STAGE 17
翌日は土曜日だった。
学校が休みなので、いつものように朝から教団本部に顔を出すと、最上階の本部事務所に赤木さんがいた。
赤木さんは、彼女と年齢が近い女性出家信者の六本木さんと一緒に、事務所内の端っこにある応接スペースで何か作業をしている。
俺が近付いて行くと、2人がペコッと挨拶した。
応接セットのテーブルの上には、たくさんの封筒と、信者さん達に送る教団の機関誌、パワーグッズの新商品カタログや、教団で行っている自己啓発セミナーの案内チラシなどが並べられていて、2人はそれらを順番に並べて封筒に詰め、宛名シールを貼る作業を行っていた。
こうして見ると、赤木さんは六本木さんに教えられながら、一応はてきぱきと作業をこなしているように見える。
俺は2人から離れて、橋元本部長のデスクの方へ行った。
「お早うございます、本部長」
「ああ、お早うございます、副教祖様」
「赤木さん、どうですかねー?」
俺は少し声を落として尋ねた。
「そうですね、こうして見る限り、仕事はできているようですが……後で六本木さんに様子を聞いてみないことには……」
「そうですねー」
近い将来、生活に行き詰まるであろう赤木さんを、出家させられないかという話は、親父と本部長にはしてあった。
ただし、出家信者ともなると、この教団本部に出勤して働かなければならないわけで、今の赤木さんにそれが可能かということになる。
別にフルタイムである必要はないし、最初は軽作業から始めて、徐々に様子を見て、仕事を増やしていってもいい。
そして、赤木さんが完全に回復する時が来たら、いつでも辞めて、一般社会に戻って行ってもらって構わないのだ。
要は、赤木さんのリハビリと、経済的な助けになればいいわけだ。