魔法使いにかけられた魔法
見つめているだけでいいと思った私に一言言いたい。
『大丈夫、一歩前に踏み出して』
走って走って走り続けて私は止まった。
ゼイゼイ言うことで現実と語る。
ああ、付き合ったんだ。頭の隅でワタシが悟る。
違うかもしれない。私が思う。
だけど、二度もやる人間なんて恋人以外存在しない。
ああ、諦めなきゃなぁ。
本、落としてきちゃった。
そんなことを思いながら私は動く。
最後まで君の名を呼ぶことはなかった。
「輝晴」
グイッっと引き寄せられたのは・・・・・・・・・・
「陸君」
「輝晴・・・・・・・・」
「ごめんね、取り乱して。ちょっとびっくりしたから。
本どうしよう。落としてきちゃったよね」
「輝晴」
「これからどうしようかな・・・・・・・
なんか会いにくいよね」
「輝晴!!今の自分の顔分かってる?」
「えっ?」
「泣いてるよ」
不思議に思いながら目を擦ると手に水滴が・・・・・
「アハハ、何泣いてるんだろ」
「輝晴は空汰のこと好きだった?」
「友達としてなら」
「うそ、泣いてるのが証拠」
「泣いてないよ。ほら、走ったから」
「走ったりしたからって目が赤くならない」
「違うよ」
「輝晴」
どうしてやさしいんだろう。陸君は。
やさしいから甘えたくなる。
やさしいから、君の気持ちを知っている私には肯定できない。
急にふっと頭をなでられた。
「輝晴は自分の気持ちを言うことを我慢しすぎるんだよ。
空汰が好きっていえない理由も知ってた。
でも輝晴は諦めることはしなかった。
だから言ってもいいんだよ、好きって」
ね?輝晴言ってごらん。そう付け加える陸君が大人に見えた。
「陸君、訂正をお願いします。
諦めることはしなかったではなく諦められなかったが正解です。
それから・・・・・・・私は安斉君のことが好きです」
笑えたのか分からない。でも精一杯の言葉をつなげた気持ちだ。
そして陸君も苦しそうな、悲しそうなでも安心した表情で。
「まだ空汰は図書室にいるみたいだからその言葉を言っておいで」
「ええ?!」
「ほうら、急げ輝晴」
「えっ、えっ」
「振られたら俺のところ来い。輝晴を笑わせる自信はあるから」
「う、うん?」
トン、私は軽く押された瞬間走り出していた。
目指すは彼の元へ。
「ミサンガの願いは叶ったみたいだな」
そう呟く一人の男の真意は誰も知らない。