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神の御許にて  作者: 日渡正太
第1話 神様のお仕事
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STAGE 11

 エレベーターで最上階に上がる途中、俺は大熊さんと、赤木さんのことを考えていた。


 大熊さんはいちおう家族と同居していて、養ってもらっているから、本人が働いていなくても、今日明日の生活に困るということはないらしい(ただし家族は大熊さんを相当邪魔者にしていて、「宗教のくせに何とかできないのか!」とうちに何度もクレームを言ってきている)。


 問題は赤木さんで、荻窪のマンションに1人暮らし。

 実家は広島で両親がいるが、心の病気で休職という事実を親にどうしても言えず、経済的援助が得られていない。


 彼女が会社を休み始めてから既に5ヶ月が経過しており、来月には強制的に退職となって、同時に傷病手当金の支給も終わる。

 病院で「就業不可」の診断を受けてしまっているので、失業保険もすぐにはもらえない。


 つまり、このままでは近い将来、完全な無収入となってしまう。


 本人も貯金が尽きた時が自分の最期と覚悟を決めているようなフシがあり、時々マンションのベランダを眺めては、自殺を考えるという。


 俺は、赤木さんを出家させられないか、親父に相談してみるつもりだった。


 こういう問題を抱えた信者さんがいた場合、とりあえず一時的にでも出家させて生活の面倒を見るのは、うちの教団がよく使う手である。


「生活ができない」と泣きついてくる信者さんを、無碍に突き放せないからで、今いる出家信者の中にも「生活に困って」出家した人はたくさんいる。


 あの川原なんかもその部類と言える。


 親父はよく「本来、出家信者というのは、在家信者より徳が高かったりするのが普通だが、うちは出家信者が一番ひどい。まともに生活できない奴らばかりなんだから!」と嘆いているが、ほぼ事実である。


 まあ、今の赤木さんの状態では、最初は仕事なんかできないだろうが、徐々にリハビリを兼ねてやってもらえばいい。


 うちだって中堅とはいえ、これでも宗教法人だ。

 はっきり言って、そこらの中小企業よりも金回りは断然いい。

 多少の余剰人員ぐらい抱えていても、ちゃんと世間並みの給料は出せるのだ。

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