STAGE 19
「あ、そうだ、副教祖、聞いてます? 御奉仕少女隊の件」
六本木さんが思い出したように言った。
「俺の御奉仕隊ってやつ? やめてくれよ……」
俺が頭を抱えると、
「教祖様の命令だから仕方ないですよ。あたし、いちおう担当者として、人選とか任されましたんで、希望とかあったら言ってくださいね」
「じゃあ、由里だけは入れないでくれます?」
「は? 桐原会長のお嬢さん? あたし絶対入れようと思ってたんですけど……」
「いや、マジでお願いします、あいつだけはやめて!」
「ケンカでもしたんですか?」
「そうじゃな……くもないけど、とにかくあいつだけはイヤ! 他は適当でいいから……って、まさか赤木さんとか入れないよね?」
「はあ……由里さんと赤木さんはNGですか、わかりました……んじゃ、あたし、談話ロビーのほう行きますんで!」
六本木さんはそう言って、事務所を出て行った。
六本木さんは元風俗嬢の前歴を持つ、若い出家信者である。
どんな種類の風俗かというと、何でも「マニアックなお店」だそうで、何がどう「マニアック」なのかは不明だ。
明るい色の茶髪のショートカットで、仕事中は法服を着ているのでわからないが、普段の服装も派手だ。
しかし、社会不適合者の多い出家信者の中にあって、普通に仕事ができる人なので、そういう意味では貴重な人材である。
六本木さんが出て行くのを見送ると、入れ違いに川原が事務所に入って来た。
「おい丈太……じゃねえ、副教祖様、ちょっといいですか?」
「何?」
「今、一般人の悩み事相談者が来てて、母親と娘さんの2人連れなんだけど、旦那さんが一流企業のお偉いさんだそうで……金持ってそうだからVIPとして対応したほうがいいかと思って、俺よりも副教祖か本部長に相手してもらいたいんですけど?」
「信者じゃなくて一般人? 入信しそう?」
「話を聞いてみて、良ければ、って言ってる」
「相談内容は?」
「娘さんの不登校だと」
「わかった、俺が行くわ」
俺はそう言って一般人向けの応接室に向かった。