重装備
なかなかゴツいWFを用意してくるじゃねえか。
重装備系。
見た目からして、隠す気がない。
威圧して、押し潰す。
それだけで勝つつもりのシルエットだ。
俺の機体は汎用型。
万能と言えば聞こえはいいが、
正面から殴り合うための設計じゃない。
「さてさて……困ったもんだな」
重装備系って言っても、種類はある。
全部が全部、同じ思想で作られているわけじゃない。
まずは火力特化型。
装甲はそこそこ。
だが、とにかく弾をばら撒く。
撃って、撃って、撃ち続けて、
相手が壊れるまで止まらないタイプだ。
次が、重装甲型。
こっちは性格が悪い。
撃っても弾かれる。
斬っても通らない。
焦った相手が手段を出し尽くしたところで、
ようやく前に出てくる。
時間を味方にする戦い方。
平和と言えば平和だ。
……相手の心が先に折れる、という意味ではな。
ああ、そうだ。
火力には、もう一つあった。
一撃必殺型。
やたらとデカい大砲を一本だけ積んでる。
命中すれば、それで終わり。
避けられなきゃ、負け。
クイーンなら、
たぶん一番得意な相手だ。
初動を見て、
予備動作を読んで、
撃たれる前に懐へ潜り込む。
……だが俺は、クイーンじゃない。
俺の機体で、
その一撃をどう処理するか。
「頭を抱えるしか、ないか……」
重装備WFは、まだ動かない。
こちらを見ている。
いや――
見せている。
「どうだ」と言わんばかりに。
この装甲。
この質量。
この火力。
闘技場の空気が、静まり返っている。
観客席――
木製の人形に貼り付いた民衆の映像が、
じっとこちらを見下ろしている。
歓声は、ない。
拍手も、ない。
待っている。
殴り合え、と。
派手にぶつかれ、と。
ああ……なるほどな。
こいつらは、
分かりやすい戦いが好きらしい。
重装備と正面衝突。
火花。
爆音。
装甲が砕ける瞬間。
――見世物としては、満点だ。
だが。
俺は、そっちを選ばない。
操縦桿を、わずかに引く。
姿勢制御、微調整。
武装システムは、まだ待機状態。
照準も、合わせない。
重装備WFが、わずかに反応する。
センサーが、こちらを追い始めた。
観客席が、ざわつく。
撃たないのが、気に入らないらしい。
「悪いな」
誰に向けた言葉でもない。
それでも、自然と口に出た。
俺は、一歩だけ前に出る。
そして、止まる。
撃たない。
近づかない。
逃げもしない。
ただ、選ぶ。
どの瞬間に。
どの距離で。
どの手を、切るか。
重装備WFの砲身が、ゆっくりと動いた。
狙いが、こちらに定まる。
来る。
だが――
まだだ。
闘技場が、息を呑む。
そして俺は、確信する。
この戦いは、
撃った方が負ける。




