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「サヤの憧れ」

 最初は、料理だった。


 おばさんの紹介で、

 軍部の中に「料理をする部門」

があると知った。


 前線に出る人たちのために、

 食事を作る仕事。


 銃を持たなくてもいい。

 戦わなくてもいい。

 それでも、戦争の中で必要とされる。


 ――それなら。


 進路指導の時、私は教員に相談した。


 煙たがる顔をする人もいた。

 「軍はやめておけ」と、遠回しに言う人も。


 でも、推薦してくれる人もいた。


 人の考え方は、様々だ。


 ただ一つ、私の中でははっきりしていた。


 必要とされる人になりたい。


 それだけだった。


 だから私は、

 その場所を「良い」と思った。


 試験当日。


 想像していたような、

 厳しい体力試験はなかった。


 息が切れるほど走らされることも、

 難しい公式を使う筆記試験もない。


 代わりに――

 ずっと、見られている感覚があった。


 動き。

 癖。

 迷い方。


 評価されているというより、

 見極められている。


 そんな感じだった。


 一通り終わった後、

 希望者には「見学」が許された。


 その中で、一番のイベントが――

 模擬戦だった。


 そう。

 WFの模擬戦。


 巨大な機体が動く音。

 地面を踏みしめる振動。


 私は、ただ圧倒されていた。


 その中で――

 一機だけ、違った。


 白い機体。

 流れるような動き。


 無駄がなく、

 速く、

 そして――美しかった。


 私は、心の中で勝手に名前を付けた。


 白銀の騎士。


 もちろん、正式名称じゃない。

 ただ、そうとしか思えなかった。


 戦いが終わり、

 その機体から降りてきた

 パイロットを見て――

 私は、言葉を失った。


 女性だった。


 あの人が――

 クイーン様。


 後で聞いた呼び名は、

 「コールドクイーン」。


 冷たい女王。


 でも。


 そんなの、

 すぐに嘘だと分かった。


 機体から降りた彼女は、

 整備員に短く礼を言い、

 周囲をきちんと見ていた。


 視線は冷静だったけれど、

 人を切り捨てるようなものじゃない。


 必要なものを、

 正確に拾い上げているだけ。


 ――ああ。


 この人は、

 冷たいんじゃない。


 無駄がないだけだ。


 その日から、

 私の中で決まった。


 私は、

 あの人のそばで働きたい。


 銃を持たなくてもいい。

 WFに乗らなくてもいい。


 料理でも、

 記録でも、

 掃除でもいい。


 必要とされる場所にいたい。


 そして、

 いつか――


 白銀の騎士の背中を、

 一番近くで見られる場所へ。


 それが、

 私の憧れだった。


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