STAGE 36
「あら、丈太ちゃん!」
「やだ! そんなとこにいないで、こっちいらっしゃいよ!」
俺に気がついたコーラス隊の面々が、激しく俺を呼ぶ。
「あ、どうも、すみませーん」
俺はコーラス隊の人達に誘われるまま、談話ロビーの中に入って行った。
お母さんを、とも子ちゃんから引き離したかったのは、俺も同じだ。
あのお母さんがいたのでは、まともにとも子ちゃんと話ができそうにないし、とも子ちゃんも、お母さんの前では、絶対に自分を出そうとはしないだろう。
「まったく、あのお母さんじゃ、あなたも大変ねえ、気の休まる暇もないでしょ?」
井川さんは、娘さんに対しても、平気でお母さんのことをズケズケ言う。
とも子ちゃんは、少し怯えた表情で、きょとんとしていた。
「丈太ちゃん聞いてよ! あの母親、自分の娘を何て言ったと思う? 『うちは何も非の打ち所がない家庭なのに、娘が勝手にこうなった。親戚やご近所に恥ずかしい! 全部この子が悪い!』ですってよ! 聞いて呆れるわよねえ!」
「この子は悪くないわよ、いい子に見えるわ……だけど、あのババアだけは、ムカついたわね! 旦那の勤め先の自慢とかしてたけど、ふざけんなって!」
「いや、ババアは、お互い様でしょ!」
「あっちは悪いババア、こっちはいいババアよ!」
「私達はねえ、少しは人の役に立つこともしてるつもりだけど、こうして人の悪口も言うから、結局同じなのよねえ……」
さすがはコーラス隊、言っていることは一見無茶苦茶なようだが、最初、黙って聞いていたとも子ちゃんが、面白がって笑い始めた。
「あら、あんた笑うと可愛いわね!」
「どうせなら、いつも笑ってなさいよ、男にもてるわよ!」
「どう? 丈太ちゃん、この子可愛いわよね?」
おばさん達に同意を求められて、俺はさわやかなイケメン(?)スマイルで、
「うん、可愛いよ、とも子ちゃん」
と言った。
とも子ちゃんは、顔を赤くして、うつむいてしまった。
ヤバい! セクハラだと思われたら困る!
「そろそろお昼よね、ご飯食べに行く?」
井川さんがそう言い出して、俺達は、コーラス隊の4人、とも子ちゃん、そして俺の6人で、昼飯を食べに行くことになった。
俺はチラッと、談話ロビーの中を見回した。
今日も大熊さんと赤木さんは来ている。
大熊さんは、いつものように、家から持たされてきた弁当を広げて食べはじめ、赤木さんは六本木さんと、ガールズトーク(?)に花を咲かせているようだった。
こっちは、任せておいてよさそうだ。
俺は、外出する旨を、本部玄関前の受付にいた出家信者に伝え、白い法服を隠すため上にジャケットを羽織り、みんなと一緒にエレベーターに乗った




