STAGE 6
一般信者さん達の集まる談話ロビーは、広さ40畳ほどの、カーペット敷きのだだっ広い部屋だ。
部屋の入り口で靴を脱ぐようになっていて、スリッパに履き替えて上がる。カーペットの上には、小さいテーブルがいくつかと、クッションなどが置かれていて、信者さん達が思い思いに、座ったり、寝そべったりして、くつろげるようになっている。
部屋の隅には無料のお茶とお湯、水などのサーバーと、紅茶やハーブティーのティーバッグ、使い捨てのプラスチックコップなどが置かれていて、誰でも自由に利用できる。
さらに親父がパワーを込めたという「超絶波動水」なる液体(実際はただの水道水)が出てくるウォーターサーバーまであった。
そして壁際には50インチのテレビが置かれていて、毎正時には電源が入れられ、15分間、親父の法話が流れるようになっていた。
今、談話ロビーには10人ほどの信者さんがいて、それぞれテーブルを囲んで談笑したり、応対している出家信者相手に悩みを打ち明けていたり、壁際に1人うずくまってじっと膝を抱えていたり……、体調が悪いのか備え付けの毛布をかぶって寝転がっている人もいる。
こうしてこの談話ロビーを訪れる信者さんは、だいたいが常連さんで、こちらとも顔見知りの人がほとんどだ。
「あら、副教祖様!」
入り口近くのテーブルに陣取っていた、5人ほどのおばさんの集団が、こっちを向いて声をかけてきた。
「あ、こんにちは」
俺もお辞儀して挨拶する。
「まあまあ、丈太ちゃん、ここ座んなさいよ」
「やあね、黒田さん、丈太ちゃんじゃなくて、今は副教祖様よ」
「私達にとっては、丈太ちゃんでしょ」
「昔を知ってるからねー、可愛かったわねー、小さい丈太ちゃんは」
「丈太ちゃんは、どっちで呼ばれたいの? 丈太ちゃん? それとも副教祖様?」
「丈太ちゃんでいいです……」
俺はおばさん達のパワーにやや圧倒されながら、テーブル脇に座った。
「ほらほら、丈太ちゃん、これ食べなさいよ!」
「こっちのほうが、丈太ちゃんは好きじゃないの?」
おばさん達は持ち寄っていたお菓子を次々と勧めて来る。
俺が「副教祖」なる役職に就いたのはつい1年半ほど前、高校に入学してからのことなので、こんなふうに古くからいて、子供の頃から知っている信者さん達には、未だに「丈太ちゃん」扱いされてしまうのだ。




