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神の御許にて  作者: 日渡正太
第1話 神様のお仕事
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STAGE 4

「皆さん、インターネットはあと3年でなくなります!」


 談話ロビーへ向かう途中、2つ並んでいる集会室の前を通りかかると、そのうち第1集会室のほうの扉が開いていて、中から中年女性の大声が廊下まで響いていた。


「これを見てください、昨日の新聞です。大手銀行のコンピューターがハッキングされて、個人情報が盗まれたそうです。ニュースでご覧になった人はいる? ああ、結構いらっしゃいますね、今初めて知ったという人は、もっと情報に敏感になってくださいね」


 ああ、これは、あれだ……。

 俺は、半開きの第1集会室の扉をそっと押して中を覗いた。


「これは過去5年間の、インターネット関係の事件を切り抜いてスクラップしたものです。こんなにあるんですよ、皆さん! どう思いますか!?」


 壇上では太ったおばさんが、分厚い紙の束を振りかざして、大声を発している。

 それを真剣な顔をして聞いている信者さんが約20人はいるだろうか。 


「それだけじゃありません! インターネットはその匿名性をいいことに、他人の誹謗や中傷が平然と行われています。2○ゃんねるというのは、皆さんも聞いたことがあるでしょう? 学校の裏サイトというのは、皆さん知ってますね? 知らない人は遅れてますよ! そういうものがイジメの温床になっていて……あら、副教祖様、こんにちは」


 俺に気づいたおばさんが、壇上から挨拶してきた。


「こんちは、社長。どうそ、続けてください」

 笑顔で返す俺。

 おばさんは、そのまま信者さん達相手の講義に戻った。


「……というように、インターネットは今や大きな社会問題です。こんなものがあと3年も生き残れるほど世の中甘くありません! でも、世間の多くの人はそうなるとは思っていません! 先を読む目がないからです! でも、今日ここに関心を持って私の話を聴きにいらっしゃった方々はご立派です。真実に気がつかれた、意識の高い方々だからです」


 そう言うと、おばさんは傍らに置いてあったパソコンの出来損ないみたいな、変わった機械を手で指し示した。


「これはスピリチュアル・ネットといって、次の時代の情報通信の主流になる機械です。インターネットではないので極めて安全です。個人情報を盗まれることも、ウィルスに感染することもありません。しかもいろんなことが出来ます。お互いに情報交換したり、物の売り買いも出来るんです! 例えば安全なナチュラルフードや有機野菜などが、このスピリチュアル・ネット上で取引されてます。皆さん、農薬や食品添加物の問題はよくご存知ですね? 皆さんがどこかで『これはいい!』と思う安全でおいしい食品を見つけたら、スピリチュアル・ネットを通じて、他の人に分けて差し上げることも出来るんです。どうです、神様の教えに適った素敵な行為でしょう?」


 俺はあの機械の正体を知っている。

 外見は20年くらい前の旧式なノートパソコンみたいだが、要は、特殊な……というよりも、機能が極めて限定されたコンピューターとでも言えばいいだろうか。


 それがインターネットに繋がっているのだが、ただし、ある特定のSNSのみにしか行けないようになっている。

 そして、そのSNSから出て、別の場所に移動することはできない。


 ただそれだけの機能を持ったパソコンもどきであり、そのSNS内に「情報交換」の場があったり、オークションのようなことが行われていたりする、というわけだ。


「インターネットではない」と言いながら、実はインターネットの中の、ごく限られた一部を使用しているに過ぎないのだが、情報機器に疎い年配の信者さんなどは、これで結構たやすく騙される。

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