表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
筋肉が魔力の源なら、ヒョロガリの俺は詰みですか? 〜脱臼覚悟で放つ「あたたた」が急所に刺さりすぎる件〜  作者: 原田広


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/18

第十七話:錯覚の迷宮と、知識の聖域(シェルター)

「ここね!」

タノが鋭い声と共にドアを蹴破った――と、同時に。

「確保ぉっ!」

窓ガラスを粉砕し、鋼鉄薬物連邦のエージェントたちが室内に踊り込んだ。

……隣の部屋に。


一瞬、沈黙が支配する。

見つめ合うのは、凄まじい殺気を放つ監察官タノとカーリー、強化薬物で血管を浮き上がらせたエージェントたち。そして、その視線の先にいたのは、まさに下着姿でストレッチ中の女子生徒二人である。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「「・・・・・・」」


瞬間、

「「キャーーーー! おとこーーーー! クセモノよぉーーーー!!」」


女子寮への男性潜入。それは国家反逆罪すら生ぬるい、大罪である。


「なんですってぇぇーーーー!!」


地響きのような怒号と共に、寮母トモミが廊下の向こうから駆けてくる。その音を合図に、各部屋から寮生たちが飛び出してきた。

この学園に、毛布を被って震えるような軟弱な女子など存在しない。ある者はパジャマ姿のままバーベルシャフトにエネルギーを充填し、ある者は下着姿で破壊魔法の印を組む。


「「「実戦訓練よぉぉぉ!! 」」」


目の色を変えた女子軍団の波が、パニックに陥ったエージェントたちと監察官を飲み込んでいった。


一方、一つ隣の、静寂を保ったままの本物のサクミの部屋。

ヨウジはぬいぐるみの山に埋もれたまま、指を一本だけ立てていた。


「ヨウジさん、これは……?」

「サクミさん。これが錯覚魔法……『あれえ(誤認)』です」


部屋の座標認識を数メートルだけズラし、敵が勝手に「隣の部屋」を「目的の部屋」だと思い込むように誘導する術式。自分の手は汚さず、他人の暴力(寮生たちの迎撃)を利用して脅威を排除する、他力本願の極致。


「……ですが、ここも安住の地ではなくなってしまった。この騒ぎが収まる前に移動しないと、エネルギー効率が悪化する。次なる避難場所はないだろうか」

「いいところがあるわ」

カコが、ちんちくりんな胸を張ってニヤリと笑った。

「『図書館』よ! 筋肉で全てを解決しようとするこの学園に、本を読みに来る生徒なんて誰一人いないのよ!」


女子寮の玄関先では、タノの部下たちがオロオロと右往左往していた。

「監察官を助けないと!」「しかし、男子禁制の掟と待機命令が……! 」「だが、あの悲鳴は……!」

その混乱の真っ只中を、一台の備品用台車が横切っていく。

隠身魔法「いないいないばあ」で存在感を消したヨウジは、ぬいぐるみの山に擬態したまま台車の上で丸くなり、それをサクミとカコが平然とした顔で押していく。


「お先に、失礼しますぅ」


サクミの小さな呟きは、怒号と爆発音にかき消された。

監視の目を、文字通り「存在しないもの」として通り抜けたヒョロガリ一行は、学園の最果て、埃の積もった知識の墓場――図書館へと向かうのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