引き金
一瞬、何を言われたのかさっぱりだった。
「ワタシにアンザイソラタをショウカイして」
この言葉から推測すると彼女は私が彼と友達であることを知っているように聞こえる。いや、彼女の汚い笑みからして確実に知っている。
そこはどうでもいい。
ただ問題なのが何故彼女は知っているのかということ。
彼と私の接点は陸君しか知らない。
だからって陸君が例え頼まれたって教えるはずはない。
じゃあ何故?
一応ない頭で考えてみた。
彼女はこの学校の別の学科にいるため普段は会わないし、普通科とも接点は殆どない。なので彼と会う可能もないだろう。
その前に図書室以外で彼と話したことがない。だからこそあの噂は信憑性に欠けすぐに消えたじゃないか。
でも、会えるとしたら部活のマネージャーとして入ること。これなら接点が出来る。でも大抵生徒会とかで遅れると言って途中参加ばかり、らしい。
そこで私のことを聞いて(聞こえて)きたのか?
いや、そうなると私に頼む必要性はない。
彼は普段は近づけない雰囲気は持っているもののいい人だから話しかければ普通に答えてくれる。
やっぱり出てこない。
「何故知ってるのか分からないって顔してるまぁ、減るもんじゃないし教えてあげる」
増えるもんでもないよね?
ついでにその説明いらないと思う。
「あんたのクラスに中野っているでしょう?そこまでかっこよくないやつ。
あれ、私の一応彼氏」
へぇーそうなんですか。かわいそう中野君。
「あれにお願いしてあんたの尾行を頼んだのよ」
「は?」
まず、あんた(一応)彼氏に何させてんですか。
「そしたら話してる所を目撃したわけ」
「はぁ、さようですか」
「証拠写真もここに」
「あっそ」
正直言って疲れた。
くるりと背を向け図書室に行こうとした。
「ちょ、ちょっと。いいの?あんたの友達にばらしちゃって」
「ばらすって別に話すぐらいで壊れる仲ではないし」
恋してることはばれちゃいけないけど。
ついでにいきなり面識のない人に『堂本さん、安斉君と付き合ってますよ』って言われても信憑性ないし。
ん?じゃあ最初の噂は誰が流したんだ?
「じゃあ、鈴木明菜には?」
まさかのその人出します?
私、彼女のことあんまり知らないんですが。
「そうしたらかなりの速さで広まるわよねぇ」
もーどうでもよくなってきたんだけど。
その後あまりにもうるさいので『いつも図書室で本読んでるから自分で言って来い』っと一喝し帰った。