STAGE 18
「今日の分はこれだけです、どうも有り難うございました、赤木さん! 手伝ってもらってすごく助かりましたよ! お願いしちゃってすみませんでした!」
仕事が終わったらしく、六本木さんが、封筒の束の一部を抱えて立ち上がった。
「いえ、そんな……」
赤木さんはうつむいて赤面している。
「どうです 疲れました?」
「はあ、少し……」
「じゃあ、下の談話ロビーで休んでてください、私もすぐ行きますんで」
六本木さんは笑顔で赤木さんを事務所から送り出すと、俺達の方へ来た。
「どうでした?」
俺が尋ねると、六本木さんは、
「そうですねー、やっぱりすぐ疲れちゃうみたいで……時々、何か考え込んで手が止まっちゃいますし、はっきり言ってのろいです。でもまあ、少しづつ慣らしていけば、何とか……なるのかなあ?」
と、赤木さんに対する所見を述べた。
「そうですかあ、やっぱりちょっと厳しいかなあ……」
俺が苦笑いすると、橋元本部長が、
「もう少し様子を見てはどうですか? 柴田君の件もあるし、この教団本部も人手が欲しいことには変わりないのですから」
と言ってくれた。
ちなみに柴田君というのは、先日、愛宇宙教を脱会した若い男性出家信者である。
在家信者のおばさん達(うちもそうだが、新興宗教とかスピリチュアル系団体の信者には女性が圧倒的に多い)に人気があり、自己啓発セミナーのMCなども務めていたため、結構ダメージがでかい。
辞めた理由は、彼が付き合っていた女性信者を、親父が「御奉仕隊」に入れてしまったせいで、その時の教団本部を舞台としたドロドロ愛憎劇は、それだけで1冊の小説になりそうなほどだ。