恋をして
あれから彼に恋してもうすぐ一年。
ただ遠くから見ているだけの一年。
何度も諦めようとしても諦め切れなかった一年。
苦しくてつらくてそれでも彼を見ると幸せな気持ちになる一年だった。
「ちょっと、輝晴。きーはーる。聞いてる?」
あ、そ、そうだった。今現代文の時間。集中しないと。
「ご、ごめん、みさちゃん。聞いてなかった・・・・・・・・」
「たくっ。主人公が・・・・・・・・・・・・」
ごめんね、みさちゃん。
私は彼が好きということを誰にも相談が出来ない。
彼のことは女子内では賛否両論。
私の周りではあまり好きではないほうだ。
特に親友であるみさちゃんたちはそのことを公言している。
もし彼のことが好きだというときは恋をとったときである。
まぁ、それはないだろうが。
私は堂本輝晴。そこら辺にいる平凡の恋する女子高生の一人。
そしてさっきから話題に出ている“彼”というのは安斉空汰くんという男子生徒。
彼は成績優秀でスーポツ万能なこの学校の生徒会長。
容姿端麗で雰囲気がどこか冷たい感じのする大人っぽい雲の上の人。
平凡と天才。
私と彼が似合わないということは分かっている。
彼の隣に似合う人はたくさんいるということも。
けど諦めきれないのはやっぱり“好き”だから。