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(旧版)地球化異世界の銃使い  作者: 濃縮原液
第2章 神獣襲来
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19 新たな旅立ち

 神獣戦から一週間が過ぎる。

 この一週間は色々と忙しい日々を過ごした。


 勲章の授与やパーティーなどは神獣戦の四日後に一日で済んだのだが。

 それ以外の日も色々な人がやって来たりしてすごくにぎやかだった。


 まあ……だいたいの来客は他の仲間に丸投げしていたけどな。


 他にも緋月が持ってきていた野菜の種を運んだりなどの雑務もこなす。

 これは本当は、神獣が出現した日に小善氏が運ぶ予定だったものだ。


 実は小善氏がこのことをすっかりと忘れていたらしく、聡理さんに怒られつつ引っ張ってこられたりしていたが。


 後は、太郎さんやアイシスさんが所属する組織へと戻ったことも大きなことと言えるだろう。


 野菜の種は三日前に運んだのだが、その際にアイシスさんもついていきニムルス国を離れた。


 太郎さんも、二日前に異人会本部の方へと戻って行った。



 今異人会のニムルス支部にいるのは、俺、緋月、綾ちゃん、パンネ、エレーニアだ。


 だが、この俺達も明日にはニムルスを旅立つ。



 緋月、綾ちゃん、エレーニアは神器機関へ。

 そして俺とパンネは弟子入りするためカーヴェルさんの元へと向かう。



 実はこの一週間の間に、カーヴェルさんへ弟子入りするメンバーが増えていた。


 まず一人はパンネだ。

 もちろんこれはいい。


 パンネは以前にもカーヴェルさんに弟子入りしていた時期があるそうだしな。

 そして、パンネはもう一度修行してもっと強くなりたいと言っていた。


 パンネは対神獣戦においてしっかりと活躍はしていた。

 それでも、やはり戦闘要員として数えられないのは嫌なようだった。


 それに修行をすれば、アイテムボックスの能力自体も向上したりするそうだ。

 アイテムボックスに入れられる最大量が増えたり、出し入れできる物の大きさが大きくなるかも知れないとのこと。


 そんなわけで、修行メンバーの二人目はこのパンネだ。



 そして、シン。

 どこから話を聞きつけたのか、シンもカーヴェルさんに弟子入りしたいと言い出した。


 これもいい。


 シンは、今回の対神獣戦で力のなさを嫌と言うほど味わっていた。

 そのくやしさには相当のものがあるだろう。


 シンは本気で強くなりたいと願っていた。


 俺達と一緒に修行して、一番伸びるのはシンじゃないかとも俺は思う。

 だが強くなりたいのは俺も同じだ。

 シンに負けたりしないよう、俺もさらに強くなろうと心に誓う。


 そういうわで修行メンバーの三人目はシンだ。



 と、ここまでは良かった。

 問題は四人目だ。



 なぜかアイシスさんまで修行についてくると言い出した。


 Sランクなら既に十分すぎる強さだと俺は思うんだけどな。

 さらに言えば未開領域管理局の仕事はいいのかというのもある。


 だがこれには、リレ局長の意向も入っているとのことだった。


「……私はあの神獣戦で、玄武と相対する前に魔力切れをおこすという失態をさらしてしまいました。管理局には……弱者は不要というのがリレ局長の考えです。だから私は長い休暇を与えられてしまいました。リレ局長には……EXランク相当の力をつけるまで戻って来るなと言われています」


 なんか色々とひどかった。


 Sランクの時点でアイシスさんが弱者なんてことはありえない。

 実際アイシスさんは、管理局でもリレ局長に次ぐ二番目の実力者だと言う話なのだ。


 それに、あの対神獣戦でアイシスさんが上げた戦果も馬鹿には出来ない。

 アイシスさんはあの戦いでロード種三体を葬っているが、これはSランクというよりも、むしろEXランクの戦果に近いのだ。


 玄武と戦う前にアイシスさんが倒れたのは事実だが、それとアイシスさんの強さとは全く関係のない話だった。


 これはひどいと思って俺はカーヴェルさんと電話で話したのだが、この件に対するカーヴェルさんの見解は俺とは違うものだった。


『リレ局長だって、何もアイシスが弱いなどとは思っちゃいないさ。むしろ逆だろ。アイシスはリレ局長の一番のお気に入りだってもっぱらのうわさだからね。ま、だからこそ今回の神獣戦でアイシスがヘマ打ったのには納得いかない面もあったんだろうさ。でもね、一番笑えるのはその条件の方だろ。EXランクの力をつけるまで帰って来るなとかさ。普通なら単純に帰って来るなって意味になるんだろうけど、リレ局長はそう長い時間をかけずに、アイシスがEXランクに上がれると本気で思っているということなのさ』


