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(旧版)地球化異世界の銃使い  作者: 濃縮原液
第3章 国連サミット
37/50

06 インタビュー

 さらに一週間が過ぎる。

 ハッカさんが加わってくれたこともあり修行は順調だった。


 一日中修行ばかりしていて、仕事などは全くしていなかったりもするのだが。

 

 しかしお金の心配は全くなかった。

 玄武を倒した報酬がなんと十億円ももらえたからな。

 ぶっちゃけ一生遊んで暮らせる。


 装備を整える面においてもついに魔法銃を買える金額まで溜まっていた。

 だがいまさら市販の魔法銃を買う気にはなれなかったりもするが。


 神器機関で綾ちゃんが色々頑張ってるとも聞くからな。

 次に銃を替えるなら、綾ちゃんの作った銃に替えたいと思っている。


 まあとにかく、当分暮らすのに困らないだけのお金は持っているのだった。

 そのため、昨日まではひたすらに修行へと明け暮れていたわけである。



 ただし今日は別の予定が入っていた。

 週刊誌のインタビューだ。


 『玄武に止めを刺した神獣殺しの素顔に迫る!』とかいう感じで特集を組みたいとのこと。


 そのため、初めは緋月も含めた三人にインタビューをしたかったとのことだが、緋月は忙しいため却下、カーヴェルさんも面倒だから嫌だと断っていた。


 ちなみにカーヴェルさんは、断るついでに俺をいけにえに捧げていた。

 師匠命令で俺がインタビューを受けろとのこと。


 というわけで、今日がそのインタビューの日というわけだ。



 やってきた記者は若い日本人男性だった。

 被召喚者同士の方が話しやすいだろうという配慮もあったのかも知れない。


 カーヴェルさんの家のリビングで取材を受ける。


 インタビューはスムーズに進んだ。

 俺がこの世界に来てからの話や、銃撃強化の能力などについて話す。

 他に趣味の話なんかもしたりした。


 そうして一通り俺自身について話した後は、緋月とカーヴェルさんについても聞かれる。


 だがカーヴェルさんについては正直話せることは少ない。

 なんと言っても出会ってから日が浅いからな。


 さらに言えばカーヴェルさんは元からこの世界で有名だった。

 カーヴェルさんのこれまでの功績などについては記者の方がくわしかったくらいだ。


 当然、記者の方も俺からカーヴェルさんについて新しい情報が出ることは期待してはいなかった。


 記者の本命は緋月だ。


「神園 緋月さん。彼女も色々とすごいですよね。兵器局の局長に就任されたニュースがもちろん一番の驚きでしたが、その前の大量の種子類持ち込み騒ぎ。こちらは一般向けに報道されてはいませんが、業界ではかなり話題になっていたのですよ」


 とのこと。


 この記者……緋月について色々調べているなと最初俺は思った。

 だが話を聞くと、野菜の種の一件があったために緋月に目をつけていたという方が正しかったようだ。


 緋月関連のニュースとしては、局長就任については表だって報道されている。

 神獣を倒した際の映像については言わずもがなだ。


 だが、緋月が地球から色々持ってきたことについては小さなニュースにすらなっていなかった。


 こっちの方は……実は国連から圧力がかかっていたとのことだ。


 野菜の種はまだ一般に出回ると決まったわけではないからな。

 まずは増やすのに成功させなきゃいけないし、その上でこの世界の生態系に対する影響も考慮しないといけない。


 そのあたりがパスされる前に情報が世に出ることを上の連中が嫌ったということだった。


 ただし報道関係者はこの情報を得ており、そのため緋月の注目度は局長就任の前から高かったというわけだ。


「他に雑貨類なども持ってきていたという話ですよね。これはうわさですが……彼女は入念な準備をした上でこの世界に来たのではないかとさえ言われているくらいですよ」


 うわさというか実際そうなのだが。

 むしろそうでもなければあれだけ色々と持ち込んだりは出来ないだろう。


 だがこの辺に関しては俺はあいまいに答えていた。

 他人の個人情報について話すのは好きじゃなかったためだ。

 緋月のことなら緋月に聞いてくれと。


 そしてその後の記者の質問を聞いて、俺は緋月の情報をあいまいにして正解だったと思うことになる。


「それでですね。これも業界内でのうわさなんですが。もし準備してこの世界へと来たのなら、地球の情報についても持ち込んで来ているんじゃないかと言う話があるんですよ。例えば……百科事典サイトのダウンロードデータなどです」


 この言葉を聞いて、俺は一瞬で理解した。



 これが本命だったのだと。



 百科事典サイトの全データダウンロード版。 

 この世界においては、神器機関などには既に存在している。

 つまり、国連自体はこのデータを持っているということだ。


 だがこの世界には、国連の外の国が存在する。


 非国連加盟国。


 地球では、二十一世紀の現在ほぼ全ての国が国連へと加盟している。


 だがこの世界においては、約三割もの国が国連に加盟していないのだ。

 これはこの世界の国連が、異世界の人間である地球人主体で組織されたことと無関係ではなかったりもするのだが、ともかくこの世界には国連へと加盟せず、国連と敵対関係に近い国家が複数存在する。


 そしてそれらの国は、当然百科事典サイトのデータを利用することも出来ないわけだ。


 そういう国々にとっては、百科事典サイトの全データダウンロード版は喉から手が出るほど欲しい物だった。


 それらの事情を考えると、この記者の質問には慎重に答える必要があるだろう。

 まあ緋月が本当にデータを持ってきているのかどうかは俺も確かめてはいないのだが。


「うーん、とりあえずパソコンのたぐいはあいつも持って来てなかったな。確かに緋月は色々準備をしてこの世界に来たんだが、この世界がここまで発展しているのはあいつにも予想外だったんだよ。

 この世界の文明レベルが中世以下という前提で緋月は準備をしていたからな。つまり……そういう基準で準備したせいですぐ使えなくなる電子機器の類は逆に充実してなかったわけだ。この世界が中世だろうと問題なく使える種子類なんかが充実してたのもそういった理由だってことだな」


 こんな感じで適当にぼかして返答することにする。

 実際嘘をついているわけでもないしな。


「なるほど……異世界の存在を予見していたとしてもそれがどんな世界かまでは彼女にも予想は出来なかったと言うわけですね。……でもですよ、それならやはり現代知識はどんな形にせよ持って来るんじゃないでしょうか?

