STAGE 25
「へえ、で、結局お布施はタダで請け負ったのか?」
金沢母娘を帰してから、俺は川原と話しながら、談話ロビーに向かっていた。
「ああ、とにかく、ここへ足を運んでもらうことが第一だと思ってな」
「まあ、そうだな」
愛宇宙教では基本的にお布施の額というのは決められていない。
他の宗教では、収入の10パーセントとか、決まっている場合も多いが、愛宇宙教では基本自由で、払わなくても別に問題はない。
以前は、毎月定額のお布施を信者さんから取っていた時期もあったのだが、信者数がなかなか伸びず、教団の経営が安定しなかったため、親父が逆転の発想で、お布施の定額徴収をやめてしまった。
基本、無課金でもできる宗教にすることで、逆に広く信者を集められるようにし、また本格的に入信はしなくても(信者名簿には載ってしまうが)、談話ロビーでくつろいでもらったり、パワーグッズの販売コーナーを覗いてもらったり、単発で自己啓発セミナーや、親父の「手かざし治療」を受けに来てもらったり……。
そうやって広く浅い層から金を取ったほうが、結果的に儲かるということが、やがてわかってきた。
また、いったん入信してしまうと、信者さん達は結構、教団を買い支えようとしてくれたりもするので、「いつも無料では悪いから」と、自分の懐具合に見合ったパワーグッズを買ってくれたり、有料のセミナーを受けに来てくれたり……。
そのため、親父の「手かざし治療」は1回5千円と、街のマッサージ屋と変わらない料金だし、パワーグッズにしても100万円以上する絢爛豪華な多宝塔の置物から、1枚100円のパワーシール(「ありがとう」という細かい文字がびっしりと印刷されたシール、貼るといいことがあるとされている)まで多彩だ。
自己啓発セミナーだって、内容によって参加費40万円の合宿研修から、2千円のお手軽コースまであり、多種多様である。
今でこそ、こういう料金システムの宗教やスピ系団体はたくさんあるが、親父がこれをやったのは、まだかなり早い時期だったと思う。
こんな教団だから、赤木さんみたいなお金のない人でも来れるわけで、この点だけは、俺は親父をちょっと評価している。




