STAGE 26
俺と川原が談話ロビーの前まで来ると、中で何か騒ぎが起きていた。
俺達がひょいとドアを開けて覗くと、六本木さんが青い顔をして駆け寄ってきた。
「ふ、ふ、副教祖! 川原君! 増子さんが……!」
六本木さんが指差すほうを見ると、コーラス隊のおばさん達と誰かが揉めている。
「いいわよ! あたしなんか死ねばいいんでしょ――っ!! 死んでやるわよ!」
「増子さん、あんた、いい加減にしなさいよ!」
コーラス隊の5人と相対して「死んでやる!」と叫んでいるのは、増子さんという女性の在家信者さんだ。
太っている……といういより巨漢のおばさんで、人気タレントのマツコ・デラックスにちょっと容姿が似ている。
マツコ……いや増子さんは、高齢ニートのおばさんで、もう50に近い年齢ながら、一度も働いたことがなく、結婚暦もない。
これまでは老齢の親の年金にたかって生活していたが、それも厳しくなってきて、先日「生活保護を受給したい」と俺に相談してきた。
俺は、そういう社会制度は必要な時には利用するべきだという考えなので、「手続きの仕方がわからない」と言う増子さんに、一通りの申請方法を調べて、資料を渡してやった。
六本木さんによると、今日、増子さんがコーラス隊の面々にそれを話したところ、
「あんた、何を甘えてるの!」
「そんなお金、受け取ったら、人として終わりよ!」
「働きなさい!!」
とさんざんに罵倒され、
「死んでやる――っ!!」
と、なったらしい。




