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生意気年下JKは俺にだけ厳しい

作者: パリトン

 しかし…俺が朝弱い事知ってるのに朝番にするとは、店長め…しかし、ギリギリ間に合ってよかった…。


 前回の遅刻を思い出しながら、冷や汗を拭う。


 今回は東堂くんと同じシフトだった。


「おつかれ様です」


「おう、おつかれ」


 業務を終えて、更衣室を出たところでスマホが震えた。


 通知を開けば、如月からの鬼のようなラインが十数件。「今日、カフェ行くの忘れてないだろうな!?」という内容


 遅刻しそうで返信できなかった。申し訳ないとは思っていたが、ここまで怒っているとは……。


 コンビニの前まで来ると、ちょこんと座る小柄な影があった。如月紗奈。


「あれ紗奈どうした?」


 隣を歩いていた東堂くんが声を掛ける。


「あ、東堂先輩!お疲れ様です!」


 すぐさま立ち上がり、ぴょんぴょんと小動物の様に挨拶する。


 東堂くんも笑って会釈し、それに倣って俺も挨拶しようとすると、ずいっと如月が詰め寄ってくる。


「...ひがし!ライン出ろよ!そのせいでここで待ってたんだからな!」


「ごめんって。ラインでも言ったが遅刻しそうだったんだ。」


「東さん?今日、紗奈何かあるんですか?」


 東堂くんが不思議そうに尋ねてくる。


「あぁ、何か如月がスイーツを食べたいらしいんだ」


「ちょっと、欲しいグッズがあって...それがカップル限定で...」


「カップル限定…え!?東さんと紗奈、付き合ってるの?」


 東堂くんが目を丸くする。


「ち、違います!」


  食い気味で、如月が否定する。流石に、JKに手を出したらヤバい。


「いや、俺がこの前遅刻した迷惑かけたから手伝えってさ。」


「なるほど」


 東堂はすんなり納得した様子だ。そういう柔軟なところ、ちょっと羨ましい。


「で、どこ行くんだ?」


「これ!ちょっと遠いけど…」


 如月がコラボカフェのサイトを見せる。メニューを見るとパンケーキやドーナツなどコラボしているのは軒並み甘そうなスイーツだった。


「うげ、俺は甘いの苦手なんだよなぁ」


「え?ひがし甘いの嫌いなの?好きそうな顔してるのに」


「あ、じゃあ俺が代わりに行きましょうか。俺甘いの好きなんで」


 なんと、東堂くんが俺の代わりに立候補してくれた。


「まじ?お願いしても良いか?」


「ちょ!?それじゃあひがしに奢って貰えないじゃん!!」


 如月がわたわたと動揺する。……って、奢らせる気だったのかよ。


「俺が出すんで、大丈夫です」


 東堂くんが爽やかに答える。俺なら、奢るなんて言わない。


「そんな!?東堂先輩に迷惑かけられないです!」


「うーん。じゃあ俺が東さんに後日飯奢って貰うって事でいいっすか?」


「え、ま、まぁ?」


 食べ盛りの男子高校生。どの位奢らされるのだろう。


「よし、じゃあ紗奈行こう」


「え、あ...」


 あれよあれよという間に、二人は連れ立って行ってしまった。


 ◇


 その夜。


 ラインは未読が30件、すべて如月。めんどくさいので無視していたらとうとう電話がかかって来た。


「同じ学校の子にも見られたし、緊張し過ぎて味しなかった。ふざんけな!」


 青い春を見事満喫した様だ。微笑ましいと同時に自分の青春を振り返り悲しくなる。


「まぁ、良いじゃんか。折角東堂くんが一緒に行ってくれたんだ」


「そうだけど。いきなり二人になっても喋れないし、コンプ所か推しもゲット出来なかったし!」


 コンプって結構なかったか?今日どんだけ食べつもりだったの?


「折角奢って貰えたのに。勿体ない」


「そんなの、申し訳なくて無理だし。いっぱい食べる女の子なんて思われたくない!」


 俺には、申し訳無くないんですかね。年離れてるからいいか理論かな?


「別にいっぱい食べる女の子可愛いだろ。」


「はぁ?太るだろ!ひがしの好みなんか聞いてない!」


「そうですか...」


 どうやら、俺の意見は微塵も参考にならないらしい。


「っていうか、今日私を待たせたんだから、その埋め合わせ、絶対してもらうから!」


 その言葉に、電話越しの圧が増した気がした。


 財布の中の偉人達、大丈夫かな?


