STAGE 7
「あの、ところで皆さんどうですか、コーラス隊の活動のほうは? 先日、またコンサートあったんですよね?」
俺は笑顔を作って、5人のおばさん達に尋ねた。
「もう大盛況よ!」
「あたし達を舐めてもらっちゃ困るわ!」
「涙流して感謝されたわよねー」
このおばさん達は5人でコーラスグループを結成していて、障碍者施設や老人ホームなどを回ってミニコンサートを開くという活動をしている。
いわゆる音楽ボランティア活動というやつだ。
リーダー格の黒田さんは60代、夫に先立たれ、息子さんたちも独立して今は1人暮らし……ただし、末期の子宮癌で、医師から余命6ヶ月と言われている。
余命6ヶ月の末期癌といえば、肉体的には相当辛いはずだが「病院で寝ているのは性に合わないから」と言って延命治療を拒否し、自分から退院してこんな活動をしている。
副リーダー格といえる井川さんも、やはり60代。
昔、経済的に苦しかった頃(今も苦しいようだが)、夫と娘、それに同居していた夫の両親がそろって一家心中してしまい、嫁の自分だけは誘われずに置いてけぼりにされたという、すさまじい経歴の持ち主だ。
もう1人のメンバー、樺山さんは50代、愛宇宙教に入信する前は、有名な某大手教団の信者だったが、その団体が内部でリンチ事件などの問題を起こし、教祖以下幹部が逮捕されたことにより失望し、うちに宗旨替えした。
前の教団時代に、教祖の「霊感」によって結婚させられた旦那さんがいたが、今は離婚している。
他に、富村さんは、3人の息子さんが全員ニート。
最後の1人、朽木さんは旦那さんの浮気とDVに悩んでいる。
彼女達に言わせると、このメンバーで障碍者施設などを回るのは「エールの交換」なんだそうだ。
つまり、こんな彼女達がステージ上で自分達の体験を明かし、元気よく歌う姿を見て、施設に入所している人達は「こんな人達もいるんだ、しかも元気に歌ってるし」と励まされ、また、彼女達も、歌を聴いてもらうことで、エネルギーをもらえるのだという。
実際、俺も何回か彼女達のステージを見ているが、聴いている人が感激の涙を流し、コンサート終了後に、車椅子の人、杖をついた人、ストレッチャーに寝かされ点滴を打たれている人達から囲まれて、泣きながら握手を求められたりしている姿を、何度も目にしている。
彼女達のグループ名は、その名も「LSEコーラス隊」という。
我が教団の正式名称である「愛の大宇宙エナジー教団」から「Love(愛)」「Space(宇宙)」「Energy (エナジー)」の頭文字を取っているわけだが、対外的には、「ラブ」「すごい!」「エクセレント!」の頭文字だということになっていて、愛宇宙教とのつながりは公表していない。
リーダーの黒田さんによると、
「変に思う人もいるからね」
ということで、まあ、仕方ないのかな、と思う。