 例えばスマホでも予備のバッテリーを持ってくればある程度の期間は使えますよね。普段は電源を落として使用を必要最低限にすればかなりの長期間有効に使えるとは思いませんか」


 適当にぼかすだけではこの記者は引き下がりそうになかった。

 マスコミうぜぇぇと心の中で思ってしまう。


 実際……緋月はスマホの充電器も持って来ていた。

 しかも防災グッズの、手回しで何度でも充電できるタイプだ。


 人力でいくらでも充電できるからバッテリーの問題は解決させていたんだよな。

 故障とか他の問題は残るだろうが。


 そしてそれだけ準備していたということは、当然異世界でも緋月はスマホを使い続けるつもりだったというわけだ。

 だから俺の見立てではあいつがダウンロードデータを持っていないわけがないのだが。


 ……マジで面倒になってきた。


 いっそあいつなら持ってるんじゃないかとでも言ってやりたいと思ってしまう。

 だがそれをやると緋月に迷惑をかけることになるからな。

 あいつに対して多少なりとも借りを作るのは避けたいところだった。


 だからこの記者には……別の餌を与えてあしらおうと思う。


「記者さんの言うように、バッテリーまで準備すればスマホを使うことも可能だとは思うぜ。でも全部仮定の話だ。本人に聞けば済む話だが俺には興味ないしな。なんて言っても、百科事典サイトのダウンロードデータなら俺自身が持っている。だから緋月が持ってようといまいと俺には関係ない話なんだよ」


「えっ! 薙阿津さんがデータを持っているんですか!」


 すごい食いつきようだった。


 この記者……やっぱり怪しいな。

 報道関係者というのは、その性質上他国の工作員である場合も多いと聞く。

 この記者が国連非加盟国のスパイだとしてもなんら不思議ではないのだ。


 いずれにせよここはクギを刺しとく場面だろう。


「持ってるって言っても、中身を誰かに見せるつもりはないけどな。もちろん俺がデータを持ってるってことも記事には書かないでくれよ。百科事典サイトのデータみたいなやつは国連が厳重に管理してるってことくらい俺も知ってるからな。バレたら即没収だろ? こういうことを嗅ぎまわること自体記者さんにも問題あると思うぜ。神器機関あたりにでもこのこと話したらあんたしょっぴかれたりするんじゃねぇのか?」


 最後は少し脅すみたいになってしまったが、これくらいはやっておかないとな。


 そして通報自体はしっかりとさせてもらう。

 小善氏か聡理さん辺りにでも機会があったら話すつもりだ。


 小善氏の方はかなり忙しいそうだが聡理さんは比較的ヒマとも聞いているしな。

 ICPO(国際刑事警察機構)が動くような事態にはならないだろうが相談には乗ってくれるだろう。


 そんなことを考えつつ記者の方を見ると、さすがに記者も慌てている様子だった。


「いえいえ、もちろんこれは記事には書きませんよ、いやホント。これについてはただの知的好奇心です。被召喚者の方にもこれまで何人もインタビューしてきましたが、自ら準備して来た人などはあなた達が初めてだったものですから。あらかじめ準備をしていたのならこういうデータも持って来てるんじゃないかと思っただけですよ。

 でもまさか本当に持って来ていたとは驚きです。やはり薙阿津さんはすごいですね。戦闘能力でもすぐにEXランクにまで上り詰めるかと言うほどなのに、知識も充実しているとは。いや本当にすごいです」


 少々しらじらしい感じに記者は俺のことを褒めてきた。



 インタビューすべきこともすでにほぼ終わっている状態だったので、その後少しして取材は終わった。


「記事の方は出版する前にきちんと薙阿津さんに確認していただく予定ですので、内容に問題があればその場でおっしゃって下さいね。私は純粋にあなたのファンですから。薙阿津さんに迷惑をかけるつもりなどは微塵もありませんので。ではまたその時に」


 そんな感じで記者は帰って行った。



 インタビューを受ける分には困ることはないと思っていたのだが、思わぬところで神経を使わされてしまった。



 この世界、国連が世界をほぼ掌握していて表面上はかなり平和なのだが、裏では現在の体制に不満を持つ連中もいるという話だからな。


 百科事典サイトのデータには軍事技術に関する内容なども入っている。

 核兵器の項目なんかも普通に存在しているしな。


 まあ……百科事典の内容だけで核を再現できるかは疑問だが。

 この世界の技術レベルが高い以上その危険性もないとは言えない。



 国連上層部の日本人達は、この世界全体に対して非核三原則を適用している。

 地球における唯一の被爆国の人間として、『核兵器をもたず、つくらず、もちこませず』という日本の国是をこの異世界においても徹底させているのだ。


 だがそんな異世界の国是に、国連非加盟国が素直に従う理由がないからな。

 そういう国やテロリストなんかに、核兵器を作りうるかも知れないデータが渡ればやはり危険だろう。



 この世界にも闇は存在するのだと意識した上で、ヘタな行動は控えるようにしようと俺は心に誓うのだった。


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