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(旧版)地球化異世界の銃使い  作者: 濃縮原液
第3章 国連サミット
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05 神速の猫人

 カーヴェルさんの家に来て五日目。


 今日も朝からハッカさんがやって来ていた。

 今朝は俺達が朝食を食べ始める前に来たので普通に一緒に朝食をとる。


 話を聞くと、しばらく休みがもらえたそうだ。

 というか格闘家を名乗るハッカさんに休みとかあるのが謎だったが。


「一応今は国に雇われてっかんな。サミット一週間前には俺も護衛任務に入らなきゃなんねぇけど、それまでは結構自由だったりするんだぜ。だから俺様もお前らの修行に付き合ってやってもいいんだけど、どうする薙阿津?」


 とのこと。

 俺の返事はもちろんイエスだ。


 EXランクの一人と手合わせできるのは素直に嬉しい話だったからな。

 しかもこのハッカさん、速さだけならリレ局長より上だという話だ。


 つまりハッカさんに攻撃を当てられれば、リレ局長にも攻撃を命中させることは出来るということだ。


「まあ理論上はそうなるね。せっかくだから試してみるかい?」


「くっくっく。先に言っとくが俺様は銃弾よりも早く動くぜ? その上究極のEXランクだからな。好きなだけ撃って来ていいぜ」


 ハッカさんもノリノリで承諾してくれた。


 朝食を終えた後ありがたく銃で撃たせてもらうことにする。

 と言っても、最初は能力なしでの射撃だが。



 まずは拳銃で狙いを定める。


 今の所、俺は拳銃でリレ局長と戦うつもりだ。

 だから拳銃をEXランクに当てられるかどうかは大事な項目となる。


 だが、結果は散々だった。

 弾丸は一発もかすりすらしない。


 弾より速いというハッカさんの言葉は嘘じゃなかった。

 あきらかに弾を見てから避けている。


 これは結構ショックな事実だった。

 早急に対策を練る必要があるだろう。



 続いてサブマシンガンでの射撃も行う。


 拳銃と違ってこっちは弾幕だ。

 いくらハッカさんが速いとは言え、毎秒十発以上の弾丸を避けきることは物理的に不可能だろう。

 高速で動いても避けられないように俺が弾幕を張るからな。


 だがハッカさんはなんと……次は弾丸を素手でつかんでしまった。


「くっくっくっくっく。これがEXランクの実力だぜ? 俺は速いだけの男とか言われがちだけどよ。力だって決してないわけじゃないのさ。こんな豆鉄砲くれぇなら素手で掴むのも造作はねぇのよ」


 とのこと。


 銃弾を素手でつかむとか。

 まるで漫画の世界みたいな強さである。


「準備運動はこれくれぇでもういいだろ? 次は噂のユニークスキルを使ってみなよ。俺様は障壁だってしっかり強ぇかんな。遠慮しねぇでガンガン撃ってきていいんだぜ?」


 お言葉に甘えさせてもらうことにする。


 まずはまた拳銃からだ。


 銃撃強化能力。

 威力を上げるのが一番の特徴ではあるが、実は弾丸のスピード自体も上がっていたりする。


 これなら当たるかとも思ったのだが、ハッカさんは銃撃強化をのせた銃弾すら避けて見せた。


「へっ、な、なかなかやるじゃねぇか薙阿津。ちょっとだけ俺様も当たるかも知れねぇかと思ったぜ」


 いい線はいっていたみたいだが。


 銃撃は百メートルほど離れた位置から行なっていた。

 だからもっと近づいて能力を乗せれば、EXランクにも拳銃弾を当てることは不可能ではないと言う感じだろうか。


 検証としてはまあこんな所だろう。

 俺はそう思って切り上げようとしたんだが。


「へい薙阿津。能力込みのサブマシンガンは撃たねえでいいのかい?」


 いやハッカさん。

 さすがにそれは危険だと思うのだが。


 だがハッカさんは本気でやる気だった。


「薙阿津よぉ。俺様だって格闘家を名乗る以上は最強の男を目指してるんだぜ? つまりはだ。ガチで俺様とお前がぶつかる可能性だってあるってことだ。もちろん俺様は勝つつもりだぜ。だからよ、実戦だと思ってお前の本気を見せてみろよ!」