 ◇


 結局、埋め合わせは同じコラボカフェに行く事になった。


 前回の様なことがない様バイトの無い日に集まる事になった。


「ごめん。おまたせ!」


 彼女の姿を見た瞬間、俺は思わず驚いた。黒のワンピースが、彼女の白い肌を際立たせていた。


「おぉ」


 俺は思わず声を漏らした。いつもはジーンズとTシャツのカジュアルな格好で、髪もポニーテールにしている彼女が、こんなにおしゃれに着飾っているなんて。


「ちょっと、じろじろ見んな!」


 彼女は俺の前に立ち、顔を赤くして怒る。


「いや、何か新鮮だったもんでな。バイト時と雰囲気違うから」


「そういう、ひがしはあんま変わんない」


 彼女は俺の服装を見て、つまらなそうに言う。


「え、一応一軍で来たのに」


 一応、シャツはアイロンをかけて、ジャケットは新品だった。それに、スニーカーも磨いてきたんだぞ。


「一緒に服見てあげよっか?」


 如月は、少し悪戯っぽく、優しく笑った。


「機会があればお願いするよ」


 まぁ、そんな機会は来ないだろうがお願いをしておいた。


 ◇


 今回は、俺と行くはずだった。少し外れた別店舗へ来た。ここなら、学校の友人とはあわなそうだな。


 早速入店。カップル限定メニュー目当てか、男女のペアが多く見受けられる。


 如月は、タブレットを取るなりパンケーキ、ケーキ、ドリンクと大量のスイーツを注文する。...そんなに食えるの?


「あれ?東くんじゃあ無いっすか?」


 1人のスーツを着た男が話しかけて来る。


 コイツには会いたく無かった。


「...高木か。なんか用か」


「別に無いっすよ。酷いなぁ。同期だったんですから〜」


「高木さん。行きましょう。」


 帽子にサングラス。マスクの完全防備の女の子が言う。


「へいへーい、また会いましょうねー」


 そういうと高木たちは、去っていった。


「ひがし、今の人...誰?」


 少し心配そうに如月が声を掛けてくれた。


「昔の同僚だ。...悪いちょっとトイレ」


 少し気分が悪くなりトイレに向かう。


 トイレへ向かう途中、ひとりの女性が段差に躓き、俺の胸に飛び込んで来た。


「大丈夫ですか?」


 声を掛け、肩を持ち大勢を立て直そうする。


「ちょ、あれ!?」


 俺の胸から全然離れない。もう一度試すが...もの凄い力で俺の胸に引っ付いている。


「おいおいおい」


 そんな事を10秒程繰り返すと、女性がやっと離れた。


「すいません。」


 とにっこりといい。そのまま去っていた。綺麗な人だった。けど、あの顔、見た事あるぞ。似ている。とても似ている。松田翔太の妹。松田ひなに...。


 席に戻ると、すでに大量のスイーツが鎮座していた。


 そのスイーツを如月は、激写している。


「あっ、ちょっと映らないで下さい。」


 どうやら、邪魔らしい。俺椅子に座っただけなのに...。


 また、おまけとして御目当てのポストカードやコースターも置いていた。内容はランダムなので、推しが当たらなければ再度頼む必要がある。


「当たったのか?」


「うん!、流石にこれだけ頼んだからね!」


 スッと視線を戻すとショートケーキやチョコ、ドリンクなどの大量のスイーツがある。


 こんなに食えるかなぁ、俺。


「ひがしは、甘いのダメなんだっけ?」


「あぁ」


「じゃあこれ」


 目の前にチーズ系のクッキーやサブレ。ビターチョコの蒸しパンなど甘く無さそうなスイーツが置かれる。俺が甘いの苦手な事を知っていた様だ。...それ知ってて何でここ連れてきたん?


