STAGE 34
「私の顔に、何かついてる?」
エレベーターの中で、突然黒田さんに尋ねられ、俺は、自分が黒田さんをまじまじと見つめてしまっていることに気がついた。
「あ、すみません!」
慌てて目を逸らす俺。
「フフフ……」
黒田さんは子供みたいに、いたずらっぽく笑い、
「で、どうなの、副教祖としてのお仕事は?」
と尋ねてきた。
「いやー、俺なんかまだまだです、みんなに迷惑かけてます」
俺がそう答えると、黒田さんは、
「そう?」
と言い、
「私はよくやってくれていると思うわよ、感謝しているわ」
と言った。
「そうですかねえ?」
俺は曖昧に笑った。
エレベーターが1階に着いた。
ビルの玄関までの短い通路を歩く。
「あの、黒田さん、いつも有り難うございます、また来てくださいね」
俺が挨拶すると、黒田さんはふと立ち止まり、
「あなた、いろいろ大変でしょうけど……」
何とも言えない微笑を浮かべて、話し出した。
「……今は、意に染まないことばかりで辛いでしょうけど、いつかあなたがみんなの上に立った時、全てを変えてやるといいわ。きっとついて来る人もいる。今は、そのために自分を磨きなさい。あなたは大丈夫だから」
「は?」
「あなたは大丈夫、それだけよ」
黒田さんはそう言ってにっこり笑い、
「じゃあね」
と言って、杖をついて歩き出した。
「あの、どうも有り難うございました……」
俺は深々とお辞儀して、黒田さんを見送った。
これが、俺が黒田さんの姿を見た最後になった……。