 ここまで言われては俺も引き下がるわけにはいかなかった。


 意識を集中してサブマシンガンをハッカさんへと向ける。

 一応……二丁持ちまではしていないが。


 まあリレ局長と戦う際もサブマシンガン二丁持ちはしない予定だ。

 片側は拳銃かナイフなどになる予定だからな。

 だからこちらの方がより実戦的とも言えるだろう。



 俺は軽めに魔力を込めて引き金を引いた。



 銃撃強化を乗せたサブマシンガンの弾幕さえハッカさんは避ける。

 だが俺もここで引くつもりは毛頭ない。


 ハッカさんがどう動いても避けられないよう弾幕の位置を調整する。


 避けられなくなればハッカさんは受けに回る。

 最初にサブマシンガンを掴んだのと同じ要領でハッカさんは弾丸を掴んだ。


 だが――


 弾に触れた瞬間、ハッカさんが手をガードしていた手袋がはじけた。


 ハッカさんの顔色が変わる。

 弾丸を掴むことはやめ、手の甲ではじいて向きを変えるように作戦を変更した。

 そうして一秒ほどハッカさんは俺の攻撃を凌いでいたのだが。


「待った待った! ターイムっ! 死ぬ! 死ぬからマジで! やめてー!」


 ハッカさんの叫びを聞いて俺はすぐに銃を収めた。


 結構ギリギリだったかも知れない。

 あやうく人を殺してしまうところだった。


「ハッカさん。その……大丈夫か?」


「あ、ああ……ちゃんと生きてるぜ。でもすげぇな薙阿津。まさかここまでとは思わなかったぜよ。さすが……神獣殺しの名は伊達じゃねぇってわけだな」


 ハッカさんに大きな怪我がなく俺は安堵する。

 手からは多少血が出ていたが。


「……やっぱり薙阿津さんは強いですね。EXランクのハッカさんさえ圧倒しますか。というか……EXランクを倒せる時点で薙阿津さんの実力はSランクをあきらかに超えていますが」


 アイシスさんがするどい指摘をしてくる。


「いっそなっちまうか? EXランク。俺様も推薦してやるぜ」


 ハッカさんからもお墨付きをもらってしまった。

 だが俺が目指す目標はEXランクになることじゃない。


 あくまで世界最強になることだ。

 だから正面からリレ局長を倒せなければあまり意味はない。

 相手がリレ局長だと、強化したサブマシンガンの弾幕さえ受けながら接近してくるはずだからな。


 そしてそのリレ局長対策としての修行も続けてはいるが、銃なしの接近戦だと俺はBランクのシンと互角になったりしてしまうのだ。

 銃撃強化能力だけなら最強の自信もあるのだが、総合力ではとてもEXランクを名乗る気にはなれなかった。


 そういうわけで、ハッカさんの計らいは丁重にお断りさせてい頂いた。



 まあランクの話はおいといて、弾を当てるだけなら世界最速のハッカさんにも当てられることが証明されたわけだ。

 それが分かっただけでも一つの収穫ではあるだろう。


 こうして午前中の修行は終わった。




 もちろん午後も修行を続ける。


 次はハッカさんとアイシスさんが戦うことになった。

 俺達は見学だ。


「普通にやったらすぐにハッカが勝っちまうからね。アイシスの準備が終わった状態で始めてもらうよ」


「……準備終了しました。≪ライトソード・ハンドレッド・螺旋防御陣≫。本来ならこれを展開し終える前にハッカさんにはつぶされてしまうはずですが。……この状態までこられれば私もある程度は戦える自信があります。EXランクとどこまで戦えるのか……全力でいかせていただきます」