 クッキーやパンケーキなどをつまんでいると御目当てのカップル限定スイーツのパフェが来る。


 このパフェは、劇中ヒーローとヒロインが一緒に食べさせ合うものでそれが再現されている。このパフェを頼むと劇中の重要アイテムであるペアルックのストラップを貰うことができる。


 にしても、パフェがデカい。


「これ、東堂と食べたんじゃ無かったのか?」


「友達もほしいって言ってたから、ついでにね」


 ついでにこれ頼むのか。


 それな事を話していると店員に話しかけられる。


「良かったら、写真お撮りしましょうか?」


「いや、だ、大丈夫です」


「せっかく、カップル出来たんですから記念に撮りましょうよ。」


 サービスなのか、カップルを見るのが好きなのかニコニコしながら店員は言う。


 結局カップルとして来ているので、断れず押し切られた。店員は、如月のスマホを借り、カメラを構える。


「折角なのであの名シーン撮りましょう!」


 店員がそう促して来る。


「名シーン?」


「え、あ」


 如月は、あわあわしながらパフェを掬い俺の顔の前にスプーンを寄せる。


「え?」


「アーンだよ!アーン!早くしてよ!カップルじゃ無いのバレちゃう!」


「そんな無理しなくて良いのに」


 仕方なくパフェを口の中に入れる。


 如月の方を見ると顔は、真っ赤。余程恥ずかしかったのだろう。


「はい!チーズ!...ばっちり再現出来てます!」


 そういうと店員は、如月にスマホを返し、満足そうに帰っていった。


「恥ずかしかったなら、何でこのパフェ頼んだんだ」


「東堂先輩との時は、あんなの無かった!」


 そう言いながら、バクバクとパフェを食べる。太りそー。


「あっそう言えばそのスプーン...」


 そう言うと、如月はスプーンと動きを止めると更に顔が赤くなる。


「...もう!サイアク!」


 そういうと顔を突っ伏してしまった。間接キス程度でそうなるとは、愛い奴め。


 ◇


 結局、如月も頑張ってスイーツを食べていたが、無理だったようで7割位は俺が食べた。


「もう、1年は甘いモン食べたく無い。」


「私も...」


 如月も顔面真っ青で言う。


 如月も動けなさそうなのでパッパと会計済ませてしまおうと財布を出す。すると如月がぐいっと俺の肩を掴む。


「...私が...全部...出す。」


 そんな死にそうな顔で言われてもな。


「良いよ、今回は俺が出す」


「私が誘ったんだから私が出す...」


 食い下がってきた。


「いや、殆ど俺が食べたからおれが出すって」


「私がグッズの為に頼んだんだから私が出す!」


 トレイに如月がお金を乗せる。


「ふざけんな、俺が払うって言ってんだから歳下のお前は、黙って奢られてろ」


 お金の上に更にお金を乗せる。大人のプライドとして、負ける訳にはいかなくなった。


「はぁ!?やだよ!私が無理矢理連れて来たんだから私が払う!」


 如月が顔をずいッと寄せ、睨んでくる。


「お客様...それなら割り勘でお支払い頂ければ...」


 終わらない論争に見兼ねた店員が割り勘を提案する。しかし、もう止まらない。


「俺が払います。」


「私が払います!」


 ◇


 結局、レジに列ができ始めていたので俺が払い会計を終えた。


 如月がキッと俺を見てくる。


「何で、ひがしが全部払うんだ。いつもケチの癖に!」


「もう終わったんだから良いだろ。歳下の女の子に大金払わせる。男の身にもなってみろ」


「それは......ごめんなさい....ひがし甘いの嫌いなのに...」


 しゅんと、如月は落ち込む。


「そんなに落ち込むなよ。そもそも、面白そうだから今日来たんだ。甘いの嫌いだけど、ここのは美味しかったし。また来たいくらいだ」


「本当!?よ、よかった...ちょっと無理やりだったし...」


「よかったよ、如月に言われなきゃ絶対行かなかったし」


「そっか!よし...ひがし、誕生日いつ!そこでお返しする」


「お返しとか良いって、もう終わったし」


 拒否をするが如月の意気込みは絶えない。


「絶対お返しするから、黙ってもらえよ!」


 帰り道は、ずっと口喧嘩が続いた。


 ◇


[如月紗奈]


