもおかしくはない年齢だ。


 そういう年齢のセン長官に寿命の話を振るからこそ、リレ局長の言葉はひどい暴言だった。


「リレ局長も、あいかわらず元気が余っているようで良かったですわ。今回のサミットでは管理局の管理責任が問われると思い心配していましたが、どうやらそんな必要もなかったようですね」


 リレ局長に暴言を吐かれてもセン長官は丁寧に応対していた。


 やっぱりこの人は一味違うな。

 他のババァ連中は軒並み若作りしすぎだったりキャラ濃すぎだったりするのだが、セン長官だけはまっとうに老成している感じだった。


「ま、今回のサミットの主役は妾達だからね。薙阿津君も楽しみにしてていいよ。今年はとっておきの提案も用意してきたんだから。首脳連中がどんな反応するのか今から楽しみだよー」


 そう言ってリレ局長はアイシスさんと一緒に会場へと消えた。


 今年の国連サミット、始まる前から不穏な空気が漂いまくっている。



 会議場の中には他のEXランク達も集まっていた。


 太郎さんは異世界人協会長官の護衛。

 カーヴェルさん、ハッカさん、それと暗殺者の時雨 時昌は各国首脳の護衛だ。


 本当にEXランクが勢ぞろいしていた。

 もっとも参加者はEXランクの数より多いのでSランクの人間なども護衛として会議場に入っている。


 Sランクで目に付く人間というと……国連事務総長の護衛者が異様な空気を醸し出していた。


 まるで拘束衣みたいな変な服を着てさらに仮面まで被っている。

 全身がくまなく隠れていて素肌が全く見えない。

 性別すら判断つかないようなとにかく異様な格好をした奴だった。


 そんな感じで事務総長の護衛者がとにかく目立っていたのだが、他の護衛者達も軒並み強そうな感じだ。

 これだけのメンツが揃っているとテロの心配などはどこかに吹き飛びそうな感じだった。


 中にいる人間達の方がはるかに危険すぎる。

 世界一決定戦でも始めるかというような物々しい雰囲気の中、国連サミットは幕を開けるのだった。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「ですから、通信事業の民営化は認める訳には行きません。そもそも電話は現在世界中で無料ではないですか。それをわざわざ民営化し料金を徴収して、一体誰が得をすると言うのですか」


 開始早々会議は紛糾していた。


 すぐ神獣の話になると思っていたがそうはならず、議場では管理局ではなく神器機関がやり玉に上げられている。


 緊張して会議を眺めていると隣に立つアイリさんが話しかけてきた。


「ま、この辺は毎年やってる恒例行事や。神器機関の事業はとにかく幅が広いけんね。超巨大な国有企業みたいな感じになっちまっとる。でもって各国の首脳としてはそこからなんとか利権を引きはがしたいわけや。ひいては国連そのものの弱体化も期待が出来るわけやしね。

 もちろんウチらの方かて民営化になんでも反対なわけやあらへん。この世界でも民営化の流れは必然やからね。でもあかんもんはあかんわ。守るべきとこはしっかり守りつつ、大丈夫なとこからちょっとずつ民営化してってるってのが最近のサミットにおける恒例行事になっとるね」


 とのこと。


 この世界の科学技術は、地球人が飛ばされてくるようになってから飛躍的な向上を果たしている。


 その最大の原動力となっているのが神器機関だ。

 地球発の技術は全て神器機関を通して実用化されていると言っていい。


 これはそのまま、地球の技術に関する特許などを全て神器機関が持っているということにつながる。

 そこから得られる利益は膨大で、神器機関は国連最大の収益源となっていた。


 ただし、各国政府からすればこれは実に面白くない。

 地球の科学技術を国連に独占されているような物だからな。


 そのため国連サミットにおいては神器機関へと非難が集中する。

 こうやって神器機関が責め立てられる流れは、もはやサミットでは恒例行事というわけだ。


「地球ではもう何十年も前に通信事業は民営化されておるではないか。神器機関はいつまで通信の独占を続けるつもりだ!」


「ですから、何度も言いますがこれは人命にかかわることなのです。電話を有料化などすれば、この世界に飛ばされたばかりの被召喚者はどうすればいいというのですか? 突然異世界に飛ばされて、一体どうやって通信会社と契約しろと?」


「そんなものは例外措置を取るなりなんなり、対処の方法はいくらでもあるだろう。神器機関の本当の目的は情報収集の方だろう。地球のエシュロンとかいうのをベースにした通信傍受システム。神器機関が世界規模での盗聴を行っていることはもはや周知の事実ではないか」



 なんていうか……真っ黒な会話が目の前で飛び交いまくっているのだが。

 これ、俺とかが聞いてていい話なのだろうか。


「当然やけど護衛者には全員守秘義務が課せられとるかんね。ここで聞いた話を外に漏らしたらあかんよ。あんた力はあるみたいやけど、一生逃亡生活なんかはしたくないやろ」


 アイリ副長官にくぎを刺されてしまった。

 どうやら俺は、とんでもない場所に足を踏み入れてしまったようだ。


 まあEXランクはこの場に全員集合している。

 俺が最強を目指す限りは遅かれ早かれ来るはめになる場所ではあったが。



 その後も神器機関が各国首脳から民営化を迫られる流れで会議は進む。


 通信事業の後はゲートポートの民営化などが議題に上がった。

 ついでに自家用車の解禁なども提案されたりする。


 これらも安全性がどうとか言って国連側が拒否していた。

 国連は通信だけでなく流通まで押さえ続けるのかと首脳の一人が怒っていたが。



 この会議、大きくわけると二つの勢力がぶつかり合っていた。

 国連機関の幹部達と、各国の首脳陣だ。


 各国政府と国連とで利権の綱引きをやってるという感じか。



 その後も会議は紛糾したが議題が俺が聞いても分からない物へと移っていった。

 魔道具と機能が競合する電化製品がどうとかなんとか。


 とにかく分からない上に興味もないような話が続いていた。

 そのため午前中の後半はほとんど話も聞いていない。


 そんなことより神獣対策について議論しろよとしか思えなかった。

 こっちは人命がかかってるんだ。

 どう考えても家電の話より神獣対策の方が大事だと思うのだが。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「いや、利権の話も重要だろう」


 昼食休みに愚痴ったら緋月に反論された。


「この世界においても経済は大事だ。自分たちの権利をしっかりと確保した上で、新たな利益を国へと持って帰る。彼らは国の代表として決して間違ったことは言っていない。もっとも国連側にだって同じく守るべき正義はある。そのぶつかり合いの中で、なんとか妥協点を探ろうと言うのがこの国連サミットなのだ。むしろこっちの方が主題だぞ。

 神獣の話などは、この二十年議題にすら上がらなかったのだからな。魔物対策についてサミットで議論されることの方が本来稀なのだ。もっとも……午後には確実に議論されるだろうがな」


 緋月の話はなんとなく納得出来るような出来ないようなものだった。



 とりあえず、俺はやっぱり政治家はいいやと改めて実感していた。


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