STAGE 27
「増子さん、落ち着いてください!」
俺と川原が近付こうとすると、
「来ないで! 来たら死ぬわよ!」
増子さんは言うが早いか、すごい勢いで部屋の隅に向かって駆け出した。
そこには、高さ2メートルほどの、白い布が掛けられた祭壇があった。
午後からこの談話ロビーで開かれる予定の、親父の法話会のために準備されていたもので、雛壇のようになったそれには、仏像や聖画などのパワーグッズや、親父が使う法具などが並べられている。
ガシャ、ガシャ――ン!
と増子さんは、それらを蹴散らして壇上に駆け上がった。
一見、被害額がすごそうだが、どれも原価は安い。気にしないぞ! うん!
増子さんは、雛壇の最上段にすっくと立った。
増子さんの体重によって、祭壇はぎしぎしと音をたて、かろうじて崩壊をまぬがれている状態だ。
「増子さん、危ない!」
「降りてください!」
俺と川原の説得にも耳を貸さず、増子さんは、
「死ぬわよ!」
と叫び、天井から垂れ下がった1本の細い紐を手に取った。
祭壇の真上の天井には、教団のシンボルを描いたタペストリーを吊り下げるための金属製のバーが設置されており、間の悪いことに、そのタペストリーを吊るための紐が、準備のため、既にそこに取り付けられていた。




