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二足歩行型兵器――《WAR FRAME(ウォーフレーム)》 Q&F  作者: てきてき@tekiteki


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エピローグ

 本部に戻ったクイーンを出迎えたのは、オペレーターたちだった。


 整然と並ぶ――わけではない。

 むしろ、その逆だ。


 椅子に座ったまま振り向く者。

 ヘッドセットを半分外したまま立ち上がる者。

 端末を操作しながら、視線だけを向ける者。


 誰も持ち場を離れられない。

 戦場は、まだ続いている。


 だから。


 それぞれの隙間時間。

 数十秒の空白。

 ログ更新の合間。


 その“わずかな余白”を縫うように――

 一人、また一人とクイーンの元へやってくる。


「無事で良かったです」

「本当に……」

「現場、大丈夫でしたか」


 声は抑えられている。


 叫ばない。

 騒がない。


 だが。


 その喉の奥には、張り詰めていた時間が残っている。


 クイーンは足を止める。

 急がない。


 目を合わせる。

 一人ずつ。


「ええ、大丈夫よ」


 それだけで、空気が少しだけ軽くなる。


「みんなの管制があったから、持ったわ」


 何人かが息を吐く。


「いい判断だったわ」

「ログ、後で見せて」

「ちゃんと休みなさい」


 短い。

 だが外さない。


 評価。

 次。

 そして休息。


「はい!」


 席へ戻る。


 背中が変わる。


 “耐える側”から、“回す側”へ。


***


「……怖かった」


 若いオペレーターの呟き。


「俺もだよ」


 短い沈黙。


「でもまぁ」


 キーボードを叩く。


「本部長が“行って帰ってくる”なら」


 小さく笑う。


「まだ持つな」


 ログが流れる。


 戦場は止まらない。


***


 会議室。


 一定の光。

 整った空気。


 血の匂いはない。


 だが――重い。


「規定違反ですな」


「承知しています」


 即答。

 間を置かない。


 別の声。


「前線投入の必要性は?」


「戦線維持のためです」


 ログが共有される。

 成果と逸脱。


 並ぶ。

 沈黙。


「……今後は、手続きを踏むように」


 曖昧な結論。

 だが、それでいい。


 踏み込めば壊れる。

 全員が知っている。

 通信が切れる。


***


 廊下。


 クイーンは一人、立つ。


 わずかに息を吐く。


「……甘いわね」


 処分は軽い。

 理由は分かっている。


 ――代わりがいない。


 それだけで通る。

 それだけで、逃げ場も消える。


「……よくやったわ、皆んな」


 誰にも届かない声。


***


 ガラス越しの管制室。

 誰も見ていない。


 見ているのは空。

 数字。

 未来。


 クイーンは思う。


 ――戻れない。

 それでも。

 戻す。


 壊さずに。

 出来るだけ、そのままで。


***


 前線基地。


 フォックスは工具箱の横に座っている。

 レンチを回す。


 金属音。

 油の匂い。


「さて」


「戦闘より、こっちの方が長いんだよな」


 誰も返さない。

 だが。

 誰も否定しない。


 フォックスは手を止める。

 空を見る。


 何もない。

 だから分かる。


「……来るぞ、次」


 静かに言う。

 そして、もう一言だけ続けた。


「――帰って来なかった奴らも、同じこと言ってた」


 レンチが止まる。

 誰も何も言わない。


 だが。


 その場の空気だけが、少し沈む。

 フォックスはそれ以上言わない。


 また工具を回す。


 ガチン。


 基地に中に音が戻る。


***


 対空車両の中。


 サヤはログを閉じる。

 画面に、自分の顔。


 少し疲れている。

 だが、目は生きている。


「……撃たなかった数の方が多い」


 小さく呟く。

 撃つだけが戦いじゃない。


 守るために、撃たない。

 それを選べた。

 それでいい。


 再度、サヤはモニター上の数字を追い始める。

 空は――まだ管理中だ。


***


 医療区画。


 白い光。

 静かな機械音。


 ベッドの上。

 少年が眠っている。


 小さい。

 軽い呼吸。


 ドアの外で、足が止まる。


「……こいつが?こんなに小さいのに?」


 低い声。


 別の声。


「……ああ。あの国特有の英才教育ってやつか?」


 それ以上は続かない。


 クイーンは中にいる。

 少年の横。

 ただ、見ている。


 しばらく、何も言わない。


 そして。


「こんな所で……終わらせないわよ」


 小さく呟く。

 視線は外さない。


「ここで無駄にするには、惜しい」


 理想ではない。

 判断だ。


 そのまま、少年を見る。


「守る、活かす……これが、次の戦場」


***

 それぞれの場所で。


 夜は続く。

 空は静か。


 だが。


 誰も、それを平和とは呼ばない。


 準備。

 繋ぎ。

 次。


***


 クイーンは歩き出す。


 本部長として。


 そして。


 選び続ける者として。


 止まらない。


 止まれない。


***


 フォックスは空を見ている。


 何もない空。


 だが。


 もう、次を見ている。


***


 戦場は続く。


 場所を変え。


 形を変え。


 人を変えながら。


 それでも。


 ――帰る場所だけは、変わらない。




**********

ここまで読んでいただいた皆様、

本当にありがとうございました。


これにてWFシリーズの連載は一旦、

完了とさせていただきます。


フォックスとクイーンの、

もっと輝いていた時代、

そもそも出会う前の戦いは?


敵側エースだった少年はどうなってしまうのか?

等々、描きたいエピソードはたくさんあります。


また機会があれば、書いて行きたいと思っております。


その時はどうぞ、よろしくお願いいたします。

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