STAGE 37
この教団本部がある雑居ビルは、1階が何もないロビーで、2階がファミレスになっている。
信者さんで、昼食を取るために、このファミレスを利用している人は結構多い。俺達が今向かっているのも、そこだった。
ちなみに3階はソープランドである。
うちの教団本部が入居する前からある店だが、一度、そこの店主が、
「おたくが同じビルに来てから、客足が増えました。いやあ、ご利益というのは、あるものですなあ!」
と言って、お布施を持ってきたことがある。
そうか、うちの本部が入居してから、ソープの客足が増えたのか……。
行ってる奴、誰だよ!
エレベーターが3階を通過する時、井川さんが、
「丈太ちゃんは、ここのお店、行ったことあるの?」
と聞いてきた。
「ありませんよ!」
と答えると、樺山さんや、富村さん達が口々に、
「そりゃあ、行ってても、行ったとは言えないでしょうよ!」
「そうよねえ!」
などと言い出した。
「本当に行ってません!」
と言うと、井川さんが、
「まあ、行ったとは言えないでしょうから……」
と、ポンと肩を叩いてきた。
高校生で風俗出入りしてる奴なんて、そうはいねえよ!
とも子ちゃんは、顔を真っ赤にして、ひたすら、
「えーっ? えーっ?」
と叫んでいた。
とりあえず、ソープランドが何であるかは、わかるらしい。
エレベーターが2階に着き、俺達はファミレスに入った。
食事をしながら、井川さん達は、とも子ちゃんをコーラス隊に勧誘し始めた。
「あなた可愛いから、コーラス隊に入りなさいよ!」
「赤木さんとあなたが入ってくれれば、コーラス隊も若返るわね!」
「あら、あたし達だって若いわよ!」
「当然よ! そうよね、丈太ちゃん?」
「へっ?」
「へ、じゃないでしょ!!」
勧誘された側のとも子ちゃんは、
「いっ、いいです!」
と、顔を真っ赤にして、首を横に振っていた。
「ねえ、とも子ちゃん、あなた、お母さんのこと、嫌い?」
不意に、井川さんがそんなことを尋ねた。
とも子ちゃんは、一瞬きょとんとした後、うつむいて、コクッと首を縦に振っ
た。
「そう、お父さんのことは?」
「いつも家にいないから、わからない……」
寂しそうに答える、とも子ちゃん。
「そう、それは辛いわね……でも、無理もないわね、あんなお母さんじゃ、私だっ
て、嫌いになるもの」
井川さんの物言いに、とも子ちゃんはびっくりしたように、目を見開いている。