 東堂先輩からラインが来ていた。

 内容は、今何してる?みたいなたわいの無い会話だ。

 どうしよう。どう返そう。


 気になる男の子には、自撮り送ってあげると効果的と言う情報をネットの記事だか、漫画だかで得たので、自撮りをしてみた。


「うん。流石に無いかな。」


 我ながら、結構際どい写真が撮れてしまった。まず、わたしそういうキャラじゃ無いし。


 ガチャ。誰かが帰ってきたようだ。多分お姉ちゃん。


「くそーあのクソ親父。絶対ゆるなさい。...てあれ紗奈何してんの?そんなに胸元開けて...」


「あ、お、お姉ちゃんおかえりぃ...。何でも無いヨ。」


「ん?自撮りでもして男にでも送ろうとしてた?...あはは、紗奈そんな事しないよねー」


「うん。そんな事しないヨー」


「え?本当にやったの?」


「えっあ」


「紗奈...その嘘つく時右上向く癖直した方が良いよ...すぐわかる。」


「え?うそ...そんな!」


「はぁ、まさか紗奈に好きな男ができるなんてね。」


「いや、好きっていうか気になるってだけで」


「へぇ?どんな子?見してみ」


「やだよ。恥ずかしい。」


「自撮りだってどうアピールすれば良いかわからなかったからやったんでしょ。頭脳は2つあった方が良く無ない?」


「バイト先の先輩何だけど...」


 スマホに東堂先輩が映った写真を見せる。


「へぇ、イケメンじゃん。レベル高いの狙ったね紗奈」


 すると、お姉ちゃんはポチポチと私のスマホを操作し、私の前に画面を突き出す。


「そんなに気になってるならこれ送っちゃお」


「ちょ、ちょっとおねぇちゃん!」


 スマホを取り上げようとしたがぶつかりお姉ちゃんの指が送信ボタンに触れる。


「「あ...」」


 東堂先輩とのトーク画面に私の自撮り写真が送られる。


「ごめん。送っちゃった。」


「お姉ちゃん!!!!何やってるの!!」


 急いで、お姉ちゃんからスマホを取り返し送信取り消しを押すが、時すでに遅し。画像には、既読がついて居た。


「あぁ...お嫁に行けないよぉ」


「大丈夫だって、SNSにはもっと際どい写真あげてる人居るし...ほら!これを機にコスプレイヤーとかどう?」


「そういう事じゃ無い!」


 そんな口論をしていると、東堂先輩から返信が返ってくる。


「ひがしさんと焼肉食べてる?」


 すると東堂先輩とひがしの2ショット写真が送られてくる。

 2ショット...ということはひがしと東堂先輩は一緒にいる。...ひがしも私の自撮り見たって...こと!?


「ひがし!!!許さない!!!」


「紗奈!?だっ大丈夫?」


 私は、ひがしに怒りの電話を入れた。


 ◇

 今日も今日とて無事にバイトを終えた。今日は、如月と同じシフトだったが機嫌が悪い。


 バックヤードで着替えていると如月は俺にスマホのカメラを向け、パシャパシャと写真を撮ってくる。


「何だよ。」


「仕返し。この前の復讐。ひがしの恥ずかしい写真撮ってやる。」


 東堂くんと焼肉に行った時の話だろう。電話でなんか起こってたからなぁ。あれは、しょうがないだろ巻き込み事故だよ。


「お前それセクハラだらな?」


 如月のスマホを手で隠す。


「...まぁ、ひがしの写真がカメラロールに溜まるのやだし、許してやる...」


 そう言い、カメラを取り下げる。


「気が済んだなら何より」


「...東堂先輩私の写真見てなんか言ってた?」


 うっ、答えづらい質問をしてきやがる。焼肉の日、東堂くんから如月への想いをカミングアウトされ俺が手伝う事になっている。

 東堂くんが如月に想いを寄せている事を悟られない様にせねば。


「...え?あぁ、困惑はしてた...かな?」


「やっぱり...引かれたかな?」


 如月はしょぼんとする。本当の反応は、平穏を装っていたが惚気が滲みて、喜んでる様子だった。ここは、フォローせねば。


「そんな事ないぞ?可愛いっていってたぞ!?」


「本当!?…なんか、信用ない。」


 最初の返答をミスってしまったようだ。如月からマイナスオーラが漂う。


「本当だ本当。東堂くんも俺も可愛いと思ったぜ!まぁ、少し東堂くんには刺激が強いと思ったが...」


「そんな、ひがしに可愛いとか言われても嬉しく無いし...でも、わかった。まぁ信じる。」


「そうか。ちゃんと伝わって良かった。」


 誤解は、防げたようだ。ふぅ、危ない危ない。綱渡りしている気分だ。

 さて帰ろう。...ん?

 荷物を持ちバックヤードを出ようとしたところで、がっしりと如月に腕を捕まれている。


「そんなにちゃんと私の写真みたのか!!許さない!!」


 如月ば、顔を真っ赤にしてそう言った。

 その後、2回分のシフトは、ともに口を聞いてくれなかった。

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