「おういいぜ。猫人最強の力、たっぷり体感させてやんぜ!」


 こうしてハッカさんとアイシスさん、二人の猫人の戦闘が始まった。


 俺達はアイシスさんの螺旋防御陣にまだ手も足も出せずにいる。

 それをハッカさんがどう破るのかは非常に興味があったのだが。


「ぬるいぜ! ≪マッスル・インパクト≫&≪マッハ・ラッシュ≫!」


 ハッカさんはアイシスさんに向かって物凄い勢いでパンチを繰り出す。

 より正確に言うと、アイシスさんの周りに展開する光剣を片っ端から素手で折っていった。


 そして十秒もかからない内に、ハッカさんは百本あったアイシスさんの光剣を全て破壊してしまう。


「……参りました」


「まっ、ざっとこんなもんだな」


 物凄い力押しだった。

 アイシスさんは見るからに落ち込んでいる。


「嬢ちゃんも全然弱いなんてこたねぇけどよ。でもやっぱ嬢ちゃんは魔道士系だわ。接近戦はあんまやんねぇ方が身のためだぜ。俺と嬢ちゃんにそんなに実力差があるわけじゃねぇかんな。今の光剣だって、防御なんかに使わねぇで百本全部攻撃に使ってたら俺様の方が串刺しにされてたかも知んねぇんだしよ」


 とのことだった。


 俺達は接近戦でもアイシスさんに手が出なかったのだが、ハッカさんから見ればやはりアイシスさんは魔道士系とのこと。


 確かに百本全部攻撃に回せばハッカさんに対してもアイシスさんは今より戦えそうには思えた。


 そしてそれは、この日の最後に証明されることとなる。



「へいへい、アイシスちゃんよぉ。うわさのサウザンドって奴。俺に向かって撃ってみなよぉ」


 ハッカさん……あんたまた死ぬ気か?

 そう思ったが時すでに遅し、ハッカさんだけでなくアイシスさんも殺る気だった。


「……≪ライトソード・サウザンド・オールレンジアタック≫」


 千本の光剣がハッカさんの周りを半球状に取り囲む。


 これ……どこにも逃げ場がない上に迎撃も物理的に不可能じゃないか?

 ハッカさんの手は二本しかついていないのだが。


 ハッカさんがこれをどう切り抜けるか俺は期待もしていたのだが。


「あ、ダメだわこりゃ。俺死んだかもしんない」


「ハッカさーんっ!」



 ハッカさんは、千本の光剣に串刺しにされた。



 まあアイシスさんも本気じゃなかった……というかサウザンドを半球状に展開する時点で魔力をほぼ使い果たしていたのだが、ハッカさんもかなりのダメージを受けてその場に倒れてしまった。


「ふっ……嬢ちゃんもやるじゃねぇか。やっぱ……魔道士系に大魔法を撃たれるとやべぇな。撃たれる前に確実につぶさねぇと。マジでぽっくりいっちまうところだ……ったぜ……」



 ハッカさん……あんた死に急ぎすぎだよ。


 俺の銃撃で一度死にかけた後だったのにハッカさんは全く懲りていなかった。

 実力は申し分ないのだが、ハッカさんはとにかく無茶をしすぎな猫人だった。


「こいつは本物のアホだからね。でもこんなアホやりつつもEXランクにまで上り詰めた実力は本物さ。意外としぶといというか、悪運なんかは強いのかも知れないねぇ」


 とのこと。

 ぶっちゃけ今のアイシスさんの攻撃でも完全に決まっていたら危なかったかも知れない。


 ともかくハッカさんが死ななくて本当に良かった。



 結局この日はハッカさんも動けなくなってしまったため、俺がハッカさん、パンネがアイシスさんを背負って家へと戻る。




 翌日からの修行にもハッカさんは付き合ってくれた。

 身体強化のコツなど色々と教えてもらう。


 ハッカさんはバリバリの戦士系だ。

 そのハッカさんが修行に加わってくれたおかげで身体強化系の修行は一気にはかどりそうな感じだった。



 サミットまでは一カ月程度しかないが、それまででもかなり強くなれそうな手応えを俺は感じていた。


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