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(旧版)地球化異世界の銃使い  作者: 濃縮原液
第3章 国連サミット
32/50

01 神器機関・兵器局局長 就任会見

 神獣――玄武を倒してから一週間あまり、俺とパンネ、シン、アイシスさんがカーヴェルさんの元へと来て、既に三日が経っていた。


 俺達は今、カーヴェルさんの家でテレビを見ている。


 この世界の国連機関の一つ、三種の神器再現機関。

 その神器機関に、新たに『兵器局』という部局が出来るというニュースだ。



 今回の対神獣戦において、国連は世界に対して地球製の軍事技術の威力を知らしめることに成功した。


 物理兵器のみで倒すことこそできなかったが、M.O.A.B(大規模爆風爆弾)を始め、現代兵器が魔物に大打撃を与える様子は、映像として世界中に放送されていたのだ。


 ちなみに俺と緋月、カーヴェルさんが止めの銃撃を放つ場面もバッチリと放送されていた。

 まあ俺は目立って困ることはないからいいんだけどな。


 とにかく今回の対神獣戦において、現代兵器の有用性は世界に知れ渡ることとなったのだ。


 この世界における現代兵器は、神器機関の銃火器部門と言う一部門が細々と再現を行なっていたのだが、対神獣戦の結果を受けてその銃火器部門は発展的解消、その規模を拡大し、兵器局として新たに生まれ変わると言うことだ。


 まあこれだけなら、俺やみんなが集まってまで見るニュースでもないんだが、俺達にとって一番の出来事は、その兵器局の初代局長となる人物の方だった。



『ではこれより、新たに新設された兵器局の初代局長へと就任する、神園かみぞの 緋月ひづきの就任記者会見をおこにゃ……行わせていただきますわ』


「あっ、エレーニアちゃん噛んだ」


 テレビの中には見知った人物たちが映し出されていた。


 エレーニアはすごく緊張している様子だったが、緋月はそうでもないようだ。

 いつものドヤ顔こそしていなかったが涼しげな表情をしていた。


『私がこの度新設される兵器局の初代局長に任命された、神園 緋月です。この世界にはまだ来たばかりですが、すでに私の顔を知っておられる方は多いかも知れません。玄武を銃撃した際の映像が世界中で放映されているようですので』


 緋月の就任会見はスムーズに始まった。

 やはり世界の頂点を目指すとか言うだけあって、こういう場面でひるんだりはしないようだ。


 会見はそのまま滞りなく進行していく。


『先々週に起きた二十年ぶりの神獣襲来。これにより人類は大きな損害を受けました。ですがこの戦いは、地球の最新兵器の有用性を世に知らしめることにもなりました。

 基本的に、銃火器の類には魔力を乗せることが出来ません。そのためこの世界においては、銃火器はあまり重視されることがありませんでした。ですがその間も異世界である地球では、日々技術の進歩が継続されていました。そして神器機関においても、銃火器技術の再現は継続して行われ続けていました。

 そうしてこの世界において大きな戦いのなかったこの二十年の間に、物理兵器は戦場において有用となるレベルにまで進歩していたのです。もちろん、進歩したと言っても基本はCランク能力者程度の力しかありません。ですが銃火器には大量生産できるという強みがあります。

 これからの時代は、Dランク以下の人間も銃火器で武装することにより、全員がCランク相当の戦火を上げられるようになるでしょう。他にも最新式の戦車や戦闘機など、様々な兵器が新設される兵器局により再現されていく予定です。

 この世界における戦争の形が、これから大きく変わるということを私はここに宣言します。これらの変化は、地球において数々の悲惨な結果を残しています。ですがそれにより、地球では大国間の戦争が起こりにくい状況へと変化しました。この世界においても兵器局により造られる兵器群が抑止力として機能し、より平和な世界が訪れることを我々は切に願っています』


