STAGE 12
俺が最上階の教団本部事務所に入ると、この愛宇宙教団新宿本部を取り仕切る橋元本部長と、池袋支部の豊原支部長が待っていた。
応接セットに座っていた2人は俺を見ると立ち上がった。
「ああ、すんまへんなあ、副教祖様、お呼び立てしてしもて」
太った禿げ頭の豊原支部長が、笑いながらお辞儀した。
痩せ型ロマンスグレーの橋元本部長は、苦虫を噛み潰したような顔で黙っている。
「どうぞ、座ってください、で、豊原さん、何かありましたか?」
俺が尋ねると、ふんぞり返るようにソファに腰掛けた豊原支部長が答えた。
「いやー、別にたいしたことおまへん、ちょっと用事で本部まで来たもんやから、副教祖様にも挨拶しとこう思いましてな。ちょうど談話ロビーのほうにおられたから、あんなとこでは幹部同士の話もできやしまへんやろ思いまして、お呼びしたんですわ」
「ああ、そうですか」
「それにしても、この本部はいつも閑散としてますなあ、談話ロビーにも、10人も信者さんがおらへんみたいやったし……池袋支部とはえらい違いや」
「いや、豊原支部長……」
不機嫌そうに黙っていた橋元本部長が口を開いた。
「この本部は会社でいうと本社機能を兼ねています。総務や経理、パワーグッズの開発や仕入れもここで一括して行っているわけで、支部のように布教や営業だけやっているわけにはいかんのですよ……」
「そやかて、その分、出家信者の数も、ぎょうさんいてますやんか」
「それはそうですが……」
この2人が対抗意識むき出しなのには理由がある。
池袋支部はもともと、愛宇宙教団の中でも、この本部に次ぐ第2位の規模を誇る支部だった。
しかし、この豊原支部長の就任以来、池袋支部は急速に入信者の数を伸ばし、お布施やパワーグッズの売り上げなどもうなぎ上りで、昨年度の収益がついにこの教団本部を抜いて、トップに躍り出てしまった。
現在、教団幹部の間では、本部長と池袋支部長の交代論も出ており、そのため橋元本部長は今も非常に不機嫌であり、豊原支部長は、まさに我が世の春といった風情だ。




