STAGE 14
翌日、俺はいつものように、川原と一緒に学校へ行った。
俺と川原は学校では同じクラスで、もう1人、同級生に、俺の幼なじみ桐原由里がいる。
由里の父親は、大企業である桐原重工の創業者で、現会長でもあり、熱烈な愛宇宙教徒だ。親父が昔、愛宇宙教を立ち上げた頃からの信者で、自分が成功できたのは、愛宇宙教の教義のおかげと信じていて、教団に莫大なお布施をしている。
世間的には「語弊がある」ということで、桐原会長と愛宇宙教とのつながりは公表されていないが、はっきり言って、この桐原会長からのお布施がなければ、愛宇宙教はやっていけないほどのレベルである。
桐原会長は、娘の由里と、教祖の息子である俺との結婚を望んでいるらしく、また親父も「桐原家との姻戚関係ができれば、愛宇宙教はますます安泰だ!」というので、俺に「由里ちゃんと結婚しろ!」「付き合え、口説け! 女なんか強引に行けばどうとでもなるんだ! やっちまえ!」と、うるさいことこの上ない。
そう言われると、息子の俺としては「誰が付き合うか!」と、つい逆に思ってしまうものなのだが……。
なお、俺達が通うのは、有名私立高校である麗城学園。
偏差値が高く、受験の難関校で、由里と川原は成績もいいのだが、俺は……どうしてこの学校に合格したのかわからない。
以前、親父に「俺って裏口入学なの?」と尋ねたことがあるが「バカを言うな!」と一蹴された。
実際、どうなんだろ……?
なおこの学校には由里の親父と俺の親父が多額の寄付をしているらしく、同じクラスに教団関係者が3人とも集まっているのも、多分そのおかげだと思う。
ちなみに俺達3人とも、学校では愛宇宙教のことは誰にも話していない。
3人だけの秘密である。
学校側は当然、俺と川原の出自は知っているわけだが、生徒の家庭の事情については、あまり言わないみたいである。
放課後になり、いつものように由里が誘いに来た。
「丈太、帰ろっ!」
「ああ……」
こいつは、いつもクラスの女友達とは帰らずに、俺や川原と一緒に下校する。
おかげでクラス内では、俺と由里が付き合ってる説がまことしやかに流れているが、無論誤報もはなはだしい。
「ねえ丈太、またマック寄ってく? 時間ある?」
「いつも思うけど、おまえ、お嬢様なのにマックとか、庶民的なのな」
「あんた、私がマック行くのに、文句があるわけ?」
「ありません、すいません」
こいつは絶対、将来結婚相手を尻に敷くタイプだ。
旦那になる奴に同情するぜ……。