 そんな感じで、よどみなく緋月の就任記者会見は終了した。



 だけど、まさか最初から局長スタートとはな。

 しかも新設される兵器局は、規模だけで言えば未開領域管理局以上の組織になる予定だって話だ。


 国連内の立ち位置で言えば、緋月はリレ局長と同等かそれ以上の地位をこれから手に入れるということだった。


 ここに来て、緋月は一段飛ばしてきたなといった感じだ。



 この世界において、緋月はある意味ライバルだと俺は思っている。

 目指す方向が違うから直接競い合うようなことこそないが、どちらが先に目的を達成させるかは、ある意味競争だと俺は思っている。


 そしてその点に関して、俺は緋月より先に進んでいると思っていた。

 玄武を倒した時点で俺はSランクにまで上がっているからな。

 上にはもうEXランクしか存在しない。


 ここから先が一番きついとカーヴェルさんは言っていたが、それでも目的にかなり近い所まで来ているのは確かだ。


 それに対して緋月はただの一般人。

 神器機関の下っ端から初めて、どう上手くやっても俺が世界最強になる方が先だと思っていたんだけどな。


 まさか下っ端時代を飛ばして来るとは思ってなかった。



「銃火器部門の主任だった男。名前は忘れたがそいつがちょうど処分されたところだったからね。緋月はそこにうまく滑り込んだというところかね」


 緋月の局長就任に関してカーヴェルさんが考察を初めていた。


「……でもおかしいです。いくら局長候補が更迭されたと言っても、神器機関に入ったばかりの緋月さんを初代局長に据える人事はさすがに疑問です」


 アイシスさんも考察に加わる。

 アイシスさん、この人も基本は出来る人だった。


「神園 緋月が局長に選ばれたのは……言わばマスコットみたいなもんだろうね。

 今回の対神獣戦、これまでに比べれりゃすこぶる上出来だったんだが、それでも相当数の死者が出た。その責任をおっかぶせるために上は銃火器部門を切ってるからね。これから大きくなる銃火器部門をコントロール化に置きたい思惑もあったんだろうけど、その処置のせいで銃火器部門自体の印象も多少悪くなった。

 だからその悪印象を拭う意味も込めての、今回の発展的解消なんだろうけどね。でも名前を変えただけで悪印象を全部忘れるほどには、民衆だってバカじゃあない。そこで上の連中が考えたのが、今回の局長就任劇なんだろうさ。

 あたしと薙阿津、そしてあの緋月は、今回の対神獣戦の英雄だってことになっている。しかも使ったのが銃というのも都合が良かったんだろうね。新しく生まれ変わる兵器局の象徴として、銃で神獣を倒した英雄をそのトップに据える。銃火器部門の悪印象を拭うには、まさにうってつけの人事だったんだろうさ。

 さらに言えば、緋月がこの世界に来たばかりってのも上にとっては都合がいい。奴らは兵器局を自分達のいいなりにしたいはずだからね。この世界に飛ばされて来たばかりの被召喚者なら、どうとでも好きに操れると考えているんだろうさ」


 やはり国連の上層部は、そうとうに真っ黒なようだった。

 だが全てがカーヴェルさんの言う通りなら、上の連中は近い内に後悔することになるだろう。


 緋月がいいように操り人形になるわけがないからな。


 こうして様々な思惑が重なる中、緋月の頂点への道は予想以上にスムーズに進行していこうとしていた。


 俺も負けないよう、気を引き締めていこうと心に誓う。



「さ、知り合いの昇進を祝うのは後でもできるだろ。昼飯も食い終わったところだし、午後の修行を始めるよ」


「あ……私シンを学校まで迎えに行ってきます」


「じゃあお皿は私が洗っておくね」


 なんというか……こっちの方は驚くほどに平和な感じだった。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 カーヴェルさんの家へと来てもう三日になるが、まだ本格的な修行は始まっていない。


 初日は引っ越しで忙しかったし、二日目の昨日も同様だ。

 カーヴェルさんから修行を受けると言っても、その間仕事をしないつもりはないからな。


 このフィントニア国にある傭兵ギルドへの登録手続きなどで二日目は丸ごとつぶれていた。


 ちなみにパンネやアイシスさんの所属は変わっていない。

 どちらも長期休暇扱いとなっているそうだ。

 そのため何か大きな出来事があれば、所属機関からの応援要請が来る場合もあるとのことだ。


 そしてシンに至っては今でもニムルスの中学校に通っている。


 この世界……国連が強力な体制で世界を支配しているために国の役割は弱い。

 個人情報の管理なども国連が全て行なっているので、国ごとには住民登録を行う必要もないのだ。


 そして国連加盟国内を移動するならパスポートもいらない。

 国連発行のIDカードで、国内を移動する感覚で国をまたぐことが出来るのだ。


 そして移動そのものはゲートで一瞬で出来る。

 だから大陸の北に位置するフィントニアから南のニムルスに通うのも不可能ではなかった。


 まあ不可能じゃないだけで金とか色々かかりそうではあるのだが。


 経度がほぼ一緒で時差が一時間程度しかないのは救いと言えるだろうか。

 緯度はだいぶ違っていてこっちの方が寒いため、そこそこ気温差はあるのだが。

 まあ気温差程度は魔法障壁でどうとでもなるのでこっちも問題はなかった。



 そんな感じで、カーヴェルさんの家に来て二日でだいたいの生活準備は整えられたと言っていいだろう。


 そして三日目の今日から本格的に修行を始める予定だったわけだが、今日になって緋月が記者会見をするとか電話してきたので、実質三日目の午前もつぶれてしまっていたのだ。



 というわけで、本格的な修行はこれから始まるのであった。


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