 つまりは、リレ局長はアイシスさんに期待をしているからこそ、修行に出してさらに力をつけさせようとしているということだった。


 実際、アイシスさんがあの戦いで放った≪サウザンド≫。

 あれは本来EXランクでなければ撃てない威力の魔法だったそうだ。


 その魔法を無理に使ったからこそあの場でアイシスさんは倒れたのだが、それでも魔法は発動した。


 いくら感情が乗ろうとも、この世界では本来の数倍の力が出たりはしない。

 だから、曲りなりにでもあの魔法が使えたアイシスさんは、既にEXランクに近い力を持っているということだった。


 恐らく数か月も修行をすれば、アイシスさんはEXランクの力を得るだろうとカーヴェルさんは言っていた。


 ここに来て思わぬライバルの出現である。


 ランク的には神獣戦の後俺もSランクにはなっているのだが、俺を突き放すようにアイシスさんはEXランクに上がるつもりだ。


 まあ先に上がられたところでEXランクより上はない。


 遠くない内に俺もEXランクに上がるつもりだからいずれ追いつける話ではあるのだが、それでも先を越されるというのは色々と思う所がある。


 シンに追いつかれないようにすることより、アイシスさんに先を越されないようにするのが修行の目標になりそうな感じだ。


 ま、競う相手がいるっていうのも悪い話じゃないんだけどな。



 結局そんなわけで、俺、パンネ、シン、アイシスさんの四人で、カーヴェルさんの所へは明日弟子入りをしに行くこととなっている。


 そのため、今日はシンとアイシスさんもこっちにやって来る予定だ。

 もちろん太郎さんもやってくる。

 ゲネスさんも動けるくらいには怪我も回復してるしな。


 そんなわけで、今日は小さいながら異人会で俺達の送別会を行うことになっていた。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「若者達の栄えある門出を祝って、乾杯」


「乾杯!」


 一番の年長者であるゲネスさんの司会で送別会は進んだ。

 というか、俺、緋月、綾ちゃんの被召喚者組に加えて、本来異人会メンバーのはずのパンネまで送られる側に入っているからな。


 このメンバーの中で、ニムルスの異人会に残るのがゲネスさんだけだった。



「若者たちが旅立って行くというのは、やはり何度経験しても寂しいものだな。しかし、それ以上に喜ばしいことだ。この異世界人協会には、それこそ毎週のように新たな被召喚者達がやってくる。それと同時に、こうやってここを去る者を送り出すのも恒例行事だ。

 だがその中でも、君達は特に記憶に残る者達だったよ。君たちのことはこれからもずっと忘れないだろう。何かあったらいつでも気軽に訪ねてきたまえ。異人会は被召喚者達が新たな場所へと旅立つまでの、一時的な住まいに過ぎない面もある。だがここが君たちの始まりの場所であると思ってもらえたならば、それ以上に嬉しいことはない。

 これからも、君たちの前には様々な苦労や困難が待ち受けるだろう。だが、君達ならそれらを乗り越えられると信じている。旅立て、若人達よ! 君達の前には未来が広がっている!」


 ゲネスさんは、感極まって涙を流しているようだった。

 だいぶ飲み過ぎてる面もあるのだろう。

 俺達は未成年なので酒の類は飲んでいないが。


 だが俺達にも、それぞれ心に来るものはあった。


「……今日で、薙阿津さんや、パンネさん達とはお別れになっちゃいますね」


 綾ちゃんが話しかけてくる。

 ここにいるほとんどのメンバーがここを旅立つが、旅立つ先は一つではない。


 カーヴェルさんの元へと修行に行くメンバーと、神器機関に入るメンバー。

 大きくはこの二つに分かれる。


 緋月、綾ちゃん、エレーニア。


 この三人とは、ここで一つの別れとなるのだ。


「離れ離れになるって言っても、二度と会えなくなったりするわけじゃないけどな」


 俺は軽めにそう答えたが、やはり俺自身も寂しい気持ちは込み上げて来ていた。


 この異人会に対しても、いざ離れるとなると色々思うところがある。

 時間にすればひと月にも満たない期間だったが、色々なことがあった気もする。


 そしてそれ以上に、様々な出会いがあった場所でもあった。


 明日にはここを旅立つが、ここが始まりの場所であり、言ってみれば、この世界での家みたいな物とも言えるかも知れなかった。


「ふふっ、薙阿津にしては珍しく哀愁たっぷりな顔をしているな」


 そういう緋月は相変わらずのドヤ顔だった。

 こいつには別れの寂しさなんてものは存在しないのだろうか。


「私は……三人の中でもここにいる時間が一番短かったからな。だが私にも、もちろん寂しい気持ちはある。だがこれからだ。私は事を成すためにこの世界へと来た。明日から、それが本格的に始まるのだ。それは薙阿津も同じだろう? 今日は新たな旅立ちを互いに祝おうではないか」


「ああ。そうだな」


 そう言って、俺は緋月とグラスを合わせた。

 入っているのはジュースだが別に酒の必要はないだろう。



 異人会を離れるのは寂しいが、ここから、俺達の道は始まるのだ。



 俺と緋月は、むりやりこの世界へと飛ばされて来たわけじゃない。

 運の要素は大きかったが、俺達は自ら望んで異世界までやってきたのだ。

 そしてそれぞれに、この世界で成したいことを持っている。



 緋月は神器機関へと入り、そこから世界のトップを目指す。

 俺はカーヴェルさんへと弟子入りし、そこから世界最強を目指す。



 明日、俺達はこの国を立つ。

 そしてそこから、それぞれの新たな道が始まって行くのだ。


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